表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/36

第二十三章

 王宮の華やかな夜会。煌びやかな装飾が施された広間には、各国の要人や貴族たちが集い、優雅に談笑を交わしていた。この夜会には隣国の王女カトリーヌも出席していた。アルメリアはカトリーヌと親しく話していたが、王女との会話が一段落した後、その場を離れ、周囲の人々が集まる場所から少し離れたところに移動した。

 そこで、待ち構えていたようにセレナと母、レグニエ侯爵が現れた。

「お姉様、お久しぶりです。ずいぶんと優雅に振る舞っていらっしゃるのね」

 セレナの冷笑混じりの声が響く。

「王女殿下に取り入ったつもり? お姉様がそんなことをしても、所詮は身の程知らずな振る舞いに過ぎないわ」

「ダメよ、セレナ、そんなことを言っては。でもレグニエ侯爵家の者として王女様を怒らせてはたまらないわ。貴女はホントに気が利かないのだから……」

 母の冷たい声が重なる。

「王女殿下の不評を買って、レグニエ侯爵家の傷になっては困るぞ。」

 父の眉間には深い皺が寄っていた。まるで出来の悪い娘を叱責するかのように、冷ややかな視線を向けてくる。

 だが、アルメリアは微笑を崩さなかった。むしろ、彼らを見つめる瞳には冷静な光が宿っている。

「……そうですか。ですが、身の程を知らないのはどちらでしょう? 私は今や王宮で認められ、隣国の王女様とも親交を深めています。古い価値観に縛られて、私を見下しているのではありませんか?」

 セレナの表情が引き攣る。

「お姉様、酷いですわ……」

「事実を申し上げただけです。私を蔑むことで自分の立場が向上するとでも?」

「お姉様……っ!」

 セレナが何かを言い返そうとしたその時。

「アルメリア!」

 澄んだ声が響いた。周囲が振り返ると、そこにいたのはカトリーヌだった。

『さっきから探していたのよ。どうしたの?』

 アルメリアは微笑み、軽く会釈する。

『たいしたことではございません。ご心配をおかけしました』

 カトリーヌは微笑みながら、アルメリアに優しく手を添える。

『そんなに遠慮しないで。あなたともっと話したいわ』

 流暢な異国の言葉で交わされる会話。しかし、セレナや母はまるで意味がわからず、言葉を理解していた父も二人の親しげな様子に呆然とする。

「……な、何を話しているの?」

 セレナが訝しげにアルメリアに尋ねるが、アルメリアは肩をすくめた。

「まずは王女殿下にごあいさつされるべきだと思うのですが……」

 侯爵と侯爵夫人は慌てて礼をとる。セレナは睨みつけるようにアルメリアを見つめる。

「理解できませんか? 王宮では、この程度のマナーは普通だと思いますが」

 周囲にいた貴族たちがくすくすと笑う。セレナの無知が露呈し、場違いな存在となったことに、彼女たちもようやく気づいたようだった。

「まあ……そんな……」

 母は顔を真っ赤にして言葉を失い、セレナは悔しそうに唇を噛み締めた。

『それでは、王女殿下、ご一緒いたしましょう』

 アルメリアは優雅に一礼し、カトリーヌと共にその場を後にする。

 残されたのは、恥辱と屈辱に震えるセレナたちだけだった。

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ