帰り道の出会い
「そろそろ期末テストも近づいてきたね」
「そうですね」
信夜はいつもと同じ帰り道を辿りながら星上に話しかける。
あれからというもの磯立といる時間は減り、星上といる時間が多くなった。朝登校する時、昼昼食を取る時、放課後帰る時、星上と一緒にいる。
磯立はというと雲川といる時間を増やしていた。二人はだいぶ仲良くなったらしい。
「俺、前のテストあんまり良くなかったから頑張らないとな」
信夜は前回のテストはいつもよりも少し調子が悪かった。期末テストまではあと二週間ほど。これからは勉強に取り組む時間も増やさないといけない。
「その、なら一緒に勉強しませんか?」
星上は横からゆっくりとした口調で誘う。
どうして誘ってくれるのか信夜はわからなかった。自分などと勉強して何か得があるのだろうかと信夜は思う。
しかし、それはそれとして信夜はその誘いが嬉しくないと言えば嘘になるように感じた。
「ありがとう。じゃあ、お願いしてもいいかな」
「よ、喜んで」
星上はそれだけ言うと下を向いてしまった。
何か受け答えを失敗してしまっただろうか。しかし、誘ってくれたのはあっち側だしどうなのだろう。
「あ、信夜!」
街の先から突然聞き覚えのある声が聞こえてきた。先を見るとそこには遥香がこっちに向かってきてきた。
すぐそばまでくると星上をチラリと見た後、信夜を見て眉を顰めた。
一体どうしたのだろう。何かあっただろうか。
「どうかした?」
「なんでもない」
頬を膨らませて遥香はそっぽを向く。
なんだと言うのだろう。出会ったばかりだし、家で何かしただろうか。
信夜には思い当たることがなく、困ってしまった。
「あ、そうだ」
突然遥香が振り返ってくる。その顔は何かを思いついたような顔をしていた。
「買い物があるの荷物持ちとして付き合ってよ」
「え?」
それは構わないが、いきなりのことで信夜は驚いてしまった。
「ほら、行くよ」
「いや、ちょっと」
遥香は信夜の手を引っ張って連れて行こうとする。信夜は突然のことで反射的に踏みとどまったがそれでも遥香はまだ手を引っ張った。
なんでこんなに強引なのだろうか。こんなふうに無理やりというのは信夜は遥香にされるのはほとんど初めてだった。
やっぱり機嫌が悪いのだろうか。
信夜は星上の方を見る。
このまま遥香についていけば星上を一人にしてしまうだろう。
「あ、私は大丈夫です」
星上は信夜が見ていることに気づいて断りを入れた。
「ほんとに大丈夫?」
「あ、はい。平気です」
「ほら、行くよ」
遥香はさらに手を力を入れた。そしてそのまま歩き出す。
「ごめん。また明日」
「はい」
星上は手を振って見送ってくれる。信夜はそれを見ると振り返って進行方向に体を向けた。
遥香と並んで歩く。
「そんなに無理にしなくても」
「別にいいでしょ」
遥香は信夜の方を見ない。
なぜこんな調子なのか信夜には見当がつかない。
「それよりもあの子誰?」
「え?」
「さっき一緒にいた子」
遥香は信夜を睨みつける。信夜は口が止まってしまった。
本当にわからないのだろうか。
「いや、会ったことあるでしょ?」
「え。何言ってるの?」
遥香はわかりやすくはてなを顔に浮かべる。
遥香は会ったことがあるはずだ。それなのにわからないのだろうか。確かにそんなに一緒にいた時間は長くはなかったが。
「二回ぐらい今日みたいに会ったぞ」
「・・・・・・え?じゃあ、もしかしてあの子なの?」
遥香は呆気に取られた顔をする。
そんなに衝撃的なことだっただろうか。確かに髪を上げた星上は髪を下ろした時よりかなり変化はするがわからないほどではないだろうと信夜は思った。




