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学校の隠れ美少女と今日も喋る  作者: 粗茶の品
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突然のこと


 昼休み、信夜は弁当を持って廊下を歩いていた。

 今日はいつも通り磯立と食事を取るのかと思っていたらまた雲川が訪れて磯立を誘った。

 その時磯立は信夜の前にいたのだが、それを聞いて信夜にどうかと尋ねている時、朝と同じように邪魔だと言わんばかりの視線を向けてきたので遠慮させてもらった。

 しかし、それはいいものの、信夜はどこで食事を取るのか決めていない。

 食堂で弁当を食べることは一応禁止されている。まぁ、食堂で買って食べている人の横でそうしている人もいるのだが。

 そうなると中庭あたりになるのかもしれないがあそこは一人で取っていると何か注目を集めてしまいそうだ。それも悪い意味で。

 目立ちたくはないがそんな都合のいいところは一体どこにあるだろう。


「あ、あの」


 背後から声がしたので信夜は立ち止まって振り向く。すると前に星上が立っていた。


「どうかした?」


 信夜の質問に星上は口ごもった。信夜はその様子に首を傾げた。

 星上は片手に袋を下げていた。おそらく星上もまだ昼食を取っていないのだろう。と言ってもまだ昼休みは始まって五分も経っていないのだからおそらく当たり前のはずだ。


「その、お昼一緒にどうですか?」


「いいよ。むしろ誘ってくれてありがとう」


 信夜は星上の提案を快く受け入れた。

 星上と食べるのが嫌なんてことはないし、他に何かあるわけでもないし、断る理由がない。

 それに星上が誘ってくれたことが信夜は不思議と嬉しかった。


「いつもの場所で食べる?」


「・・・・・・うん」


 信夜の問いかけに星上は小さく頷く。そして二人で歩き始めた。

 目指す先は同じなはず。例のあの階段だ。

 今日、一緒に食事を取るなんて思ってもみなかった。とは言っても今日は想像だにしていないことばかりだったが。



 食事を取り終わると話して過ごしていたが、それも終わりの時が近づいてきた。

 昼休み終了前のチャイムが鳴り響いた。


「そろそろ戻ろうか」


 信夜は立ち上がって言う。星上は何か惜しそうに「うん」と言って立ち上がった。

 歩いて教室へと戻る。星上はその間少し俯き気味だった。


「どうかした?」


「え、ううん、なんでもない」


 取り繕うように星上は言う。

 いかにも何かありそうな言い方だと信夜は思った。しかし、それを無理に聞き出そうとするのは失礼思い信夜は「そう」と答えた。


「あの・・・・・・」


 もう少し歩いて教室までもうすぐだと言うところまで着くと星上が声をかけてきた。信夜は「どうしたの?」と返す。

 星上は口をごもごもさせてなかなか発言しない。

 それほどに重大か何かで言いにくいのだろうか。この様子を見ていると信夜は逆に何を言いたいのか気になってきた。


「ねえ、あんた」


 立ち止まって星上の言葉を待っていると突然横から話しかけられた。振り向くと雲川がそこに歩いてきている。

 磯立と一緒にいたのではないのだろうか。


「何か用?」


 雲川が間近まで詰め寄ってくる。


「あんた、磯立さんと仲良いの?」


「まぁ、それなりに」


「ふーん」


 雲川はじっとこっちを見つめてくる。

 急にそんなことを聞いてきてどうしたと言うのだろう。一体どうしたいのだろう。何か問題でもあるのだろうか。

 ご飯に誘うぐらいだから雲川もそれなりに仲がいいと思っていたのだが、それは関係ないのか。

 それにしても磯立と話していた時よりもはっきりとした物言いだ。この態度の違いはどこからくるのだろう。


「あんたさ、一緒に帰ってるってほんと?」


「そうだけど?」


「じゃあ、それやめてくんない?」


 信夜は虚をつかれたように一瞬呆然としてしまった。


「なんで?」


「なんで、言わないとわかんない?」


 雲川は信夜を睨みつける。

 信夜は正直に言ってわからなかった。

 一緒に帰っていたら何か不利益が生じるのだろうか。なら、それは一体なんなのか。そもそも誰に対してなのか。わからないことだらけだ。


「私が一緒に帰りたいからだよ」


 雲川は投げやりになるように言う。


「じゃあ、なんで俺は」


「そこまで言わないとわかんないかなぁ?」


 どうして半ば怒り気味で言われているのだろう。

 ここまで言われるのはもしかして二人きりで帰りたいのだろうか。


「二人がいいってこと?なら、最初からそう言って」


「うっさい!わかったからそれでいい」


「それって、今日だ・・・・・・」


「ずっとに決まってるでしょ」


 雲川は信夜の言葉を遮ってそれだけ言うと機嫌が悪そうにどこかに歩いて去っていく。

 雲川はなぜ磯立と二人きりがいいのだろうか。気になるがこれ以上聞けば今度は襟でも掴まれそうなので信夜はそれはやめておいた。


「しばらくは一人で帰ることになりそうだな」


 信夜は小さな声で漏らす。

 別に不満があるわけではない。一人で帰るのも別に悪くはないと思っている。こうなった理由がわからないのが不満と言えば不満だが。


「あの」


 今度は横から星上に話しかけられる。

 星上は信夜が詰め寄られている時、ずっとどうしたらいいのかわからないように混乱していた。

 今は解決したようで少し平静を取り戻しているらしい。


「それなら、一緒に帰りませんか?」


「いや、俺のことは気にしなくていいよ?」


 突然帰る人がいなくなって気を使わせてしまったのかもしれない。

 しかし、無理に一緒に帰る必要なんてないし、別に優先したいことがあるならそうして欲しい。


「ち、違います。私はそうしたくて」


 星上は何かに気がついたように合っていた顔を急に逸らす。


「さっきもそう言いたかったですし」


 さっきと言うと雲川に話しかけられる前のあの時のことだろうか。

 雲川に遮られて言われなかったそんなことを言いたかったのか。


「それぐらい気軽に言ってくれればいいのに」


「だって」


 星上は信夜を見て何か言おうとしたがすぐにやめてまた顔を逸らした。


「ありがとう。そうさせてもらうよ」


 星上は信夜を見てだんだんと凄い勢いで顔が明るくなる。


「はい、よろしくお願いします」


 そんなことを言われるほどのことでもないと思うが言われたので信夜は「よろしく」と返した。

 星上は自分の意見を言うのが苦手なのだろうか。それでも言おうとする姿に信夜は笑みをこぼした。

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