第三十七話 再会
京太「終わったな」
日内「あぁ、そうだな」
まだまだ余裕がありそうに男は手元から剣を消してこちらの方を向く。
京太「……なぁ、一つ聞きたいんだけど。さっきの剣どこいった?」
どうしても気になったので、僕はそれについて聞いてみた。
日内「え?それは、自分の能力で空間に収納したんだよ」
そういえば、さっき剣を消した時一瞬だったけど目が赤くなっていたような……?気のせいかなと思っていたが、もしかして関係あるのか?と、久しく頭を働かせていると。
遥香「んっう〜〜ん……。あれ?ここ、は?」
気を失っていた遥香が、ようやく目を覚ました。
京太「よっ遥香。よく眠れたか?」
遥香「えっ?あー、多分……?」
あんなことがあって脳がまだハッキリとしていないのか。なにがなんだかという顔をして僕の目を見つめる遥香。
京太「よし!それならよかった」
日内「なにがいいんだよ……?」
と、小声でそんなツッコミをする名の知らぬ革命軍の男。
京太「つーか忘れてたけど……、お前誰だ?」
男は今更かよっと呆れたような顔をすると、口を開いてこう言った。
日内「名乗ってもいいが。ここじゃなんだし……一旦本部に帰ってからにしてくれ」
……と。
京太「わかった。でも、どうやって?」
たしか、本部に行くにはあのワープの娘の能力がないといけないように場所を隠していたはず。あの子なしでどうやって、と思っていると。
日内「これを使うんだ」
と言うと男は、ポケットから小型のスイッチを取り出すと、ダイアルの矢印と絵を合わせて、それを押した。
瞬間。あの時、灯嶺に本部に連れて来られた時と同じ光が差し込むと。光が止んだ時にはもうそこは、革命軍本部の前に着いていた。
いつの間にこんなモノを……ここの技術班は本当に凄いな。
遥香「ここ、どこですか?」
遥香が不安そうにこちらを見つめながら僕の隣を引っ付いている。まるで、コアラのようだなと思ってしまったことは黙っておこう。
日内「安心しな嬢ちゃん。俺は、ある人から頼まれてアンタを守ったんだ。それに、もしもの時は隣の彼氏がどうにかするだろ?」
京太「……へっ!?」
突然のその単語に思わず顔が熱っぽくなる。この男、からかいやがって。
日内「それじゃあ、ついてこい」
京太「遥香。心配しなくても大丈夫だから、不安ならそのままでいいからな」
遥香「うん……」
彼女の体の震えが体に少し伝わる。それだけ怯えているということだろう。共に目の前の建物に足を向けそこの中に入って行くのだった。
日内「まず、なにからだっけ?そうそう、俺の名前だったな。俺の名前は日内小五郎という。この組織の戦闘員リーダーであり特攻隊長だ」
京「へ〜特攻隊長か……。それはさぞお強いんでしょうな?」
日内「お前程じゃねえさ」
京「どうだか……。さっきの戦いでもアンタは一ミリだって本気を出しちゃいない。……俺にはわかるぜ、まだあるんだろ?」
探りを入れてそう聞いてみるも、日内という男は表情を変えず、ただ適当に言葉を返し、そこで会話は終わった。そっから無言で歩くだけだった。しばらく経つと、男はそこで足を止めた。
日内「さて、お前らはここで待ってろ」
京「待つ?……急に客人を招いておいて待たせるたぁマナーがなってないなぁ〜革命軍は?」
遥香「…………」
日内「……。あーなるほど、そういうことか」
京「は?」
と、なにか理解したような顔をする日内に対して、頭の上にハテナが浮かぶ。
日内「今思い出したよ、そういえば灯嶺が言ってたな。お前が二重人格だってこと」
あーそういうことか。つまり、急に自分の一人称や雰囲気が変わってずっと混乱していたけど、灯嶺に俺の情報を教えてもらってたのをうっかり忘れてここまでその悩みを引きずってたということか。
京「知ってたんだな、お前。いや、厳密にはお前らなのかもしれないけど。なら、いちいち説明する必要もねえわけか」
日内「そうだな。しかし、戦闘バカに見えて意外にも察しがいいのだな」
京「どうも……それで、ここで待てばいいんだな?」
日内「あぁ、そうだ。今から君たちに合わせたい人がいる。まぁ、正確にいえばそこの少女に会いたいと思っている人、だけどな」
京「……なるほどね。よし、久しぶりに寛ぐとするかな。待ってようぜ遥香」
遥香「えっ?……あ、はい。わかり、ました」
そうして、俺たちは日内がその人を連れてくるまでの間、その部屋で待つことにするのだった。
□□□
遥香「……あの」
中に入ると突然、遥香に声をかけられた。俺は即座に京太と交代し引っ込む。
京太「どうしたんだ遥香?」
遥香「その、さっき……にじゅうじんかくと聞いたけど、それってどういうこと?」
京太「あーー……クソアイツ、急に出しゃばるから」
遥香「へっ……??」
僕の独り言に対して、なにを言っているの?といった顔でこちらに困惑している遥香。
京太「う〜ん、どう説明するかな。とりあえず……“僕”が遥香ちゃんとよく話してた京太で!」
京「んで“俺”が、最初にお前と話した時の京太だ。ちゃんと名前もあって、京という名前がある……という訳なんだがわかるか?」
遥香「えっ……、ええぇぇーー!!???」
京太「黙っててすまなかったな。京だと仲良くなろうと思っても余計拗れるかと思って……そのうち話そうとは思っていたんだけど。まだかなぁ〜、と思って」
遥香「・・・」
京太「え〜っと、遥香?」
目が点になった状態で彼女は、ぼーーっとそこで佇んでいる。
京『……こりゃぁ、あまりのショックに放心してるな』
うん、何故だかわかんないけど。
京太「おーい遥香」
遠くを見ている彼女の意識をここに戻そう思い、彼女の肩を揺さぶって起こしてみる。
遥香「はっ!」
京太「おし、戻ったな。大丈夫か遥香?」
遥香「あー……はい。まだちょっと整理が追いついてないですが」
京太「まあ、脳が動くならそのうち理解していくよ」
遥香「そうかもです、ね。てか、今思い出しましたけど、最初に私に話しかけてたの京さんだったんですね」
京太「そういえばそうか」
連れ帰った日の夜は京が彼女を相手をしていたな。と、まあ遥香の気になっていたことも解決したことだし。ようやく僕らは、その部屋のソファーに腰をかけ、自分は一つのソファーを欲張りに使って寝っ転がるのだった。
因みに、靴を脱いでいます。
遥香「あっ!」
すると、遥香はなにかを思い出したような声をあげた。
京太「どうしたんだよ?」
遥香「そういえば、京太さんに渡された帽子、まだ返してませんでした。これ、返しますね」
京太「あー、別にいいよ被ってて。というか、あげるよ」
遥香「えっ?いいんですか」
京太「別にいいよ。そもそもファッションとか全然興味なかったし、適当に買ってみただけだし……」
遥香「あんなに任せとけって言ってたのに、ファッションの知識無かったんですね」
京太「それはその、可愛い子にはカッコつけたいというか?」
本当は花御と重ねていた部分が作用して、お兄ちゃんぶりたくなったというのが本音だが。恥ずかしいので黙っておこう。
京太「そういえばだけど遥香?」
遥香「なんですか?」
京太「自分のお姉ちゃんに会いたいと思ったことってあるか?」
遥香「それは、もちろんです会いたいです!……そういえば、私を世話する理由はそのお姉ちゃんに頼まれたからって前言ってたよね」
京太「あぁ、確かにそう言ったな」
あの時は、ふ〜んっで返されたから無視していたのかと思っていたが。思いの外ちゃんと話は聞いていたのか。
遥香「あの時はまだあなたを信用していなかったので、嘘ではないかと疑っていましたが……。お姉ちゃんの場所を知ってるんですか、会うことができるんですか!?」
と詰めよってくる遥香を宥めて言おうとした矢先に、コンコンっとタイミング良くノックの音が鳴り響いたのを聞いた僕は、そっちを一瞥してから彼女の方に向き直り、こう告げた。
京太「君の求める答えは、その扉の目の前にあるぞ」
と言ってから、僕は扉の前にいるであろう人物にいいぞっと声をかけると……。やがて、ソイツは部屋に入り、僕たちの前に姿を現した。
美織「はる…か?」
遥香「……だっ誰ですか?」
美織「ハハ……無理もない、よね。だって、あれからもう10年以上も経っているんだし。顔だって成長しちゃったからわかんないよね」
遥香「待って……もし、かして。お姉ちゃん、美織お姉ちゃんなの?」
美織「遥香!」
立ち上がった遥香は、美織の元へと勢いよく飛び付いた。二人は共に大粒の涙を流して再会を喜び合い、お互いにめいいっぱい抱きしめ合っていた。
美織「遥香!ようやく、会えたね……生きててくれて、ありがとう!」
遥香「お姉ちゃん……ずっと、ずっとずっと会いたかった……寂しかった!」
美織「遥香!!」
遥香「お姉ちゃん!!」
まさしく、感動の再会。いままで離れ離れとなっていた姉妹の真の再会が果たされた。
彼女達をみていると、なんだかこっちまで泣きそうになる。
京太「……さてと」
抱きしめ合う二人の姿を横目に、僕はソファーから立ち上がって扉の方へと手を掛けた。
日内「どこいく気だ?」
京太「なんだよ?せっかくの再会に水を差すわけにはいかないだろ。安心しろ、少しの間ここを開けるだけだ。すぐ戻ってくる」
日内「……そうか。なら俺も扉の外でしばらく待つことにしよう」
日内はそう言うと、僕と共に部屋を退出するのだった。
□□□
京太「それじゃあ、ちょっとそこらでも歩いてくるよ」
日内「おぅ。けど、あんまりウロチョロし過ぎるんじゃねえぞ」
京太「わかってるって、それじゃあ…………」
京「……いくか」
暇潰しのためその場を後にした俺は廊下を歩き出し、適当に散歩を始めた。いずれは、ここの基地にお世話になることが多くなることだろう。となればこの際、内装をしっかりと把握しといた方がいいかなと考えた。前にも一回見回ったが、あの時はまだ見てきれてなかったからな。存分にウォークキングを楽しめさせてもらおう。
京「にしても、だだっ広いなこの建物は……どれだけの面積を有してるんだ?」
??「あれ?そこにいるのは……」
京「……ん?」
ちょっと歩いたところで、俺はある女とある男にすれ違った。
レイ「こんにちは!」
田中「お久しぶりです」
京「おっ?誰かと思えばレイ・アフェリアとそのお世話係じゃねえか」
田中「合ってますけど……そうじゃない」
何やら微妙な顔をして下を向く男の言葉を無視して言葉を続ける。
京「一瞬わからなかったよ、なんせあの時とは服装が違ってるからな」
レイ「似合ってますか?」
京「……似合ってるとは思うぞ」
イマイチ俺にはファッションのことはわからないのでとりあえず思ったことを口にしておく。
京太『うん!よく似合ってる似合ってる!』
なんせ、あんなあられのない露出高の服装じゃないからね。こっちとしても安心して見てられる。
田中「実はこの前、レイと一緒に街に出掛けまして。ある用事のついでに彼女の服も見繕ったんですよ」
京「へ〜、そうだったのか。革命軍は結構ホワイトなとこなんだな」
田中「そうですね。私達のために衣食住や雑談、子供の遊び相手に戦闘の手解きまで、トップとしての仕事以外にも色々とやってくれてるんです。あの人のカリスマ性は、日々の積み重ねによって培ったものなのです」
京「やけにあの灯嶺のことに詳しいな……。もしかして、惚れてたりすんのか?」
田中「そっそんなわけないでしょうが!」
レイ「そうなんですか?てっきり私もそうなのだと……」
田中「別にリーダーとは、ただの年下の幼馴染なだけでそれ以上の気持ちは一切思ったことないよ!」
京「へー、ふーん、ほ〜ん(ニヤニヤ)」
田中「というか、俺の好きな人は……め、…えっていうか」
京「なんて?」
レイ「なんて?」
お互い同時に首を傾げ、ハモる。
田中「なんでもねえよ!てか、ハモンな!」
なんか知らんがハモったんだよ。
京「そう怒んなって」
レイ「…………(じーー)」
京「……ん?」
いつの間にか真横でずっと俺の方を見てレイが凄くこちらを見つめてきている。まあいいかと思い、一度目を離して田中のことをいじり倒した。それから、数分が経過し……今度は僕が田中と会話を始め、色々な話題で盛り上がっていたのだが。
あまりに長いごとこちらを見るものだから、気になってしまった僕は、彼女の方に向き直り問いただした。
京太「なっなに?」
レイ「あっいえ、すいません。少し考え事をしてまして」
京太「……そうか。それじゃ、僕はそろそろここで失礼するね」
レイ「あっはい。ではまた、お話ししましょう!」
田中「俺はもうやだ……けど。京じゃなく京太ならオッケーだ」
最後の田中の声を流しつつ、俺らは移動する。まさか、いつの間にかあんなにレイが溶け込んでいたとはね。アイツ用の白コートまで用意されてたし。もう立派に革命軍の一員になれたんだな。ん?…………てことは、もし僕が入ったらあれを着なくちゃいけないのか。まあ動きやすくはあるだろうが……。
京太「正直、着たくはないかな」
京『正直、着たくはねぇな』
と、二人同時にそう思うのだった。
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