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第二十二章

 レグニエ侯爵家での演奏会の失敗から数日が経った。セレナの演奏が期待外れだったという話は、貴族の間で静かに広がりつつあったが、それと同時に、アルメリアの才能についての話題も囁かれるようになっていた。

「そういえば、アルメリア様は隣国の王女殿下と親しくされているそうですわ。」

「ええ、それに語学が堪能で、王宮でもその才能を評価されているとか。」

 貴族の夫人たちの間で、以前はまったく話題に上らなかったアルメリアの名前が出るようになった。彼女はセレナの陰に隠れていた存在だったが、今やその実力がじわじわと知れ渡り始めていたのだ。

 それに伴い、レグニエ侯爵家の扱いについて疑問を抱く者も出てきた。

「それにしても……アルメリア様はどうしてレグニエ侯爵家で表に出ていらっしゃらなかったのかしら?」

「侯爵夫人の話題はいつもセレナ様のことばかりでしたわね」

「確か、昔はセレナ様と一緒にお茶会にも出てみえましたわ。でも、最近ではほとんど公の場に出ていないとか……。」

「婚約者の方もアルメリア様からセレナ様に変えられて。跡継ぎも、ねぇ……?」

「何か事情があるのかしら?」

 当初は単なる噂話にすぎなかったが、徐々にそれは不信感へと変わっていった。

 セレナと親交の深い貴族の令嬢たちも、違和感を覚え始めていた。

「ねえ、セレナ様が話していたアルメリア様の話と、実際の評判が違いませんこと?」

「私も思っていたわ。セレナ様は、アルメリア様が何の取り柄もないとおっしゃっていたけれど……。」 「でも、隣国の王女と親しくなれるほどの知性と教養を持つ方が、本当に何の取り柄もないなんてことがあるかしら?」

 セレナが吹聴していた話と、現実のアルメリアの評価との間にズレが生じ始めていた。

 そして、セレナを擁護するように振る舞っていた母、レグニエ侯爵夫人への視線も変わりつつあった。

「侯爵夫人は、どうしてセレナ様ばかりを持ち上げるのかしら?」

「姉の婚約者を奪って、それが当然のようにされているなんて、おかしくありません?」

「アルメリア様をあそこまで冷遇する理由が分からないわ。」

 今までは当然のように受け入れられていたレグニエ侯爵家のあり方が、少しずつ疑問視され始めていた。これまでセレナが築き上げてきた立場に、静かに亀裂が入り始める――その序章だった。

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