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1-2

 それから僕がふっと思いついて、


「ああ、そう言えば今日第三日曜ですよね?もしかしたらいるかな? じゃあ、……いや、やっぱりいいや」


 そう言いかけて言うのを止めると、ルイさんが食いついてきた。


「何? なんか面白いことあんの? 言えよ」


「いや」


「言えって! そこまで言ったんだから」


「分かりました。あの、ここ来る前、駅からの途中に公園を通りかかったの覚えてます?」


「公園? あったっけ公園なんて」


「まあ、小さな目立たない公園なんですけど。そこにですね、第三日曜日の夕方になると、コーヒー豆を売ってる女子高生が来るんですよ」


「コーヒー?」


「はい。めちゃめちゃ高いコーヒー豆で、詐欺まがいなんですけど。それを通りかかった人に売ってくるんです」


「うん」


「それで、そのコーヒーをたくさん買うと、その、サービスでさせてくれるんですよ」


 ルイさんは背もたれに預けていた上半身を起した。


「ヤらせてくれるってこと?」


「はい。その辺の風俗嬢なんかより、よっぽど可愛い子ですよ。……買いに行きません?」


 僕にはキャバクラに払う金は無くても、性的なことに使う金はあるのだった。


 ルイさんは僕の顔をしげしげ見つめ、片手に持ち上げた焼酎の水割りの入ったグラスを宙で止めて、


「買うって、コーヒーを? それともその子を?」


「両方です」


 ルイさんはグラスをタンッ、とテーブルに置いた。


「ぐっちょんなあ!」


「はいっ」


 僕は後悔した。こうなることはいくらでも予想できたのだ。


「だからダメなんだよお前は! そんなんダメに決まってるじゃねーか」


「すみません。冗談です。冗談ですって。……じゃあ、こういうのはどうですか?」


「何?」


「その子に声かけて、そんな詐欺みたいなことして体を売るのなんてやめろって、説得するっていうのは」


 ルイさんは不思議そうな顔をして少しの間フリーズし、それから破顔して、


「それ面白そうじゃん」


とうれしそうに言ったのだった。

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