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第二十六話 一対一聴取

光に包まれていた視界が、だんだんと暗く変わっていく。俺が目を開けるとそこには……。

見たこともない大きくて広い建物の前に、いつの間にか移動していた。


京太「ここは……」


どうやら俺は、奴らのアジトと思われるところにテレポートしたらしい。

その目の前のものに思わず唖然としていると。灯嶺は、もう体力が回復したのか平気そうな顔をして、俺の前に立つと、腰に手を添えてこう言い放つ。


灯嶺「ようこそ、我が革命軍のアジトへ。ひとまずは歓迎してあげるわ、黒宮京太」


京太「まさか、こんなに広い基地だったとはな」


灯嶺「すごいでしょ。まあ、デカいからと言って人数はそこまで多くはないんだけど。私たちの軍は、どいつもこいつも強者揃いだから、間違っても喧嘩を売らないように」


京太「……ふーん。なるほど」


という事は、ここには骨の立つ奴らがわんさかいるのか……。これはもう、俺の闘争心が黙っちゃいられねぇな。


灯嶺「アンタの顔、すっごいニヤついてるけど。悪い事考えてないでしょうね」


京太「……………にしても、こんなに大きいのによくもまあ今までバレずに済んだな」


灯嶺「ちょっと!!無視しないでよ!」


ログ「ステルスの能力を持った仲間の力で隠しているから、よほどの事が無い限りバレる心配はない」


そんな能力者までいるのか。個人的な偏見だが、革命軍は無能力者の集まりばかりだと思っていた。だが、能力者だけでなく無能力者も優秀となると……。この組織、組織的には結構強い部類なのかもしれない。などと考えていると。


灯嶺「こほんっ!ほら、ここで話すのもなんだし、続きは中で話しましょう。アンタには色々と聞かなきゃいけないことが沢山あるし」


京太「奇遇だな。実は俺にもあるんだよ」


そうしてお互いに睨み合う時間が少し続いたが、灯嶺はすぐに顔つきを変えるといきなり口を開いて……。


灯嶺「ログ、次の作戦の会議と、今回集めた情報の解析をあの子にしてもらって頂戴。あと、田中くんはその子を医療組のベッド室に送って目覚めるまで見張っていてちょうだい」


ログ「あぁ…」


田中「わっわかりました!」


と灯嶺がそんな指示をすると。

二人は返事をしてから、速やかに行動に出た。ログと呼ばれた長身男は、部下から資料やらなんやらを集めると、すぐさまそこから姿を一瞬にして消し、どこかへと行ってしまった。田中と呼ばれた男は、背負っていた少女を運んでそのまま建物の中へと入っていった。


灯嶺「それじゃあ、京太。私に着いて来てちょうだい。言っとくけど、後からやっぱりやめるなんてことはしないでよ」


京太「わかってるよ。いくら俺の頭がおかしいからって、今更そんなこと言わねぇよ」


灯嶺「そう、ならよかった。ほら、行くわよ」


そうして、俺は灯嶺の後ろをついて行くのだった。


□□□


灯嶺の後ろをついていきながら、俺は建物内の中を横目にチラッと見ていた。もう気配でバレバレだが、どうやら俺はここの奴らからあまり歓迎されてないらしい。まあ、そりゃそうだろう。なんせ俺は、その辺の馬の骨と同じようなもの。尊敬するトップを守りたいと思う人はきっといるだろう。

そう考えると、つくづくこいつは愛された奴なんだなと、俺はなんとなくそう解釈した。


灯嶺「さて、着いたわよ。どこでも良いから、自由に座って」


俺が案内されたのは、とても綺麗な応接間っぽい部屋だった。灯嶺が気づいているかは知らないが、ドア近くから何人かの気配も感じた。というか、殺気でバレバレ過ぎてどう反応していいのか自分自身迷っていた。

俺と灯嶺は対面になって座りながら、用意されたお茶をちょびちょびと飲んでいた。お茶を運んできた人に、何度か痛い視線を食らったが、大して気にしていなかった俺はそれを無視しながら灯嶺の方に目を向けた。


灯嶺「とりあえず、何から聞いたほうがいいかしら……」


京太「なんでも良いぞ?俺が答えづらい質問じゃなければ、全部答えてやる」


灯嶺「アンタさっき全部話すって言ったわよね」


京太「もちろん話すよ。できるだけ全部な」


そう返す俺に、灯嶺はため息を吐きながら。


灯嶺「まあいいわ。とりあえずはーーー」


それから俺は、灯嶺の質問にたくさん答えてやった。どうしてこんなに強いのか、なぜコロコロと口調や一人称が変わるのか、どんな目的であそこにやって来たのか、いつから敵組織と相対していたか、白崎美織も含めてその全てを俺は、自分の過去を省きつつ話した。女……灯嶺は、俺の言葉を聞くたびに、何度も小さく頷きながら、顎に手をやって聞いていた。


灯嶺「なるほどね。あの方への傀儡、能力者の魂、ノール、京太と京、敵組織側のスパイ白崎美織。異形の正体……空っぽの人の肉体。あなたから教えてもらった事をまとめると、こんな感じかしらね」


京太「そうだな。特に間違ったことは言ってないと思うぜ」


灯嶺「その割には、答えてくれなかったこともたくさんあるんだけどね。能力とか過去とか……」


京太「そこら辺はプライベートな部分だから言いたくないんだよ。それともアンタは、人の裸を勝手に覗き見る趣味なのか?」


灯嶺「変な勘違いされるようなこと言うのやめてくれる!はぁ〜……そこまで言うなら仕方ない。私も、これ以上は聞かないことにしておくわ」


京太「そうしてくれると助かるよ」


灯嶺「……にしても。考えただけで嫌な感覚だわ。まさか、私たちが今まで殺していた怪物が、罪の無い能力者たちの抜け殻だったなんて」


京太「知ってたのか?」


灯嶺「元人間である、ってとこ以外はね。でも、そうか………私たちは知らず知らずのうちに、同じ人間を殺してしまっていたのね。その事をもっと速く知れていれば、元に戻す方法があったかもしれないのに」


京太「別にお前らが気にする事じゃねぇだろ。だって、能力者を殺したのも、異形を作り出したのも、全部アイツらの仕業なんだからよ。アンタが落ち込む理由は何もない。それにまず、知ってどうすんだよ?」


灯嶺「そんなの、なんとかして元の人間に戻してあげるしか」


京太「じゃあ魂は?いくら肉体を元に戻せても、生き返る事ができないほど無惨な姿だったら?それに、肝心の魂がないんじゃ意味がない。その異形を一時的に捕えたとして、その仮定で死人が出たらどうする?捕まえて、逃げ出して、戦えない仲間がやられたりしたらどうする?そういうことも考えての発言なんだよな?」


灯嶺「……わかってるわよ。それでも私は、私の信じた道を突き進むだけ。私はなんとしてでも、みんなと……この国の未来を変えたいの!」


京太「甘いな」


灯嶺「……えっ?」


京太「殺すのは簡単だ。でもな、生かすのはそれよりももっと難しいんだ。たった一ミリの加減の違いで、掴めそうだったものが一瞬にして消えてしまう。そんな心臓を握りつぶされるような罪悪感を味わう事になる」


そうだ。僕はそれを身をもって体験している。掴めそうだった、救えそうだったものを、自分から消してしまった。だから、わかるのだ。慢心して、結果自分の不甲斐なさのせいで全てを失ってしまうという未来が。


灯嶺「……なに、わかったようなことを……(ぼそぼそ)」


京太「…えっ?」


灯嶺「そうやって救えるかもしれない命を仕方ないで済ませって言うわけ!そんなことわかってんのよ!……アンタに私の何がわかるっていうのよ!!」


京太「っ……!?」


灯嶺の突然の怒号に、思わず僕はその勢いに気圧されてしまい、そのままつい黙ってしまった。


京太「えっと、すまん」


気づけば僕は、反射的に彼女に謝っていた。


灯嶺「別に、謝ってほしいわけじゃないわ。私も柄にもなく熱くなってしまったし……。今の言葉は、聞かなかった事にしてちょうだい」


そんな意味深なことを言われたら、気にするなという方が無理な話だ……。でも……、とりあえず僕はその通りに従うことにした。

京『………』

それから、しばらくの間沈黙の時間が続く。


京太「……さてそれじゃあ、次は俺の質問に答えてもらおうかな。俺からもアンタに聞きたいことがあるしな」


今度は、俺がコイツに質問をすることにした。さっきあんなにたくさん質問されて答えてやったんだ。俺だってコイツから少しくらい聞いたって別に問題はないだろう。


灯嶺「いいわ。私もあなたの質問に素直に応じてあげる。あなたとのさっきの会話で、京太は信用できるやつなんだって、わかったから」


京太「どういう風の吹き回しだ?さっきまで警戒してたのに」


灯嶺「別に、ただ……。アンタのこと、信じてみようかなって思っただけ。これでも私、人を見る目はあるんだから」


京太「ふーん。なら、何から聞くかな……?それじゃあ」


早速、俺は今一番気になっている事を彼女に聞くことにした。


京太「革命軍は、一体何を目的として動いてるんだ?」


灯嶺「そうね。主に私たちの目的は、国の政策への反乱よ」


京太「つまり、今のこの政策に不満があると……?」


灯嶺「そうよ」


なるほど。確かに、『俺も僕も』今の国の政治の仕方には思うところがあった。と言っても、昔まではこの国もマトモな国だったのだ。だが突然、国は民主主義を撤廃し、その代わりに今のような能力至上主義の政策に変わったのだ。能力者だけが優遇され、無能力者が酷い扱いを受ける世界。それがこの、能力至上主義の世界だ。


灯嶺「そんな世界は、間違ってる。だから私たちは、それを再度正すのよ。昔みたいな、全ての人に人権が与えられた平和な世界を!みんなと一緒に!!」


彼女の意志は本物だった。絶対に変えてやるんだといった強い意志が俺の心に直に伝わってくるほどだった。つまりそれは、彼女にそれだけの自信があるということで。でも、俺は知っているんだ。油断した時が、一番危ないという事を……。


京太「なるほど。でも、今その政府とかちあってないってことは?」


灯嶺「敵組織が、世界にとって無視できない存在だから、まずそいつら全員を殲滅することを優先したわけ」

「政府との全面戦争はその後からやるつもりよ」


京太「まあ、今は政府も革命軍どころではないからな。と言っても、今までテレビに取り上げられなかったのに関しては驚きだが……」


話を聞く限り結構前からこの組織を創設したっぽいので、人数が少ないにしても誰かがスキャンダルとか雑誌とかにその写真を撮っていそうなものだが……。今まで撮られなかったり、世間に知れ渡らなかったのはきっと、彼女らの仲間のテレポートがあったからなのだろう。優秀な人材に恵まれいてるこの組織は、もはや最強と言っても過言じゃないだろう。


灯嶺「これでキミの質問はちょうど終わりみたいだね。どうやら、そろそろ彼女のお目覚めのようだ」


灯嶺は能力でそれを悟ったのか、俺たちが入ってきたドアの方を向く。すると、急に勢いよく扉が開き、白フードを被ったストレートヘアーの女の子が、息を切らしながら何かを伝えにきた。


隊員49「リーダー!ついさっき、あの子が目覚めました!」


灯嶺「そうか、わかったよ美雨。すぐに向かうから戻っていていいぞ」


隊員美雨「はいっ!!」


灯嶺「さて、キミもどうせ来るんだろ?京太」


京太「察しがいいな。ま、俺もあの少女が気になってるからな。嫌と言われても俺はついていくと思うぜ」


灯嶺「そっ、なら早く行くわよ……」


そうして俺たちは、その部屋を後にして、その子が眠っている部屋ベッドルームの方に向かうのだった。

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