エピローグ
誤字報告ありがとうございます。訂正しました。
華やかな祝宴の鐘が王都に鳴り響く。
本日はルーベルト公爵家当主、エヴラール・フォン・ルーベルトと、新たに興されたフォン・アルベル侯爵家当主、アルメリア・フォン・アルベルの婚礼の日であった。
公爵家の大広間は、この日を祝うために集まった貴族たちの笑顔で溢れている。煌びやかに飾られた大理石の床にシャンデリアの光が反射し、まるで夢のような光景を創り出していた。美しい音楽が響き渡り、華麗な衣装を纏った人々が次々と新郎新婦に祝福を述べる。
中央に立つアルメリアは、純白のドレスを纏い、まばゆいほどの幸福を湛えていた。その隣には、堂々とした佇まいのエヴラール。彼は優しくアルメリアの手を取り、誓いを立てる。
「今日より、生涯を共にしよう。貴女のすべてを愛し、守ることを誓う」
「……はい」
アルメリアの頬には微かな紅が差し、彼女の幸福がその表情に滲んでいた。
この婚礼こそが、王国全体の安定と繁栄を象徴するものとなるのは明白だった。隣国の王女カトリーヌも式に参列し、満足げに微笑んでいる。王と王妃もまた、二人の未来を祝福していた。
しかし、この幸福な空間の片隅には、冷え冷えとした雰囲気を纏った者たちがいた。
レグニエ侯爵一家。
アルメリアの生家であるはずのその家は、今や見る影もなく没落していた。侯爵の肩はすっかり落ち込み、侯爵夫人は青ざめた顔で震えていた。セレナに至っては、悔しさと羨望の入り混じった目でアルメリアを睨みつけている。
「なぜ……こんなことに……」
セレナが悔しげに呟く。
「アルメリアは、あのとき私よりも下にいるべきだったのに……!」
しかし、その言葉に答える者はいない。かつて権勢を誇ったレグニエ侯爵家は、すでに貴族社会から完全に孤立し、誰からも相手にされなくなっていた。侯爵位を剥奪されることこそなかったが、信用を失った今、かつての威光を取り戻すことは叶わない。
婚礼の場に招待されたのは、一応家族であるという形式を保つためにすぎなかった。しかし、彼らが座るのは隅の目立たない席。話しかける貴族もなく、ただ静かに、惨めに座っているしかなかった。
「……レグニエ侯爵家は、終わったのね」
侯爵夫人が苦しげに呟く。
「もう、誰も私たちを相手にしない……こんなはずじゃ……」
そんな彼らとは対照的に、アルメリアは満ち足りた笑みを浮かべ、エヴラールと共にダンスの輪へと入っていった。
彼女の周囲には温かな祝福が溢れ、愛する人とともに歩む未来が約束されていた。
これまでの苦難が、すべてこの幸福へと繋がっていたのだと——アルメリアは、改めて実感する。
「さあ、行こう、アルメリア」
エヴラールが優しく手を引く。
「ええ」
彼女は微笑み、しっかりとその手を握り返した。
こうして、アルメリアは愛する人と共に、新たな人生を歩み始める。
レグニエ侯爵家の終焉と、アルメリアの幸福の対比を最後に——物語は幕を閉じる。
——完——
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