変化する日常
放課後になり、帰りの支度が終わると信夜は昇降口の前の階段を降りて星上を待っていた。
ただ待っているだけで他には特に何もしていないがだが信夜は退屈などとは全く思っていなかった。
それはもうすぐ来ると思っているからだろうか。しかし、それはあくまで推測であって、決定事項ではない。
だから、本当にもうすぐ来るのかはわからないのだがそれでも信夜は今のただ流れ行く時間になんとも思っていなかった。
それからほんの少し待っていると突然信夜の前に一人の女子生徒が現れた。女子生徒は前に立って信夜をじっと見つめる。
この人物は確か前に空き教室でため息をついていた人だ。
一体目の前に現れてなんの用なのだろう。名前も知らないので信夜には全く見当がつかない。
「あなた、こんなところで何してるの?」
「何って人を待ってるだけだけど?」
「ふーん」
ふーんとはなんなんのだろう、ふーんとは。それ以外に何かしているように見えるのだろうか。
それとも「お前には待つ資格もない」とでも言うのだろうか。
「それって・・・・・・」
「おーい」
女子生徒が何か言おうとするとその後ろから声が聞こえてきた。女子生徒は振り返って声をかけた人物に「はーい」と返した。
声をかけた人物を見るとどうやらそれは大雅らしい。大雅は立ち止まって様子を伺っている。
大雅はこの学校で一番と言えるほどの美少女だ。その人気と注目度から信夜もそれが誰かわかる程度には知っている。
女子生徒はそのまま戻るのではなく、信夜の方を向き直った。
「まぁ、いいけど。あなた、行動には気をつけなさい」
女子生徒はそれだけ言って帰っていく。
それはどういう意味なのだろう。そんなことを言われるようなことを何かしてしまったのだろうか。
あるいは・・・・・・。
信夜は軽く頭を振る。そして前を見ると一瞬大雅とその隣にいるさっきの女子生徒と目が合った。
二人は何事もなかったかのように歩いて去っていく。
(一体なんだったんだろう)
そしてもう少し待っていると星上がやってきた。星上はまた昼休みと違って髪を上げているため今は顔が良く見える。
どうして帰りの時は髪をかき分けたりするのだろう。
「お、お待たせしました」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ」
どれぐらい待ったかは信夜は実のところわからなかった。しかし、きっとそれだけ気にしていないのだからそれほど経っていないのだろう。
「それじゃ、帰ろっか」
「そうですね」
二人並んで歩き出す。歩くペースは二人でいる時のいつもと同じ。
これからはしばらくこんな帰り道が続くのだろう。
星上と出会ってからというもの、信夜の中ではかなり大きく日常が変化し出した。しかし、信夜はそれを素直に受け入れることができた。




