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スウィートカース(Ⅳ):戦地直送・黒野美湖の異界斬断  作者: 湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
第二話「検索」
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「検索」(16)

「私たちは、なんだ?」


 聞き慣れた声に、ミコは目をあけた。


 夕焼けの帰り道。


 見れば、通学路に立つのはひとりの若者だ。さっき子猫に引っかかれた指を、ミコに渡されたハンカチでおさえている。


 薬局の袋をさげたまま、ミコはあの曲がり角に立っていた。


 ミコの機体はおろか、制服にも傷ひとつない。


 困惑げに、ヒデトはつぶやいた。


「行ってきたんだろ、薬局。なにマネキンみたいに突っ立ってるんだ?」


「あ、いえ、すいません」


「おまえがたそがれる、なんてことはねえよな。おおかた、また組織と意地の悪い極秘通話でもしてたんだろ? そんなお忙しいミコさんにゃ悪いんだが……」


 小さく顔をしかめながら、ヒデトはじぶんの手をしめした。


「だんだん痛くなってきた。消毒するならさっさとしてくれ。壊死して末端から腐り、腕が落ちちまったらどうしてくれる?」


「はい、すみやかに」


「!?」


 いきなりのことに、ヒデトは目を白黒させることになった。


 通学カバンも薬局の袋も捨て、ミコがじぶんに抱きついたではないか。胸の中のミコからは、かすかな嗚咽さえ聞こえる。道に点々と落ちるのは、機械の擬似的な涙の粒だ。


「おいミコ、なにがあったんだ? よせ、人に見られる。やばいって」


 なにがどうなっているかはわからない。時間と現象をふくめて、なにもかもが巻き戻った? だがたしかに、ミコのセンサーはすべて証明済みだ。


 ヒデトとじぶんはここにいる。これは現実だ、と。


「やばくはありません。だって、忘れてないでしょう? 組織が私たちに与えた〝設定〟は……」


 ヒデトにくっついたまま、ミコはつぶやいた。


「〝恋人同士〟」

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