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第六話 なぜそこにいた?

さて、そろそろコイツら二人を起こして学校に戻ろうかなと、俺がそう思ったその時だった。


阿久戸「……なん、だよ……お前」


すると、あの男……阿久戸が目を覚ましていた。だがきっと、ずっと前からコイツは起きていたんじゃないのかと、俺はそう思った。

なんせ、彼女より先に気を失っていたのはアイツだ。だから、コイツが先に目を覚ますのは必然とも言えるのだ。


阿久戸「お前……なんでそんなに強いんだよ。……なんで、なんで……」


そいつは、あの一部始終を見ていたのか、そんな事を聞いてきた。


京太「……別に、フリをしていたわけでも、黙っていたわけでもない。言われも聞かれもしなかったから言わなかった……ただそんだけの話だよ」

「お前らが勝手に勘違いをして、そして勝手に最弱だと決めつけていただけだ。別に、俺は自分から一言も弱いだなんて言ったことはねぇよ。そう呼ばれていることに、同意したまでだ」


阿久戸「……じゃあお前は今まで、その力を隠して俺達のことを見下していたのか?!」


京太「なわけねぇだろ。俺はただ、平和ボケした奴らだなと思っただけだ」


阿久戸「それを見下してると言うんだよ!」


京太「……お前に同じ事が言えるか?」

「いつもFクラスにちょっかいを掛けてきては、弱い者虐めをする奴だ。落ちこぼれだからって下に見て、いい気になって調子に乗る……俺らより優秀のはずのBクラスの癖に。あの程度の爆発魔に勝てないようじゃ、結局お前の強さはその程度だったってことだ。これならまだ、橙子のほうが十倍マシだよ」


阿久戸「……!」


阿久戸は、ぐうの音も出ないと言った感じで、その場で膝をつき、悔しそうな顔で俺を睨みつける。


京太「お前が別に周りになんと言おうが、俺は構わない。言っていようが言いまいが、俺は別段気にしないしな」


女「なるほど、そういうことですか」


瞬間、背後から聞き覚えのある声が響き渡った。


美織「お久しぶりですね京太くん。まさかこんなところでお会いできるなんて……」


そこに居たのは、あの時に会った青いフード付きのコートを着た紫の短髪女、美織だった。


京太「あれれ?……誰かと思えば、Aクラスの人の美織じゃありませんか……?こんなところで何をやっているんですか?」


阿久戸「…A、クラス……??……美織?まさかその人って……Aクラス最強と言われている、あの白崎美織!?」


京太「……最強?」


阿久戸は、続けて話始める。


阿久戸「どんな事件も依頼も冷静に判断し、ほんの一瞬で大勢の敵を薙ぎ倒したという実績を持つ、学園最強の能力者だ」


京太「へぇ〜……。そんなすごい奴なら、ぜひ戦ってみたいもんだ」


美織「やめておくれ、私は別に戦いに来たわけではないんだ。たまたま君たちがあの空間に引きずり込まれるのが見えて、無事に出てくるのを待っていたんだ」


京太「あっそ…。まあ、そんなことはどうでもいいんだよ。それに、さっきの話を知られたからと言って、俺は何にもしない。」

「……逆に、最弱だと決めつけてきた奴らの驚く顔を拝んでみたいと思ったくらいだ」


美織「……別に喋るつもりはない」


京太「ふ〜ん……、まあいいけど」


としばらく話し込んでいると、橙子が目を覚ました。


橙子「……んっ」


美織「……どうやら、もう一人が目を覚ましたようですね」


そう言って美織は、橙子の方に歩み寄る。


橙子「……あれ?ここは?」


美織「ここは街の中だよ……」


橙子「街ってことは、私たち戻って来れたの?」


美織「あぁ、そこの二人も無事だよ」


橙子「良かった…。そうだ……!あの男は!?あの緑のフード男はどうしたの!?」


橙子はそう言いながら慌てて立ち上がると、急いで周りを見渡し始めた。


橙子「……いない」


美織「あの緑の男かい?それだったら私が倒したよ、逃げられてしまったけどね……そうだろ二人とも?」


と突然俺らに振ってくる美織に、俺らは口を揃えて


京太と阿久戸「…おぅ……」


と返した。


橙子「そうだったんですか……助けて頂いてありがとうございます」


美織「いえいえ、当たり前の事をしただけですから」

「……さて、また襲われるなんて事もあるかもしれませんし、ひとまず私が貴方達を学校まで送り届けましょう」


京太「……まあ、そっちの方が確実に安心だしな」


橙子「いやでもそれは悪いですよ!私たちだけで帰れます!」


何を言っているんだこの女は?また襲われるという可能性を考えていないのか?それとも襲われないという確証でもあるのか……?俺にはどうもそんな風には見えなかった。


美織「大丈夫ですよ。ちょうど、私も戻ろうかなと思っていたところなので、このまま一緒に行きましょう……その方が安全です」


橙子「……わかりました。では、お言葉に甘えさせてもらいます」


美織「うむ。では帰るとするか」


そうして俺達は、無事に学校に帰り、その日はもう部屋に戻ってすぐに寝た。

さて、相手は部下の一人を失ったわけだが、今度はいったいどんな事をしてくるのかな?それを楽しみにしながら、俺は眠ったのだった。


□□□


次の日の正午。橙子が当たり前のように俺に話しかけてきた。


橙子「結局、何にも分からず仕舞いでしたね……収穫ゼロ。せっかく苦労して外に出て、あの緑の男と命懸けで戦ったのにさ。これじゃあ私がただ怪我しただけじゃない」


京太「まだ痛むのか?」


橙子「……まぁ、ちょっとね。てか、アンタの口から心配の声がかかるとはね……逆に背筋が凍ったわ」


京太「そりゃどうも、気分的にそう聞いてみただけだ。……そういや、気になってた事なんだけどさ……」

「お前……あの時なんで俺を囮にせずに前に出たんだ?」


そこで俺は、あの時聞けなかった真意を彼女に聞く事にした。


京太「あのBクラスの阿久戸をボコボコにするくらいの奴だ、つまりは相当の手練れ。そんな奴に、俺達Fクラスが敵う見込みなんて無い……なのにお前はあの時、俺を助けようとした」

「…やばくなったら俺を囮にするとか言いながら、お前は俺を庇った。あの時は、阿久戸が気を失っていたのもあるかもしれないが。そうじゃなかったにしろ、なんでお前はあの時最弱と呼ばれてる俺を助けたんだ?その理由を教えてほしい」


橙子「……理由……ですか?」

「さあ、気づいたら体がそう動いていました」


京太「……は??」


意味のわからない答えを口にする彼女に、俺は思わずそんな声を漏らす。


橙子「たしかにあなたは最弱です。だからこそ……プロ能力者を目指す者だからこそ。私は弱気を助け、強気を砕くという精神をもとに動いているのです」

「強者が世界を制する世界なんて、私は嫌です。そんな世界があるなら、私が正します」


随分と熱心に彼女はそう代弁した。

どうやら、俺とは圧倒的に考え方の持ち方が違うらしい。まあ、別にそれで構わないのだがな。


京太「まっ……今のお前には到底無理な話だな。もうちょっとマシになってから言ってくれ、その言葉は」


橙子「なっ、なんですってー!最弱のくせに。能力値も史上もっとも低い数値の癖に、わかったような事を言うんじゃない!」


京太「へいへい、悪うござんしたよー」


俺はそう軽く適当に謝っておく。


橙子「そういえばさ、アンタは何か情報を掴んだりとかしてないの?」


京太「んっ?……ん〜…、一応はあるかな?」


橙子「本当!」


京太「でも教えな〜い」


橙子「教えなさいよ!」


京太「嫌だ」


橙子「教えてよ!」


といつも通りの喧嘩のような事をしながら、俺達は通常通りの日常会話を交わすのだった。


□□□


橙子の相手をするのがめんどくさくなった俺は、彼女から隠れるために普段俺が行かなかったところへとすることにした。その結果、行き着いた場所は図書室だった。


京太「どうやらここは相変わらず誰もいないな……そして相変わらず無駄に広い」


俺がこの学校に入った当時から、ずっとこの図書室は対して使われなかった……というか、誰一人としてここを利用する人などいなかった。ここは無駄に広さがある故に、本を探すのが億劫になってそのまま帰る人が多いのだ。そのため、先生達もここには先生を付けなかったらしい。こんな場所があるなら前々から使っておけばよかったと内心少しだけ後悔した。


京太「まあ、ここならもし暇になっても、本があるからどうにかなりそうだな……とは言っても、欠片も読む気ないけどな」

「……とりあえず、次の授業はここで居眠りしてサボるかな……」


と呟きながら俺が机に向かった……その瞬間の出来事だった。


女「きゃっ!?」


突然、本棚の死角から人が現れ、それに思いっきりぶつかられてしまった。俺は全くとしてダメージはなかったが、ぶつかってきた女の方は、どうやら少しご不満のようだった。


女「いたた……ちょっと、どこ見て歩いてるんですか!」


京太「こっちのセリフだよ、お前もどこに目をつけて歩いてんだよ?」

「………つーか、お前どこかで……?」


女「はっ?もうお忘れなんですか貴方は?」


美織「美織ですよ美織!ちゃんと名前くらい覚えてください。昨日は言えてたのに、なぜそんなに早く忘れるんですか??」


何故と言われても、あんたの服装が変わってたからわからなかったのだが?と言いそうになったがなんとか口を噤んでおく。


京太「そういう頭なんだよ、俺は」


美織「難ありですねあなたは……」


京太「……そういや、あの青いコートはどうしたんだよ?」


美織「えっ?……あ、あれはただ上着として着ていただけですよ、流石に学校では着ませんよ……というか、京太さんはこんなところで何をやっているのですか?もうすぐ授業が始まる時間ですよ」


とそんな当たり前の質問が飛んでくる。


京太「……サボり」


美織「サボり……ですか」


京太「怒らねぇのか?」


美織「……別に」


その一言に、俺は少しだけ呆気に取られた。

普通なら、早く教室に戻れ!とか、授業を受けなさい!とか……などを言って強制してくるかと思ったのに、何故コイツは強制をして来ないのだろうか?確かに疑問ではあるが、俺は特に気にしないことにした。


美織「授業を受けたくないのは勝手ですが、あまりここで騒がないでよ?元々図書室ってのは静かに本を読む所なんだからね」

「……それじゃあ」


京太「おう……。あっ、ちょっと待てよ」


そこで俺は、彼女を呼び止める。


美織「なんですか?」


京太「お前に一つ聞きたいことがあってよ?」


そうして俺は、気になった事を聞くために、こう彼女に質問するのだった。


京太「あの時なんでそこにいたんだよ?」


……と。


□□□橙子視点


私は今、先生に呼び出され職員室に来ていた。それは、昨日聞かれた提案の応答についての答えを聞くためだった。


先生「……それで、考えてくれましたか?」


この先生は、能力学というのに長けており、能力についてを研究する学者の先生だ。

名前は間宮喜美まみやよしみと言う。


橙子「いいえ、まだです……」


私は申し訳なくその場で俯く。すぐに判断できないのは、やはりまだ私が弱い証拠なのだろうか?と私が悪い方に考え込んでいると……。


間宮「大丈夫、誰にだって判断の決断ができない時はあるわ。後悔しないようにどうするべきなのかというのは、とても難しいのよ」

「だから……ゆっくりでいいから、よく考えて決めなさい」


私はその先生の言葉に元気付けられ、またいつものような私に立ち直った。


橙子「はい!では、考えが決まったら、今度は私から言いに行きますね!」


間宮「そう、じゃあそれまで待っているわね」


橙子「はい!」


と私はそう大きな声で返事をして、この部屋を出るのだった。

さて……それじゃあ、彼を探す続きでもしようかな、とそう意気込みながら私は学校中を探し回るのだった。

「面白い」と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から応援おねがいします!


良かったと思えば星5つ、つまらないと思ったら星一つ、正直に思ったことで大丈夫です!


ブックマークもしてもらえると本当にうれしいです!


何卒よろしくお願いします!


あと、Twitterを「甘堕乱」という名前でやってます。よければそちらも見に来てください!

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