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プロローグ

この物語を読んでくださり、ありがとうございます。

現在、毎日3話ずつ更新予定です。

それでは、物語をお楽しみください!

 朝霧がうっすらと漂う庭園。露に濡れた薔薇が静かに咲き誇るなか、アルメリアはそっとその花びらに触れた。彼女は幼い頃からこの庭が好きだった。人々の喧騒や母の厳しい声から逃れるため、ここに来てはひとり静かに本を読んだり、花々と対話するように時間を過ごしていた。

「お姉様、またここにいたの?」

 軽やかな足音とともに、双子の妹・セレナが現れた。彼女は淡いピンクのドレスを揺らしながら、可憐な笑顔を浮かべていた。その姿は太陽のように明るく、人々の目を惹きつける。

 アルメリアとセレナは、名門貴族であるレグニエ侯爵家の双子の娘だった。しかし、双子とはいえ、その扱いには大きな差があった。セレナは黄金の髪を持ち、陽光の下ではまるで輝く宝石のように美しく見える。その透き通るような青い瞳は純粋で愛らしく、見る者を惹きつけずにはいられない。一方、アルメリアの髪は同じ金色ではあったが、少し落ち着いた蜂蜜色をしており、瞳も深い琥珀色だった。その穏やかな雰囲気は、どちらかといえば控えめで、華やかさに欠けると評されることが多かった。

「お母様が探していたわ。朝食の時間ですって。」

 アルメリアはゆっくりと立ち上がった。セレナと並ぶと、まるで光と影のようだった。セレナは華やかで、誰からも愛される存在。アルメリアは慎ましく、控えめであることを求められてきた。

 屋敷に戻ると、食卓には母と父が既に座っていた。母の視線が厳しくアルメリアを捉える。

「アルメリア、もう少し早く来なさい。淑女たるもの、時間を守るのは当然のことよ。」

「申し訳ありません、お母様。」

「まあまあ、お母様。お姉様は朝の庭を愛しているのですもの。」

 セレナが取り成すように言うと、母の表情は少し和らいだ。

「セレナは本当に優しい子ね。それに比べてアルメリアは……」

 母の言葉は続かなかったが、その意図は明白だった。アルメリアはそっと俯き、食事のためにナイフとフォークを手に取った。

 そんな日々がずっと続くものだと思っていた。

 彼女は穏やかで静かな日常に満足していた。たとえ影のような存在であっても、それが自分の役割だと信じていた。

 だが、そんな日々が永遠に続くことはなかった。彼女の運命は、ある日突然、大きく狂わされることになる——。

お読みいただきありがとうございます。

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