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スウィートカース(Ⅳ):戦地直送・黒野美湖の異界斬断  作者: 湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
第四話「実行」
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「実行」(2)

「あいよ」


 ヒデトが玄関の扉をあけると、立っていたのは配送会社の制服を着た少女だった。


 メガネをかけた少女と、その胸についた社員証を見比べ、うなったのはヒデトだ。


染夜名琴しみやなこと?」


「は、はい、わたしです」


 大きなダンボールの箱をかかえた染夜配達員を、ヒデトはやぶ睨みにした。


組織ファイアの差し金か?」


 染夜配達員は、困ったように首をかしげた。すこしおとなしめの性格らしい。


「ふぁ、ふぁいあ? いえ、須川急便ですが……」


「階級は?」


「かいきゅう? お給料の形態のことですか? あ、アルバイトです」


「その荷物はなんだ?」


「お客様へのお届け物です」


 腰に隠した投げナイフをとんとん小突きながら、ヒデトは急き立てた。


「なぜこんなことをしてる?」


「お、お客様のお求めの品物と、満足をお届けするためです」


「そういう四角四面なことは、朝礼でとなえるだけでいい。俺が知りたいのは、染夜さんよ、あんたの真の目的だ」


 しまった、すこし変わったご意見をお持ちのお客様にあたってしまった……こういうケースをすんなり切り抜けるには、まだアルバイトにしかすぎない染夜配達員は経験があさい。ヒデトの威圧感におされ、おずおずと答えてしまう。


「その、わたし、弟と二人暮らしでして……」


「へえ、がんばってるんだな。両親はいないのか?」


「相棒のイノ、いえペットの犬はいます。弟もあたしも学生なんですが、働かないと生活が苦しくてですね、はい。ペットは寝てばかりでよく食べ、エサ代もばかになりませんし。いろんなアルバイトを探した結果、いまの須川急便さんがいちばんわたしに……」


「もういい、よくわかった。へんな質問して悪かったな、ねえちゃん。サインはここにすればいいか?」


「はい。あ、ありがとうございます」


 深々と頭を下げる配達員を扉で封じて、ヒデトはダンボールを居間へ運んだ。


 かなり重い。


 静かにおろしたダンボールのフタを、ヒデトはていねいにナイフで開けた。厳重に梱包材の敷き詰められたそこに入っていたのは、とんでもないものだ。


 額に手をあてて顔をそむけると、ヒデトのため息は震えていた。


「そこから届くのかよ、ミコ……」

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