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それから僕がふっと思いついて、
「ああ、そう言えば今日第三日曜ですよね?もしかしたらいるかな? じゃあ、……いや、やっぱりいいや」
そう言いかけて言うのを止めると、ルイさんが食いついてきた。
「何? なんか面白いことあんの? 言えよ」
「いや」
「言えって! そこまで言ったんだから」
「分かりました。あの、ここ来る前、駅からの途中に公園を通りかかったの覚えてます?」
「公園? あったっけ公園なんて」
「まあ、小さな目立たない公園なんですけど。そこにですね、第三日曜日の夕方になると、コーヒー豆を売ってる女子高生が来るんですよ」
「コーヒー?」
「はい。めちゃめちゃ高いコーヒー豆で、詐欺まがいなんですけど。それを通りかかった人に売ってくるんです」
「うん」
「それで、そのコーヒーをたくさん買うと、その、サービスでさせてくれるんですよ」
ルイさんは背もたれに預けていた上半身を起した。
「ヤらせてくれるってこと?」
「はい。その辺の風俗嬢なんかより、よっぽど可愛い子ですよ。……買いに行きません?」
僕にはキャバクラに払う金は無くても、性的なことに使う金はあるのだった。
ルイさんは僕の顔をしげしげ見つめ、片手に持ち上げた焼酎の水割りの入ったグラスを宙で止めて、
「買うって、コーヒーを? それともその子を?」
「両方です」
ルイさんはグラスをタンッ、とテーブルに置いた。
「ぐっちょんなあ!」
「はいっ」
僕は後悔した。こうなることはいくらでも予想できたのだ。
「だからダメなんだよお前は! そんなんダメに決まってるじゃねーか」
「すみません。冗談です。冗談ですって。……じゃあ、こういうのはどうですか?」
「何?」
「その子に声かけて、そんな詐欺みたいなことして体を売るのなんてやめろって、説得するっていうのは」
ルイさんは不思議そうな顔をして少しの間フリーズし、それから破顔して、
「それ面白そうじゃん」
とうれしそうに言ったのだった。