第十五章
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アルメリアは、ルーベルト公爵家の広間で微笑んでいた。
彼女の周囲には、華やかな装いをした貴族たちが集まり、和やかに会話を交わしている。彼女はその中心にいた。かつての彼女ならば想像すらしなかった立場だった。
「アルメリア様、先日の茶会でのご助言、大変参考になりました。」
「こちらこそ、異国の礼儀作法を教えていただき、感謝しておりますわ。」
彼女は穏やかに返答しながら、優雅に紅茶を口にする。どの仕草も洗練され、公爵家の人間としてふさわしい気品が備わっていた。
元々、彼女には貴族の娘としての教育が施されていた。しかし、ルーベルト公爵家に迎えられてからは、それがさらに磨かれた。
使用人たちは彼女に丁寧に接し、彼女のために最高の衣装を仕立ててくれた。センスの良いドレスは彼女の美しさを引き立て、もともと双子であったセレナと同じ素質を持つ彼女は、清楚でありながら大人の気品をまとった女性へと変わっていった。
そして、その姿に惹かれる人々が増えていった。
特に、他国からの使者や外交官たちは、彼女の語学力と機転の利いた会話に驚かされた。
「アルメリア様のエルセリア語は実に流暢ですね。」
「ありがとうございます。幼少のころから学んでいたのですが、こうして実際に使う機会をいただけるのは光栄です。」
彼女は自分が培ってきた知識が役立っていることに、静かに喜びを感じていた。
そんな折、エヴラールの付き添いで隣国のラヴィエール公爵家の夜会へ出席することとなった。
会場は煌びやかに飾られ、各国の貴族が優雅に談笑している。アルメリアはエヴラールの隣で控えめに微笑みながらも、臆することなく会話を楽しんでいた。
「ルーベルト公爵家のアルメリア様ですね?」
優雅な物腰の老公爵が声をかけてきた。
「はい、ご紹介にあずかりましたアルメリアと申します。ルーベルト公爵家の通訳として同行させていただいております。貴国の素晴らしいもてなしに、感謝しております。」
「噂はかねがね聞いておりますよ。ご聡明でありながら、気品と穏やかさを兼ね備えたご令嬢だとか。」
彼の言葉に、周囲の貴族たちも興味を示し、アルメリアに次々と話しかけてきた。
「アルメリア様、次の晩餐会ではぜひ私と。」
「いや、それならば我が家の茶会にもお招きしたい。」
彼女の周囲には自然と人が集まり、友情を深める者も現れた。特に、同じように社交界で生きる女性たちとの交流は、彼女にとって新たな世界を開くものだった。
「あなたと話していると、本当に学びが多いわ。」
「私こそ、皆様とお話しすることで、多くのことを学ばせていただいております。」
こうして、アルメリアの評判はじわじわと広がり始めていた。
しかし——
彼女自身はまだ、その変化に気づいていなかった。
ただ、新しい環境の中で、温かなもてなしを受け、穏やかな日々を過ごしていることに、心からの感謝を抱いていた。
彼女は知らない。
その名が、すでに遠くの地でも囁かれ始めていることを——。




