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学校の隠れ美少女と今日も喋る  作者: 粗茶の品
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遭遇


「あら、いらっしゃい」


 ドアを開けて図書室に入るとそれに気づいた前田先生が挨拶してきた。信夜はそれに「こんにちは」と返す。

 昼休みが始まってまだ半分ほどだからか図書室に生徒は見当たらない。信夜は前田先生のいる受付の方へと歩く。

 そろそろ図書委員ぐらいは来てもいいと思うのだが。


「これ返しに来ました」


「あら、そんなに急がなくていいのに」


 前田先生は信夜が差し出した本を受け取る。そして返却する際の手続きを慣れた手つきで行った。


「面白かったでしょ?」


「はい。それはほんとに」


 他人におすすめしたくなるのもわかるほどこの本は面白かった。

 伏線の張り方がうまく、展開の広げ方が秀逸でどんどん読み進めた。


「特に後半のどんでん返しはすごかったですね」


「そうでしょ!主人公の過去とかほんと凄まじかったよね!」


 前田先生は少し前のめりになる。

 それから少し感想を言い合った。前田先生もだんだん興に乗ってきたようで言葉数が多くなる。


「あ!そういえば、空松くんって彼女いるの?」


 話がひとまず落ち着くと突然の話題をふっかけてくる。信夜は思わず少し咳き込んだ。

 まさか前田先生からもそんな話題をされるとは思っていなかった。


「どうして、ですか?」


「え、だって、前手繋いで歩いてたじゃん」


 信夜は呆気に取られた。

 まさか前田先生にまで見られていたなんて想像だにしていなかった。一体どこにいたのだろうか。

 ともかくそんな誤解は早く解かないといけない。


「彼女なんていませんから」


「またまたー」


「あの人は友達ですよ」


 前田先生は仕方ないと言わんばかりの顔を見せてくる。

 何が仕方ないのかわからないがなんとなく誤解が解けていないような気がする。これはどうやらまた何を言っても無駄なパターンなのかもしれない。人の噂も七十五日と言うし今はそっとしておくしかないのかもしれない。

 どうしてこんなにも自分の周りには恋愛関係に対して誤解する人が多いのだろうと信夜は疑問に思った。

 違う、と口論しているとドアが開かれる音が室内に響いた。ドアの方を向くと一人生徒が入ってきている。


「じゃあ、そろそろ行きます」


 これ以上は無駄だとまた思わされた信夜はキリも良くなったので切り上げる。


「そっか。また来てね」


 前田先生に手を振られながら図書室を出る。

 廊下で歩いている人はまだ見当たらない。



 信夜は図書室を出て例のあの階段へと行ってみたが星上の姿はそこにはなかった。図書室に向かう時にも来てみたが結果は今回と同様だった。

 朝、あんなふうに別れたあと一度も会わなかった上昼休みもしかしたら来るかもしれないなんて思っていたが来なかったので信夜は気になってしまっていた。

 一緒に食事を取っていた磯立は行くところがあると言ったので信夜はその際に本を返しに行くと言った。

 そのついでに様子を見に行ってみようと信夜は思っていた。

 その結果いると思っていた場所にいなかったわけだが。

 信夜は逆にどこにいるのだろうと気になり、少し遠回りする。

 すると、とある教室のドアが少し開いていることに気づいた。気になった信夜はそこに近づいてみる。

 そこの教室は特に使われていない場所のはずだ。準備室でもないので教師がそこに入ることもほとんどない。信夜はそこが開いているところなど初めて見た。

 そもそも人があまり通らないここに一体誰がいると言うのだろう。

 信夜は恐る恐るその扉を開ける。そこには一人の女子生徒が椅子に座って頭を抱えていた。

 こんなところで何をやってるんだろうと見ていると女子生徒は大きくため息をつく。

 何をしているのだろう。気になって近づこうとも思ったがここはそっとしておいたほうがいいのかもしれない。

 どうするべきなのか少し考えていると急に女子生徒が振り返って信夜の方を見た。

 なぜか気づかれてしまったらしい。


「こんなところで何してるの?」


 隠れる必要もないので信夜は教室の中へと入っていく。女子生徒はこっちをじっと見た。


「あんたは」


 女子生徒は何か気づいたような顔を見せるが信夜はピンと来なかった。


「どこかで会ったことあったっけ?」


「いや、ない」


 顔を逸らしながらそう言う。

 ないと言うならばなぜあんな顔を見せたのだろうか。信夜の中の謎は一層深まった。


「それで、何してたの?」


「別に、関係ないでしょ」


 顔を見なくとも不満げな表情をしているだろう。

 それも仕方がない。自分の悩みをむやみに知られたくないと言う人だっているはずだ。

 しかし、信夜は何かあると知ってしまった、思ってしまった以上、完全に無関係とも思えなかった。これで万が一何かあったのなら後悔をするかもしれない。


「ま、気が向いたら話してよ。力になれるかはわからないけどできることはするから」


「何もないって言ってるでしょ?」


 そうは言われても先ほどのあの様子を見れば何かあると思ってしまうのは変ではないと思う。

 しかし、どうやら本当に関わってほしくないらしい。その根拠にこんなにも迷惑そうな顔を浮かべている。


「別に今じゃなくて、これからできたってものでもいいんだけど。言った通り気が向いたらでいいし。忘れても別に構わないよ。それじゃあ」


 信夜はそう言い残して教室を出た。

 それにしても彼女はどうやってあそこに入ったのだろう。実はずっと鍵は開いていたのだろうか。開くかどうか試したことがないから信夜にはわからなかった。

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