110 エピローグ 小さな恋の物語
最終話になります。
可愛らしい恋のお話をお楽しみいただけたら嬉しいです。
皇城の庭園の一角には、皇后グレイシスが愛してやまない小さな花壇がある。
そこに咲き乱れているのは、彼女が自らの手で育てた花々だ。
決して派手ではないが、色とりどりで可愛らしい。
実はこれ、グレイシスの母国であるアメイジング王国にある、妖精の森や、かつてグレイシスとジャイルズがピクニックで訪れたことのあるモルドーの丘に咲いている花畑で採れた種から育てたものだ。
グレイシスの二人の兄たちから送ってもらった貴重な品である。
皇城の庭園にしては華やかさには欠けるが、グレイシスは好んで世話をしていた。
そんな彼女の姿を公務の合間に見るのが、ジャイルズの楽しみの一つにもなっている。
そんな二人の長男であるクリスチアーノと、ジェラールの長女であるエレナは、まさにその花壇の前にしゃがみ込んで小さな花に触れているところだ。
クリスチアーノは白い花を一輪手折ると、小さなレディの髪に挿してあげた。
「とてもよく似合っているよ、エレナ」
ふっくらとした頬を染めて笑う女の子は、そっと髪に手を触れる。
「わぁ! ありがとうございます、クリスさま。でも、だいじなお花をつんでしまって、おこられませんか?」
「大丈夫だよ。母上は優しいから」
クリスチアーノはエレナの頭をぽんぽんと優しく撫でてあげる。
「えへへ。だったらよかったです。このお花、だいじにしますね」
その様子をじっと見ていたクリスチアーノだったが、ふいに少し顔を背けて言った。
「僕はね、いつか父上のような人になりたいと思っているんだ」
綺麗な青い瞳が少女をとらえる。
「ねえ、エレナ。僕が父上のような立派な男になったら、僕のお嫁さんになってくれる?」
頬を染めてそう言う少年は、緊張した面持ちだ。
小さな女の子は、ぱあっと花咲くようにはにかんで、クリスチアーノの手を握った。
「はい! わたし、クリスさまのおよめさんになりたいです!」
「よかった…。じゃあ、約束ね」
「はい! やくそくです」
二人は満面の笑顔で微笑み合う。
その時、近くまできていたグレイシスの侍女であるデイジーが声を掛けてきた。
「クリスチアーノ殿下、エレナ様。皇后様がお呼びです。美味しいお菓子があるそうですよ」
「わかった。行こうエレナ!」
「はい!」
二人は手を繋いだまま、テラスでお茶を飲んでいるグレイシスとジャイルズの元に走っていった。
fin
最後まで読んでいただき、ありがとうございました(*´∇`*)
ここまでこられたのも、ひとえに応援してくださる皆さまのお陰だと思っています。
心から感謝申し上げます。
また次回作でお会いできたら嬉しいです♪




