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第二十三話 反撃の狼煙

灯嶺「ゼェ…はぁ、ゼェ…はぁ、ゼェ…はぁ」


あれからどのくらい経っただろうか。私の体は、もう思い通りに動かなくなってきていた。そりゃそうだろう。だって、京太の戦いから、ずっと戦い続けていたのだから…。


グリザ「どうしました?さっきまでの威勢に比べて動きが鈍ってきているようですが…」


灯嶺「うる…さい…!」


グリザとかいう青コートの男が、そんなわかりやすい挑発をしてくる。それに私は、疲れからか僅かに乗ってしまった。だが、今の私にはそんな言葉に付き合っていられるほど余裕はなかった。度重なる連撃に耐えながら、隙をついて攻撃するために能力を酷使する……それの繰り返し。そんな事をやっていれば、体力も大きく消耗するのは必然的だった。

…瞬間。グリザの挑発によって心が乱された私は反応が遅れてしまい、ヌーの攻撃に僅かに当たってしまった。ただ、掠めたのはスカートのみで、ギリギリ私は避けることができていた。ヌーの素早い攻撃はそのまま分厚い地面に向かって勢いよく突き刺さり、なぜかしばらくヌーはそこで動きを止めた。


グググッ『地面から腕を抜こうとする音』

ヌー「……ぐぎゃ??ぐぎゃぎゃぎゃぎゃーー!?!?」


ヌーの手が深々と突き刺さってしまったのか、ヌーの動きが止まっていたようだった。私はこれを見て……これは、何かに使えそうだと思った。と考えた矢先にヌーは腕を引き抜く事に成功し、再度私をロックオンした。

それからはまた、ヌーの猛攻撃だった。

ヌーの動きは単純なのだが、その巨体からはありえない速さを持っていた。相当高レベルか、ステータスが元から高いのかは知らないが……どちらにせよ厄介な相手なのに違いはない。


灯嶺「クッ………!」


私が一旦地面に足を付いた瞬間、私の真上からヌーが両手を突き出し容赦無く私目掛けて両腕を突き刺した。


灯嶺「…っ!?!」


あまりの速さに上手く反応することができずに……私はそれを。


□□□グリザ視点


革命軍のトップは、体力が切れたようにその場で浮かしていた体を地に戻した。もちろん、そんな隙を見逃す事なく、ヌーは高速で奴の前に立ち鋭い爪を使って両腕を女に向けて穿うがった。

それを見た私は、倒したのかと一瞬だけそう思った。だが、私はヌーの突き刺した箇所に舞い込む大きな砂煙に焦点を当て、すぐに奴がやろうとしている事に気付いた。


ヌー「かがぎゃ???」


案の定、ヌーの腕は地面に深々と突き刺さっており身動きが取れなさそうでいた。

刹那、そこを狙ったように、立ち込める煙の中から勢いよくその女は出てきた。その女をよく観察すると……。いつ拾ったのか、何も持っていなかったはずの左手には、建物工事の時に使う異形鉄筋が握られていた。

女は、手に持っていた十手と異形鉄筋をヌーの両目に躊躇なく突き刺し、そのまま抉り潰した。


ヌー「ギギャギャァァァーー!!?!?」


ヌーはあまりの痛さに腕を引き抜き、悶絶しながら目を抑えて暴れ出した。


グリザ「……なるほど考えましたね。流石は革命軍のトップです。にしても、酷い事をやりますね〜」


灯嶺「あんたにだけは言われたくないわ…。別に、これくらい簡単よ。コイツは確かに攻撃の手が早いし威力も凄いけど、動きが単純なのよ。力の加減も出来ないから勢いよく腕を刺しすぎて抜けなくなることがあったでしょ?そこを突いて、動きを封じる作戦をあの時一瞬で建ててたの」

「これじゃあ、あなたの実験は続けられそうにないわね。どうする?このまま逃げる」


と、余裕の表情を浮かべる女に対して、私は最大限の哀れみを浮かべる。


グリザ「クックックッ。おやおや、随分と私達のことを舐めてかかっていますね。あなたはこれで、終わったとお思いのようですが……私が、目が見えない時の対処をしていないとでも??」


手を顔と同じ高さに上げ、パチンッと指を鳴らす。その瞬間……ヌーは何事もなかったかのように飛び起き、女の背後に立つ。


ヌー「グルルルル……」


グリザ「目が無理なら、それ以外の五感を使えばよいだけの話なんですよ!!」


そうして、再度またあの女にヌーの猛攻が襲いかかる。目が見えなくなれば少しくらいは時間を稼げるとでも僅かに考えていたのだろう。だが、甘い考えだ。そんな簡単に実験が終わってはつまらないというもの。実験体は愛玩対象ではない、完成するまで使う尽くすためのモルモット…人形に過ぎないのだ。

実験体に愛などとそんなくだらない物はない、あるのは自分が作った美の作品という思いのみ。たとえそれが失われようと、我が記憶データの中にその作品は残り、また新たな作品のためにそれを昇華する。

これぞ、マッドサイエンティストのやり方だ。


グリザ「オーホッホッホッ!!さぁ、もっともっと私に研究材料をとらせなさい!!革命軍ーーッ!!」


そう私は、興奮を露わにして高らかに叫ぶのだった。


□□□灯嶺視点


目が見えていないはずなのに、さっきよりも勢いが増した攻撃に、私は苦戦を強いられていた。


灯嶺「くそっ!なんで目が見えないのに私の位置がわかるのよ?!」


その理由を考えようと思っても、避けるのに必死でそれを考えるだけの余裕が私にはなかった。それどころか、攻撃はどんどんと勢いを増すばかりで攻撃ができるタイミングなどあるわけがなかった。


灯嶺「せめて、もう一度こいつの隙をつけれれば」


と、そんな淡い期待を口にする。


グリザ「おやおや。これからがいいところだというのに、もう終わりそうなんですか??」


灯嶺「うるさい!」


私の心には、もう余裕なんて物はなかった。ただ単に、必死にこの化け物に勝てる方法を模索することしかできない状態だ。もし……青コートの男が言った通り知性があるのなら、同じ手に三度も引っかかることはまずないだろう。となれば、もう………。

アレを使うしか無いのかもしれない。

……次の瞬間。私は高速で高く飛び上がって、力を集中させる。


グリザ「さて、今度は何をするつもりかな?」


こうなった以上、私に残された一手はもうこれしか残されていなかった。だから、私はこれに全てをかけることを決めた。

想像する。あいつを倒すための強力な…無限とも言える力を。


グリザ「………っ?なっなんですかあれは??」


違和感を感じていたそいつも、私の急激な変化に気づき始めた。


グリザ「まさか、ここまでの力をまだその体に宿していたとは…。あの男に続いて、なかなか面白いことをしてくれるじゃありませんかッ!」


灯嶺「すぅーーー……」


集中する。すると、徐々に徐々に私の体から力が湧き上がるのを感じる。抑え切れないほどの力が体の奥底から間歇泉のように湧き出る。そうして、次の瞬間。

ついに、それは整った。


グリザ「………ほぉ」


私の体から、とてつもないほどオーラが白銀となって輝きながら発していた。

これが私の最強の戦闘態勢。あまりの力に使い方が難しい姿だが、今の私ならこんなの余裕で使いこなせるだろう。

……この姿で戦える時間はもって1分が限界だろう。そのため、この姿が切れるよりも先にどれだけ早く終わらせられるかの勝負になってくる。だから、即効でケリをつけよう。


グリザ「…ふむっ。実に素晴らしいですね、これは期待できそうです」


灯嶺「私の本気、とくとその目に焼きつけときな!!はあああぁぁぁぁーーー!!!」


とそう口にして、私はそいつとの距離を一瞬でゼロにして、その一撃目をその怪物の腹に見事に当ててやった。今までの攻撃では聞くことのない、鈍い音が反響する。

ヌーはその場で悶え一瞬固まったが、そんな隙を見落とす事なくすかさず二撃目、三撃目をヌーに与え続けた。頭、腕、足、膝、すねと次々に攻撃をし、相手に攻撃のチャンスを与えぬよう必死に攻撃する。ヌーに攻撃するたびにヌーはとても痛そうに悶え叫んでいた。それは、それだけこの攻撃が効いている証拠だ。


ヌー「き、ぎぎゃっぎゃぁ〜〜……」


ヌーは苦しそうに痛そうに、後ちょっとでも攻撃すれば今にも倒れそうな勢いでふらついていた。


灯嶺「今楽にしてあげるわ。さあ、これで最後よ!!!」


そうしてまた私は、そいつの間合いに全速力で入り込み、今残っている力の全てを込めて、全身全霊の気持ちでその一撃を持っている武器で心臓を貫くつもりで胸部にそれを刺そうとした。


灯嶺「私の勝ちだっ!!」


そう勝ちを確信した……その瞬間だった。


灯嶺「っ!?!」


その攻撃は、確かにそいつに当たっていた。だがそれは、私が狙っていた胸部ではない別の場所で………。

何故かそいつは、自分の胸の前に手を出して、私の攻撃が来ないように受け止めて阻害した。なぜだ、たとえ誰であろうと反応できないスピードで攻撃したはずなのに、そいつはいとも簡単にそれを阻止した。私は十手から力無く手を離し、重力に従って落下する。


灯嶺「そん、な…バカな……っ」


驚きの連続とは、まさにこの事だろうか。先ほど私が潰したはずの片目が何故か元に戻っており、あるはずもない眼球が瞼の裏から姿を見せる。

どうして再生しているのかと…そんな事も考える暇もなく、私の視界から左に大きな腕が近づいてくる。もうそれは眼前にまで近づいており、もう避けることも守ることもできないと思った。

完全な敗北。私は、この怪物に負けたのだ。もう、動かそうと思っても体が言うことを聞こうとしなかった。私の心は、申し訳なさと悔しさでいっぱいだった。あぁ、ごめんねみんな。まだ正面衝突すらしてないのに、やられてしまって……本当にごめんなさい…。


灯嶺「ごめんね、あとは任せたわよ………クレア」


そうして………私は。


??「おいおい。こんなところで終わるとか……何やってんだよ。最強のトップ様??」


瞬間。私の耳元に、あの男の声が何故だか聞こえてきた。いったい何が起こったのかと思い目を開けると………そこには。


京太「やぁ…。随分とボロボロで無様で、名誉な姿だな……灯嶺さん??」


そこには、何故か私の目の前に京太の顔があった。私の体を優しくその胸で抱えながら、ヌーの攻撃を私達がよく理解している「気」の力で弾いていた。

私は思わず目を見張った。だって、あんなにも苦戦していた怪物が、こんなふざけた男になす術なく防がれているのだから。


ヌー「ぎるるるるる!!?」


京太「……ふっ」


次の瞬間、ヌーの拳はいとも簡単に弾かれた。京太の顔を見ると、何故かその顔は笑っていた。なにが面白いのか全く理解できないが、これだけはわかった。……コイツはきっと、ヌーを倒すだろうと……。

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