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最強の職業は忍者でござるよ

 私達はユーリの案内で訓練場に来ました。ここはギルドメンバーだけが入れるモンスター狩場で、どういう仕組みか分かりませんが外ではあまり見ないレアなモンスターもいます。


「ここは一日の制限時間があるから交流には向かないんだよね。限られた時間だけ美味しい狩りができる場所としてギルドだけに与えられた特権なんだけど、人助けになるわけでもないし俺はあまり利用しないんだ」


 なるほど。私にはとても魅力的な場所なので最大限利用させてもらいますね。ちなみに時間が来ると魔法で強制的にギルドホールに飛ばされるそうです。たぶんこの環境自体が魔法で作られたものなのでしょう。


 あ、あそこで誰かが戦っているのはレアモンスターのアメジストスライム! あいつが出す魔石は身に着けた人が素早く動けるようになる強化系の魔石なんですよね。ちょっと欲しい。


「おや、これはユーリ殿。珍しいでござるな」


 私が物欲しげな視線を送っていると、スライムを倒したメンバーが振り返って話しかけてきました。そりゃそうですよね、ギルドメンバーしかいない場所なんだから全員知り合いです。


 ところでこの人の恰好……何の職だか分かりません。全身黒ずくめの服装で顔もほとんど布で覆っていて、黒い布の隙間から赤い目が覗いています。なんか強そう。


「やあカトウ、ギルドに新しく入ったティアを案内しているんだ」


 ユーリが紹介してくれます。私はお辞儀をして自己紹介をしました。


「殴りプリのティアーヌといいます。よろしくお願いします」


「殴りプリ……己の肉体を鍛え上げ、格闘戦で悪を滅する求道者でござるな。これは素晴らしい出会い。拙者は忍者のトビ・カトウと申す。気軽にカトウと呼んでくだされ」


 おお、殴りプリを好意的に見る人です! なんて素敵な日なのでしょう。ところで忍者ってなんですか?


「忍者なんて職業はないにゃ。カトウは何の職業にもついてない初心者(ノービス)にゃ」


「えっ、そうなんですか?」


 ミィナさんが説明をしてくれました。なるほど、架空の職業を名乗っているのですね。でもアメジストスライムを一人で倒していたのに初心者というのも変な感じです。


「ミィナ殿、確かに拙者は公式記録では初心者でありまするが、それは世を忍ぶ仮の姿というものでござる」


 世を忍ぶ仮の姿なら、本当の職業の方を名乗ってはいけないのでは?


「あはは、カトウは東方の伝説が大好きでね。そこによく登場する職業が忍者なんだ。戦士並みに武器で戦えて狩人並みに飛び道具が使えて、盗賊並みに罠や鍵の知識があって、魔術師並みに魔法が使える伝説の職業なんだよ」


 凄いですね、万能職って感じです。でも司祭(ヒーラー)の役はできないんですね。


「回復はできないんですか?」


「忍者の秘薬を飲めばたちどころに傷が治るのでござる! ただ……この地方では材料が手に入らないのでござる」


 なるほど……。


「ギルドの施設はこれで一通り見て回ったかな。後は特別な時期にならないとギルドマスターでも入れない、ギルドの心臓部(コア)が隠されている場所だけだ」


 ギルドコアですか。確かそれを自力で手に入れた冒険者だけがギルドを立ち上げることができるとか。どんな形をしているのか興味あります。


「特別な時期って?」


「国家公認でギルド領地の奪い合いをする一種のお祭り、ギルドバトルさ。国としても領地を任せているギルドが怠けて弱いままでいてもらっては困るから、定期的にお互いを競わせることで危機感をあおって戦力の増強をさせる狙いだ」


 はー、確かに領地を持って満足してしまうギルドが出てもおかしくないですもんね。モンスターを退治するために領地を与えているのに『まったりギルド』とかやられたら損失です。でも説明をするユーリはあまり乗り気ではなさそうですね。さっきも人助けって言ってたし、彼は人を助けるために騎士になったのでしょう。素晴らしいことです。


「ところで、ギルドマスターってどなたですか?」


 そうです。ここまできてまだ私はギルドマスターとお会いしたことがないのでした。登録する時もツインテールでエプロンドレスを着た受付の女性が事務的な手続きをして終わりでしたからね。


「もう会ってるだろ?」


「えっ?」


「にゃはは、新入りは必ず間違えるにゃ。受付してくれた女の子がマスターにゃ」


 ええっ、どう見ても冒険者には見えませんでしたけど!?


「それではあの方こそ何の職業なんですか? どう見てもメイドさんでしたけど」


「メイドさんにゃ」


 そのまんまでした。


「ギルドマスターは大剣を振り回す豪快な戦闘が得意でござる」


 メイドとは一体……?


 何はともあれ、まだギルドマスターのお名前も聞いていないので改めて挨拶をしに向かうのでした。

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