第三十六話 双剣の革命家
□□□現実世界 数分前
少し遠くから、黒宮兄妹が戦闘を始めた。それに続くように俺たちも戦闘を始める。すぐに俺は、そいつの間合いに入り攻撃を仕掛けにいった。
日内『居合!』
赤コート「……っ!?舐めるな!」
そいつの炎の剣が俺の剣を受け止める。流石は、強者が集まると言われる“ミドルブラッド”の兵士。油断できないな……まあ、余裕は持てそうだけどな。
日内「へぇ〜……。てめえの……何だっけ?その、インフェなんたらとかいう剣には、物理判定がしっかりあるんだな」
赤コート「当たり前だろ?剣だからな!」
すると、ソイツは先程の俺と同じ動きをして剣をこちらに向けてくる。だが、それを容易く回避しカウンターを決める。
赤コート「……ぐっ!!まだまだー!!」
その男が周りに炎を燃え上がらせると、それを魔法使いのように操り始めた。
赤コート『地盤猛火!!』
地面に燃え盛る炎が、男の叫び声と同時にこちらに迫り来る。その炎を難なく切って見せるが、あまりの勢いに自分の着ている白のコートに火の粉がうつってしまい、焼けてしまう。
日内「チッ!」
すると、男がチャンスだと言わんばかりにニヤッと嫌らしい笑みをこちらに向けてくる。なにかあると今までの経験で察しがついた俺は、即座にその炎を回避しつつコートに燃え移った火を急いで消そうとするが……。
赤コート『反転……』
と、男がそう口にしたその時。
さっきまでコートについていた小さな火が消え、かわりにその箇所から氷が形成され、地面と共に足が凍りついてしまった。
日内「……なっ!?」
あまりの予想外の出来事に、少し驚愕する。
赤コート「クックック。爪が甘いな特攻隊長さんよー!」
日内「それはどうかな……?」
赤コート「?……」
目を閉じる。あまりこの能力は使いたくはないのだが……。こんな状況だし、たまには使わないと鈍ってしまうしな。
と考えながら、一度閉じた目を大きく見開いて……能力を発動する。
ピキピキビキッ!!パリーーーーン!!!
赤コート「っ!?!?」
刹那。体に張り付いていた氷がひび割れると、一瞬でそれは跡形もなく砕け散った。
俺は、赤くなったその目でソイツに視線を向けて、狂ったような笑みを浮かべるのだった。
赤コート「赤い目……なるほど。いったいどんな能力かはわからないが。今の今までそんな力を隠していたとはな……」
俺は再度目を閉じてから開いて、能力を解除する。
赤コート「もう能力は使わなくていいのか?」
日内「俺は手札を取っておきたい性分でね。決戦でもないのに、ひけらかす馬鹿はいねえよ」
赤コート「……それもそうか。にしても、ここまで俺とやりあえる奴がいるとは思わなかったよ。伊達に革命軍トップよりも強いと豪語していただけのことはある」
日内「……だろ。けど、アンタもなかなかだぜ」
赤コート「……赤鳥だ」
日内「……あっ?」
赤鳥「俺のネームだよ。お前のその強さに敬意を評して、特別に教えてやる」
日内「ふぅ〜ん」
特に興味がなかったので、適当に相槌を打って聞き流した。
日内「……てか、ちゃっかり雑談みたいになってるが。体力回復のための時間稼ぎか?それとも、もう終わりなのか?」
と目の前のなんたら鳥に向かって、そんな煽りの言葉をかける。
赤鳥「まさか……クックック。ちょっと雑談を交わしただけで、ここまで言われるとは。先程のアレは、俺の勘違いかな?」
と、赤い鳥が煽り返す。
日内「これだけで弱者と思うのは、ちょっと早過ぎるんじゃないかのか?まだ、お互いに本気も出してないだろうに……」
赤鳥「やはり気づいていたか。流石は革命軍特攻隊長だ。なら次は、本気で行かせてもらおうか!」
激しく地を蹴る音が同時に鳴り響くと。次の瞬間、お互いの剣がぶつかりあう。今度は相手も、本当にガチのつもりなのだろう、もう一方の手から炎の剣を生成し、二刀流になってかかってくる。
剣を交えての押し合いに持ち込むも、相手の力によって後方へと押し出された。相手は間髪入れずに次の攻撃を仕掛ける。今度はあの剣の刀身を伸ばして横にそれを薙いだ。
俺は上手に炎の間を潜り避けながら距離を詰めに行く。
赤鳥「クック!!どうだどうだー!!」
相手は器用にも、さらに周りに炎を展開させて足場を狭めにくる。だが、そんなものは無駄な事。全部、叩き切るまでだ。
そうして、ついにその男の距離が2メートルにまで差し掛かったところで、一撃を与えようと構えをとる。
赤鳥「フンっ!」
すると、赤い鳥は持っていた2本の剣を突然上空に回し投げると、また新たな剣を生成しようとする。これはまた何かあると思い、即座に剣を力強く振るう。……が、しかし。一歩及ばず相手に攻撃をいなされてしまった。
赤鳥「ここだぁー!!」
鳥が喧しくそう叫ぶと、ソイツは勝ちを確信したかのように。また、あの言葉を発した。
赤鳥『反転!!』
次の瞬間。さっき鳥が上空で回し投げたそれが周辺に飛び散った火の粉と一緒に氷へと変わると、一気に氷通しが連なっていき……。
気づけばそれは俺たちを閉じ込める鳥籠の形へと変形した。
日内「……何だこれは?これで俺を閉じ込めたつもりなのか?」
赤鳥「まさか……、本題はここからさ」
パチンッ!
と、鳥が指を鳴らすと。次々にこの鳥籠の外の地面から、ゾロゾロと異形の雑魚達が大量に出現し始める。だが、見てわかるくらいにその数は桁違いに多くて、思わず困惑する。
赤鳥「さて……お前ら、あの少女を回収しろ」
日内「っ!?なに……」
赤鳥「確かお前、こう言ってたよな……。護衛対象がいると本気が出せない……ってな!あの少女を回収すれば、俺たちの目的は完遂され、オマケに本気のお前と殺り合える。お前だって嬉しいだろ?」
日内「クソ……なにかあるとは思ってたが。めんどくせぇことしやがるな」
俺を倒すための一手かと思っていたが、その予想は外す結果となった。どうやらアイツは、先に目的を完遂してから俺とゆっくり遊ぶつもりのようだ。……どんなにトップより実力が上でも、灯嶺みてえな勘は働かねえみてぇだ。
日内「悪いが、俺にはあの子を守るよう頼まれてるもんでな。連れてかれるわけには、行かねえよ!!」
刹那。遥香のいる方向へと猛スピードで突っ走って、目の前の氷の壁に斬撃の一撃を与える。
日内「おぉうらぁぁぁー!!」
能力を使わず、ありったけの力で攻撃するも亀裂すら入らなかった。硬すぎんだろいくらなんでも、本当に氷かコレ?
赤鳥「貴様には切れんよ、この分厚い氷のドームはな」
日内「おいおい、マジで面倒いことしてんじゃねえよ」
赤鳥「クックック。さぁ〜てと、第二ラウンドと行こうか」
クソ鳥はそう言うと、手に顕現していた炎の剣をなぜか消して。
赤鳥『能力反転・氷』
そう男が呟いた時だった。さっきまで炎を操っていた鳥野郎は、今度は冷気を操り始めると両手に氷の剣を生成し、刃をこっちに向けて楽しそうに高笑いする。
赤鳥「キキャキャキャア!!今度はこのブリザードブレイドを披露してやろう!覚悟は良いか?日内小吾郎」
日内「今はテメェのそれに付き合ってる暇はねえ!」
またあの能力に頼れば、こんなもの簡単にどうにかなるのだが。けど、これ以上あれに頼るわけには……と、なんとか策を練ろうと頭を悩ませていると。
??「それなら安心しろ」
氷壁の向こうからその声は聞こえてきた。薄らと半透明に映ったその男のシルエットに、俺はニヤリと笑った。
赤鳥「……っな!!!!????」
京太「僕が、全部処理しといたからな」
氷を隔てた外の光景を改めて見ると、無惨な姿で散らばった異形達の屍が広がっていた。元人間の生物によくもまあ……。
日内「まさに、死屍累々だな」
京太「いや〜、前より戦闘の勘が鈍ってるみたいでな。力の調整もうまく出来なくて……よ!」
奴の背後から残りの異形が攻撃をしてくるものの、呆気なく奴らもボコボコになって倒れた。
日内「?……まあとにかく、もう俺は戦いに集中してもいいわけだな?」
京太「そういうこった」
さっきとは雰囲気が違うが、そんなことを気にする暇もなく。
赤鳥「余所見してんじゃねえ!」
鳥は容赦なく飛び込んでくる。
赤鳥「…………えっ?!」
が、俺はソイツの攻撃を難なく避け、背後を取る。
日内「んじゃあ、そうさせてもらうよ」
鳥が振り返るよりも前に少し強めの蹴りを入れて、軽く吹っ飛ばした。
赤鳥「へぇ……やるじゃねえか」
鳥は、少し痛そうにこちらを睨み笑う。
こんな丁度いい闘技場を作ってくれたんだ。思う存分、奴の望み通りにやらせてもらうとしようかな。
日内「かかってこいよ。まだあるんだろう?」
赤鳥「当たり前だ!!能力反転・炎!!」
右手に持っていた氷の剣を炎の剣に変える。
ソイツの持つ二つの剣からは、それぞれ炎と冷気が放出されており、そんな高等なテクまで可能にできるのかと少し感心する。
赤鳥「いくぞ!!」
日内「こい!」
そうして、もう一度戦いの火蓋は切られ、お互いに斬りかかろうとした……が。
赤鳥『蜃気楼!!』
俺の当たるはずだった攻撃は空を切り、そこに見えた筈の肉体は一瞬にして消えていた。周りの地面から所々に炎が燃え上がると。微かに霧がかかり始めた。すると、炎の光と氷の面の屈折によって、至る所に鳥野郎の姿が影分身でもしたかのように増えた。
日内「……どんな手かと思ったら、こんな手か?」
瞬間。右後ろの方向から冷たい風を感じ、少ない動きでその斬撃を避ける。本気の割にはしょうもない技だなと、思わずにはいられなかった。それからは、どこからともなく炎と氷の斬撃が俺を狙ってやってくるが。俺はその全てを擦る事もなく避ける。
日内「……ん?」
なんか、だんだんと蒸し暑くなってきたな。それに、霧もやけに濃くなってきて、だんだんと湿気によって体力を消耗していっている。すると、今度は斜め上から炎の斬撃が飛び交ってくると、それをまた余裕で避ける。だが、すぐ後ろから物凄い音を建てて氷の剣山がこちらに向かって伸びるも、それも難なく回避して得意の剣技で破壊する。
日内「チッ」
流石の俺も、ちょっと我慢できなくなってきた。小物みてえな忌々しい攻撃して来やがって!!流石に我慢の限界だったので、そろそろ自分の力を解放する事を決める。
日内『風の気・上昇気流!!』
炎と氷によって産まれた霧を刃の風の気流で集めながらドームの天井を突き破り、そこから風に乗って霧を外へと吐き出していく。
霧に包まれたドーム内の景色がだんだんとハッキリ見えるようになる。すると、ようやくその男は姿を現す。
赤鳥「やるな!」
ソイツは満足そうに微笑みながら言う。
日内「やるな!、じゃねえよ。折角付き合ってやるというのにお前という奴は、これ以上俺を失望させるな」
赤鳥「クックック。ではそろそろ、ショータイムと行こうか」
日内「あぁ。これで決めてやる」
お互いに向き合いながら、自分の大技の構えを取る。そうして、ドームの天井から滴る一滴の水が床に落ちるのを合図に。それを、放つ。
赤鳥『煉獄氷塊!!』
日内『神撃・ホーリーコンベクション』
お互いの技が拮抗し合う。超火力の炎と凍てつく冷気を纏った剣が襲うも、それと同等の火力で掻き消す光を剣から放つ。物凄い衝撃の風により穴の空いたドームがドンドンと亀裂が入っていき、そして激しく壊れていく。
赤鳥「こんなものかー!!」
日内「フッ……なわけなねえだろ」
赤鳥「んじゃあ、さっさとだせよ!」
日内「後悔するなよ!」
赤鳥「ハハハ!後悔……?そんなものな……い?んっ?なっなに……?!」
俺は力を強めて、ソイツの力を圧倒的に凌駕するほどのパワーを引き出すと。ソイツは、わけがわからないと言う顔をしながら押されていった。
赤鳥「なんだとー!?まだそんな力を〜??!!」
日内「これで………………勝負はついた」
俺はソイツの剣ごと体を真っ二つに切り裂き、そして勝負は終わった。そこで、世界から暗さが消え空間が消滅していく。そして、ようやく俺たちはさっきの公園へと戻ることが出来たのだった。
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