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スウィートカース(Ⅳ):戦地直送・黒野美湖の異界斬断  作者: 湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
第二話「検索」
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「検索」(12)

 場所は戻り、ふたたびあの召喚士の暗い部屋……


 仮面の召喚士の前で、フィアはあっけらかんと肩をすくめた。


「バレてるわね。あんなことやこんなことまで、ぜ~んぶ」


「そうか」


「冷たいわ。もうすぐ組織に強制停止をくらうのよ、あたし?」


「それは裏から手を回して、先延ばしにしてある」


「あら、なんのため? あたしなんかただの実験動物モルモット扱いじゃないの? ご主人様?」


「処分場での戦いの最中、ぼくはきみに命じたはずだ。戻れ、と」


「それがね、おかしいのよ。ふだんからご主人様に従順なあたしだけど、あのときは違った。こう、あたしは生きてるんだ、っていう熱い……感情みたいなもの?」


 召喚士には、毛ほども動揺した様子はない。ただ声のみが流れるだけだ。


「自分でまいた種、ということわざがある」


「自分で刈り取れ、ってアレね? なにかチャンスをくれるの?」


「きみが有利に戦えるように、いくつか細工をした」


 召喚士は言い放った。


「黒野美湖を破壊しろ。いや、破壊だけならたやすい。条件として、その絶対領域……つまり首から上だけは持ち帰れ」


「おおせのままに。必要なのはみっつ。ご主人様の十分な召喚術のバックアップと、(デストロイ)カスタムのフル装備。そういえば、褪奈くんのほうはどうしましょ?」


「いまのアレはまったくいらん。跡形も残さず始末せよ」


「さあ、暴れるわよォ」


 元気に肩を回しながら退室しようとしたフィアを、召喚士がとめた。


「さっき、きみの必要物は()()()と言ったな。まだふたつしか聞いていないようだが、いいのかね?」


「ああ、簡単なことよ。それは、ご主人様のあたしへの……言おうと思ったけど、やっぱりやめた。恥ずかしいから♪」


「まて。ひとつたずねるが……先の戦いできみ、あちら側の世界の電子ウィルスに攻撃された形跡があったな。あの影響はどうなっている?」


 出口のドアノブに手をかけ、フィアはふと自嘲げにほほえんだ。


「影響はゼロよ。あったらとっくに死んでるわ。じゃ、またね」


 一瞬外の光りが差し込み、扉は閉じて部屋はまた暗闇に戻った。


 たったひとりの室内で、召喚士は珍しく感慨のようなものにふけっている。上向けた仮面の裏側、虚空を見つめる視線には不思議な感情がこもっていた。


「あれは、ぼくのフィア……いや、まさか、な」

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