第二十一章
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アルメリアと再会し、焦りを感じたセレナは、自らの評価をより高めるため、レグニエ侯爵家で盛大な演奏会を開くことを決めた。夜会でアルメリアへの評価が少しずつ変わっている中で、自分の立場を揺るがせないために、一流の音楽家を集め、自らの才能を披露しようと考えたのだ。
演奏会当日、レグニエ侯爵家の広大な舞踏の間には、名だたる貴族たちが集まっていた。壁には美しいタペストリーが飾られ、豪華なシャンデリアが煌めく。セレナは華やかなドレスに身を包み、満足げに会場を見渡した。
「これで私の評価はさらに高まるわ……!」
彼女の目的は、単なる演奏会ではなく、自らの才能を誇示し、社交界における影響力を確固たるものにすることだった。何よりも、アルメリアの存在をかき消し、改めて自分こそが華であることを証明したかったのだ。
演奏会の幕が上がり、次々と名のある演奏家たちが素晴らしい演奏を披露する。会場の雰囲気は上々で、貴族たちの称賛の声が上がる中、ついにセレナの出番がやってきた。
「皆様、ご清聴ありがとうございます。次は、レグニエ侯爵家の跡継ぎであるセレナが、この演奏会にふさわしい旋律をお届けいたしますわ。」
侯爵夫人が自信満々に告げると、セレナは優雅にピアノの前に座った。しかし、その指先にはわずかに緊張が走る。自らの美しさを維持するために時間を割き、十分な練習時間を確保していなかったのだ。
鍵盤に指を落とすと、最初はなんとか形になっていた。しかし、徐々にミスタッチが目立ち始め、リズムが崩れ、ついには焦りが演奏に出てしまう。
「っ……!」
何とか立て直そうと焦りが募る中、自分を美しく飾るために着けた大きな指輪とブレスレットがわずかに演奏の邪魔をする。セレナはなんとか弾き続けようとしたが、無理に修正しようとすればするほど乱れは大きくなる。観客たちは次第に顔を見合わせ、会場には微妙な空気が流れた。
「……なんだか、期待していたほどでは……。」
「ええ、もっと素晴らしい演奏を披露されると思っていましたのに……。」
「あのようなアクセサリーを着けたまま演奏するなんて、音楽を馬鹿にしているのかしら?」
ひそひそとした声があちこちで聞こえ始めた。貴族たちの視線が冷ややかになっていくのを、セレナ自身も感じ取った。
「違う……私の演奏は、こんなはずじゃ……!」
しかし、一度生じた違和感は消えることなく、彼女の演奏が終わった時、拍手はまばらだった。
母であるレグニエ侯爵夫人は、そんなセレナをなんとかフォローしようと、場を取り繕うように声を上げた。
「まあ、セレナは、この年齢でこれほどのピアノの才能を持っているのですもの、緊張して少しミスをしてしまったとしても、素晴らしいと思いませんこと?」
しかし、彼女の言葉には誰も賛同せず、場にはさらに微妙な空気が漂った。
「容姿と才能だけで持ち上げるのね……。」
「ピアノの才能って……今の演奏を聴いてもそう思えるのかしら?」
「なんだか必死ね。」
ささやき声が耳に入ったのか、侯爵夫人は困惑した表情を浮かべた。セレナはそんな母の様子を見て、さらに歯噛みする。
(どうして……どうして、私はうまくいかないの……?)
その夜の演奏会は、セレナにとって決して忘れられないものとなった――自身の評価が失墜し始める、最初の兆しとして。




