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学校の隠れ美少女と今日も喋る  作者: 粗茶の品
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現れた素顔


 最後の授業が終わり、放課後になって特にやることのない信夜はすぐに教室を出て昇降口近くで星上を待っていた。

 雲ひとつない快晴はなぜか気分も少し明るくさせるような気がする。

 明日も今日のように晴れるだろうか。晴れたらいいなと信夜は思う。

 しばらく待っているが星上はまだ来ない。十五分ほどは経っただろうか。

 しかし、これは仕方ないだろう。

 自分がここに来たのが早いというのもあるし、授業が終わった後最後に担任がクラス全員に連絡事項を伝えるから各クラスが解散できる時間は変わってくる。信夜のクラスの担任はそれが比較的早い方だった。

 だから、待つ時間が長いというのは早く来た自分に責任があるだろう。

 もう二、三分待つと突然生徒たちの視線に違和感を感じた。

 最初の方よりもだいぶ減った人の視線がなぜか妙に信夜の方へと集まっているような気がする。

 しかし、誰とも視線が合わないゆえ、見られているわけではないらしい。

 一体何を見ているのだろうか。

 見ている割には集まったりしているわけではないから信夜は不思議に感じた。


「お、お待たせ」


 星上の声が聞こえて信夜は振り返る。するとそこには見慣れない光景があった。

 星上が顔を出している。

 瞳の前にあった髪はヘアピンで避けられ、後ろ髪は丁寧に結ばれている。

 星上をよく知らない人ならば別人だと思ってしまいそうなほどの変化だ。

 信夜は突然の変化に驚きを隠せなかった。思わず「え」と声が出てしまう。こんなに急に変わられると驚かない人はいないだろう。


「どうかしました?」


「いや、なんでもない」


 姿は別人のようだが声は星上そのものだ。しかし、声の調子が少し高いような気がする。

 星上の今の容姿ははっきり言って美人だ。信夜が見てきた中ではそれもトップクラスの。

 顔の節々を見て、そんなことはわかっていたつもりだったが全体を一気に見せられると強く再認識させられた。


「星上さん」


「はい?」


 星上は首を傾げる。それと同時に長い髪も横に揺れる。


「なんでもない。それじゃ、行こうか」


 歩き出すと同時に周りの視線がそれに合わせて動いたのを見て信夜は何を見ていたのかに気づいた。

 おそらく星上を見ていたのだろう。やはり美少女というものは注目を集めてしまうものらしい。


「空松さん」


 校門を抜け、歩道に出ると星上が話しかけてくる。


「なに?」


「そ、その、どう?」


 星上は顔だけ少し信夜の方へと向けて尋ねてくる。

 どうというのはその髪型のことだろうか。


「すごく似合ってるよ」


「あ、ありがとう、ございます」


 星上は顔を逸らして礼を言う。

 それにしてもどうしてこんなに急に髪型を変えたりしたのだろうか。

 髪が目に入って邪魔だったからとか。しかし、それだと普段から前髪を掻き分けていたりはするだろう。

 信夜にはその訳が分からなかった。


「そういえば」


「な、なに?」


 星上は勢いよく反応する。


「いや、明日って結局どこ行けばいいの?」


「あ、それは、その」


 星上は言葉に詰まる。

 まだなにか言いづらいのだろうか。それともそうなってしまったのだろうか。

 別に大抵のことなら何も言うつもりなどない。言いたくないのならそれでも構わないが自分がどうしたらいいのかだけは教えて欲しい。

 しかし、それも急ぐ必要はないだろう。


「とりあえず教えてくれたらいいよ」


「ごめんなさい」


 星上は急にしおらしくなってしまった。

 こんなふうにさせるつもりなどなかったが結果的にそうなってしまったし信夜は申し訳ない気持ちになった。


「そうだ、連絡先交換しない?そうすればあとで伝えられるでしょ?」


「え?え?」


 あからさまに星上は困惑の顔を見せる。

 そんな個人情報を渡すことは嫌だったのだろうか。軽率なことを言ってしまったかもしれない。


「いや、嫌だったらいいんだ」


「ち、違います!その、急だったから驚いただけで」


 慌てた様子で弁明される。

 信夜は不安に思った。まだ嫌がっているが無碍にできないという気持ちがあるかもしれない。

 そんな気持ちを読み取ったのか星上の表情が少し暗くなった。


「ほんとに違うんです。嫌って訳じゃなくて。むしろ私からお願いします」


 星上は丁寧に頭を下げた。

 そこまでされるなんて信夜はますますすまないことをしたと思う。

 でも、どうしてかその言葉が嘘なような気はまるでしなかった。いや、正しくはこれまでの言葉に、だ。


「ごめん。お願いするよ」


 星上が顔を上げるとその顔は明るくなっていた。

 お互いにスマホを取り出して連絡先を交換した。

 それが終わると星上は自分のスマホを大切に抱える。


「ありがとう。大切にします」


 そう言ってくれるのは嬉しいが連絡先にそんな言い方はあまりしない気がする。

 しかし、あまりに嬉しそうに言うので信夜は思わず口角を上げた。

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