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スウィートカース(Ⅳ):戦地直送・黒野美湖の異界斬断  作者: 湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
第二話「検索」
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「検索」(4)

 ミコの腕時計が着信音を放ったのは、ちょうど買い物を終えて薬局を出たときだった。


「はい、黒野です」


〈ミコ……〉


 時計から響いたのは、マタドールシステム・タイプ(パーティション)……パーテの野太い声だった。


 だがその語調には、いつもの奔放さはない。パーテは続けた。


〈いま話せるか?〉


「はい、大丈夫です」


〈ミコ、落ち着いて聞いてくれ〉


 買い物袋をぶら下げたまま、ミコは首をかしげた。


「私は取り乱したりはしません。機械ですから。なにか重大な用件ですね?」


 通信機の向こうから、すこしの間が返ってきた。機械のパーテも、彼なりに覚悟を決める時間が必要だったらしい。


〈市内の自動車処分場で、ヒデトが見つかった〉


「え?」


〈刃物らしきもので刺され、ヒデトは意識不明の重体だ〉


「そんな、またご冗談を」


 否定するミコだが、ヒデトのもとへ戻る足取りは我知らず早くなっていた。なにか嫌な予感がする。機械に人間の直感があるかといえば疑問だが、このときたしかにミコはわずかな不安を覚えていた。


「ヒデトなら、いま私といっしょに……」


 曲がり角をまがったミコの足は、凍りついたように止まった。


 さっきまでいたはずの場所に、ヒデトがいない。


 カバンのひとつ、靴のひとつも落ちておらず、なんの痕跡も残っていないではないか。


 あわてて機体内の回線からヒデトの通信機を鳴らすミコだが、着信音はどこか別のところで響いた。つまり、通話中のパーテがいる遠い場所から。


 重苦しい声音で、パーテはミコへ告げた。


上糸うえいと総合病院だ。すぐに来れるか?〉

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