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第二十九話 大幹部

ただただ暗い空間だけが続く道で……俺はただ走っていた。逃げなきゃ、逃げなきゃ!あんな怪物みたいな人間に……いや、化物に勝てるはずがねぇ!俺はただ、少しでも実力を上げたくて、依頼をこなして成り上がりたかっただけなのに。

……どうして、あんなヤバい奴らに当たっちまうんだよ。


男「プロ能力者も、俺と同じ生徒達も……全員殺された。次は、俺の番だ」


嫌だ、俺はまだ死にたくないのに!!けど、こんな謎の空間に連れてこられれば、もう逃げる事ができないというのは、なんとなく理解してしまうことで。だが、そうわかっていても藁にも縋ろうとするのが、生に執着する人間だ。

そして……最終的には……。


グチャッ!!!!!


瞬間。俺の腹は、手のような異形な形のもので貫かれた。口と腹から大量の血が流れ出る。足元が血で溢れ、その量は小さな水溜りが出来上がるほどだった。


??「クククッ」


俺を刺したソイツは、狂ったような笑みを浮かべながら


??「なかなかに楽しい駆けっこだったぞ。……だが、無駄だったな。この俺に、お前の『瞬足』の能力では敵わないし逃げられない」


男「意味が、わからない」

「どうして、お前らみたいな悪が、善の人間に勝てるんだよ。だって、正義は絶対に勝つもんだろ」


??「言っておくが、正義が絶対に勝つという理論は存在しない。中には己の正義のために戦う奴らだって存在する。つまり、お前ら政府とその犬共だけが正義だとは限らないのだよ」

「まあ……俺たちは、完全な悪だけどな」


俺の腹を刺した奴の手がグロい音を鳴らしながら抜かれる。そのまま俺は重力に従って倒れた。そりゃあそうだ、これだけの血を流せば人間誰でも動けなくなってしまう。

だんだんと薄れゆく意識の中、俺はソイツに問いた。


男「お前、何者なんだ……??」


すると、その男は……こう名乗って……


??「クロスだ。じゃあな、死にゆく者よ」


最後に……強烈な痛みを味わって、俺は死んだのだった。


□□□


あの男に止めを刺したあと、赤黒い空間が溶け、俺はその場所に転送された。あの空間はとても便利なものだ。本部の外にいてもこうして空間の中で戦闘していればいつでも戻ることができるのだから。

……だが


クロス「別に本部に戻さずともよかったのだが……」


??「すみません、クロス様。ですが、ノール様が直ちに戻って欲しいとのことだったので。至急ここに呼び出させていただきました」


この黄色のコートを来た無表情の女性はテレポーラ。名の通り空間系の能力を持った狂人組の一員だ。因みに、ノールのお気に入り第4号でもある。


クロス「ノールか……。わかった、それで何の用だ?」


テレポ「はい。伝言を預かっております。会議室で待つと」


クロス「わかった」


そうして俺は、その子が言っていた部屋の方へと向かい。すぐさまその部屋へと足を踏み入れた。


??「おっ?どうやらお偉いさんがお出になられたみたいだぜ」


俺が来て、最初に声を発したのは緑のコートを見に纏った赤髪のチャラそうな爆発頭男。「へムール」だった。へムールのまとめる組織『ウィークウィード』は、精神面もマトモで弱い奴らしか集まっていない最弱の組織だ。弱いのもあってか、ヤバくなれば組織を売ろうとする奴らが多い組でもある。


グリザ「あなたはもう少しテンションを下げることができないのですか?聞いていて少し腹が立ちます」


次に口を開いたのは、青いコートを着た「グリザ」。頭のいい奴らが集められた組織『ブラウジェナール』を仕切っている。グリザは真面目で研究熱心なキレものだが、へムールのようなチャラい奴には嫌悪感を抱いている。因みにコイツもノールのお気に入り第3号だ。


??「キャハハハハ!!いい加減グリザくんはへムールの言葉に口煩く言わなくてもよくなーーい??話すたびにいつもイラついてるじゃん。私としてはこの空気感が好きだから構わないけどさー!」


その次に言葉を発したのは、黄色コートを着た女で、名前を「クレイ」と言う。狂人だらけの組織『ジョーヌファナティック』を任されているリミッター兼最恐の女狂人だ。この俺ですら、敵に回したくないと思っちまうほどにヤバい奴だ。そしてコイツも、ノールのお気に入り第2号でもある。


??「うるさいぞお前ら、クロス様の御前で恥を晒すのはやめろ。殺されたいのか??」


赤いコートを着た男「ルーボ」がそう殺気の籠った目で威圧すると、先ほどの三人が同時にルーボの方に視線を向け、一斉にそいつらも殺気を放ち始めた。コイツは、この四人の奴らよりも圧倒的に優れた組織『ミドルブラッド』を束ねる幹部。そして、赤コートの男は、他の三人とは違った威圧感が存在し、俺もノールもこの四人の中で1番の規格外はコイツだと認識している。


へムール「へー……殺すって?お前が、俺らを??」


グリザ「バカだな、幹部同士の争いは御法度だと言うのに……」


クレイ「なにそれ?グリザ君それって負けた時の言い訳?」


へムール「まあ、俺はこの中じゃ最弱だから、別に……だけど。俺は別に殺っても良いぜ??」


ルーボ「ほぉ?そんなに言うなら相手になってやろう」


クロス「おいお前ら……うるさいぞ」


へム「っ!!」

グリ「んっ!!」

クレ「キャハっ!!」

ルボ「………」


瞬間。俺の一声と共に、場が一瞬で凍りつく。ある者は恐れおののき、ある者は汗を流し、ある者は興奮し、ある者は冷静な顔をしていた。

やっと静かになったところで、俺はさっきから姿が見えないやつのことをソイツらに問いただした。


クロス「おい。ノールはまだ来ていないのか……?」


ルーボ「それが、どこにいるかわからないらしく」


クロス「なんだそりゃ、呼びつけておいて放置プレイか??随分と面白い性癖を持つようになったもんだな」


などと悪態をついていると……。


ノール「やれやれ、ちょっといないだけで言いたい放題言いますねあなたは」


噂をすればなんとやら、ソイツはタイミングよく現れた。本当にコイツは………恐ろしいやつだ。


クロス「ふんっ。テメェがいねぇのが悪い」


俺はそれにさらに悪態をつく。


ノール「それはすまなかったね。さて、これ以上長引かせてはクロスに悪いから、早速始めるとしよう。今回の議題について………」


そうして、ノールによって集められた俺と、四人の幹部達による会議が開かれたのだった。


□□□


ノール「ふむ。だいぶ話は纏まったようだな。もうこれで十分だろう。ご苦労だったな」


ノールのその一声により、ノールを慕う四人の幹部が口を揃えて「お疲れ様です!!」と声をあげて、四人の幹部は颯爽とその部屋から退室して行った。


ノール「クロスも、お疲れ様」


クロス「……そりゃどうも」


沈黙が流れる。

俺とノールは、同じように彼の方の事を慕っており尊敬している。ノールの場合は、少し曲がった思考をしているが、多分抱いてる気持ちは同じのはずだ。俺たちは、特別仲がいいわけでもなければ、仲が悪いわけでもない。あの方不在の今は、コイツがここのリーダーをやっているが、元は俺と同じ大幹部という立場だった。別に劣等感を抱いているわけではない。力や能力、レベルで言えば断然俺の方が強い。

まあ、あいつがリーダーとなれたのは、持ち前のカリスマ性と資金があったからというのが大きな理由だろうが……。


ノール「さてと……」


クロス「ん?どこに行くつもりだ?」


ノール「ちょっとプライベートな用事を思い出してね」


クロス「まさか、あの娘のことか?まだ処分してなかったんだな。いい加減やったらどうだ?失敗作なんだろ?」


ノール「確かに、失敗作で終わってしまったが……あの娘は私の遺伝子で産まれた子だ。むすめなのだよ。親がそう簡単に血の繋がった子供を殺せると思うか?」


クロス「もしかして、ちょっと怒ってるのか?悪いが、アンタのマネキンロボと化した肉体じゃ、お前の感情を読み取るのが難しくてな」


ノール「別に、怒ってなどはいないさ」


クロス「そうか。にしても娘……ね。番号は確か……P0………だったかな?」


ノール「あぁ、確か元はそんな番号だったな……」


クロス「なんで付けた当の本人が忘れてんだ」


ノール「いやなに、もうあの娘には別の名前があるからそれで呼んでいたのだよ」


クロス「なるほど。……で?その新しい名前ってのは?」


そうして俺は、その名前を聞いて……。


クロス「ほぉ〜……。お前にしてはいいセンスしてるじゃねえか?」


ノール「良い名前だと私も自負しているつもりだ。細かい説明をしてやるが聞きたいか?」


クロス「いや、全然」


ノール「まあまあ、少しくらい私の雑談に耳を傾けてくれたまえよ」


クロス「真剣な話なら聞いてやるがそれ以外なら別に興味はない。それに……お前の家族の惚気にはいい加減飽きたんでね」

「んじゃ、俺はそろそろ寝るわ。また夜に起きて狩らなきゃいけねえからな」


ノール「あぁ、ゆっくりおやすみ」


クロス「テメェもロボットだから寝なくて大丈夫みたいなことは考えず、たまには睡眠でもとってみたらどうだ?」


ノール「そうだな、考えておく」


そうして俺はその部屋を退出し、自分の部屋へと向かうのだった。


□□□一方その頃 京太


あの後、学校の近くまで転送してもらった俺は、そのまま真っ直ぐと帰路を辿って自分の寮へと戻ってきていた。


京太「んで?なに二人仲良く俺のベッドで寝てくれてんだ…」


間宮「いやえっと??あのだね。別に、いやらしい事はなにも」


京太「別にそこは心配してねぇよ」


間宮「えー、男の子なら興奮しなよ。だって、自分のベッドに年下の女の子と年上のお姉さんが寝てたんだよ〜?因みに、今日は私にベタベタとくっついて来たよ!」


京太「聞いてねえよ。あと、“俺”がそういうのに反応しないことは知ってるだろ?」


間宮「つまらないねぇ〜……。“あの子”なら焦ってアタフタしてそうだけどさ」


と言って、俺の胸に人差し指を付けてツンとする。


京太「そうだ、成果なんだがな」


とりあえず俺は、今回調べた事や知った情報を伝えた。

………決して話を変えたわけではないぞ。


間宮「なるほど、革命軍……か。初めて聞くね、まさかここで新勢力の登場とは。しかも、その組織の目的が政府と敵組織の壊滅とは……随分と凄い組織に出会したね」


京太「敵組織に比べりゃぁ少ないが、誰も彼もぱっと見は質が良さそうだった」


間宮「なるほど……結構しっかりした組織のようだね。できることなら、私もそんな組織に入りたかったな……。ここよりは不愉快にならなくて済みそうだし」


……間宮は昔から政府を嫌っている。

詳しい理由は知らないが……昔から彼女は国家に対して当たりが強い。どこで誰が聞いてるかもわからないというのに、政府に対してこれほどまでに悪態をつける彼女は肝が据わっている。

まあ、嫌う理由も今の僕ならわかるが……。

あいつらは、許してはならない。


間宮「では、そろそろ私はここでお暇させてもらうよ。もうすぐで日が照り出しそうだしさ」


京太「あぁ、遥香の世話してくれてありがとな」


間宮「そのセリフは、どっちの京太の言葉かな?」


京太「俺が言ってたらおかしいのか??」


間宮「いーや。……それじゃあまた後で」


間宮は、最後に小さな笑みを浮かべてこの部屋から退出するのだった。間宮がいなくなった事により部屋は静まりかえり、遥香の寝息だけが広がるようになった。そんな部屋の中で俺は……。


俺「甘くなったな……俺も」


……ふと、そんな事を呟いたのだった。

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