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第十五話 青の術士と黒の少女

??「やはり、そう簡単にはいかないか。……流石に、狂羅を倒しただけの事はあるな」


そいつは、こちらに向けた拳銃をふところに仕舞い込みながら、そう言った。


京太「何者だお前……?」


俺は、そいつらを睨みつけながら問う。


??「はじめまして……私の名前はサクリファスと言います。少し長いのでサクリとでも呼んで下さい。そうですねぇ……簡単に言えばただの無能力者、だね」


京太「……無能力者」


狂羅と似た奴だろうか?だが、それにしては威圧感が少し無いような……。


サクリ「そうだ。この子も紹介しないとね」


そう言うと、そいつは隣に居る少女を前に出させる。その子の見た目は、紫かかった白髪に、少しデカい黒コート、その上から拘束具のようなものが上半身に付けられた18か19くらいの……俺ぐらいの年齢っぽい少女だった。


サクリ「この子の名前は白崎遥香しろさきはるかと言って、能力者の中では天才とも言える力を持っている化け物さ」


京太「……へ〜、そいつは楽しみだな」


俺はその少女の方に視線を向けながら、僅かに微笑を浮かべる。彼女をよく観察してみると……彼女の目からはあまり生気や殺気が感じられなかった。まるで、心が死んでしまっているかのように冷たく、何も感じてなさそうな顔をしていた。


京太「へー………結構弱そうな感じの身体つきをしてるが。本当に強いのか??」


サクリ「あぁ、勿論さ。彼女の能力はとてつもなく恐ろしい力を持っているんだよ。それはもう、彼女ですらコントロールできないほどにね」


京太「……それはどういう事だ??」


サクリ「ん?君ならあらかたわかってるんじゃないのかい??まあいいや、わからないなら教えてやるまでだ」

「この子はね、能力を使うと暴走しちゃうんだよ」


京太「……暴走」


聞き覚えのあるその単語に、俺は僅かに反応する。


サクリ「君は、能力が暴走する理由を知っているかい??」

「主な理由は二つだ。……一つは、能力自体の効果や能力値が強力過ぎたり高過ぎたりによる暴走と……。もう一つは、弱りきった精神が壊れかけた時に起こる暴走の二つ。これが能力の暴走の主な原因さ」

「そして白崎遥香は、その二つのうちの前者に該当している。彼女の能力値は、レベル1にして脅威の920……。Aクラスの能力者の最大能力値は、ある奴を除けば390が最大値なのに対し、この女はそれを大きく超えているのだ!!暴走してしまう点を除けば、とてつもない兵器である事は間違いない最強の殺戮兵器だと思わないか??」


京太「まぁ、政府側からしたら強敵とも言える兵器だな」

「でも、今その子は上半身だけが拘束状態で、マトモに動かせる部位はその足だけみたいだが……それは俺へのハンデって事なのか??」


サクリ「仕方ないのさ、彼女は下手したら私を攻撃しかねない。だから、僕は彼女の力をあまり出させたくはない……。まぁ、だからと言って僕は彼女よりは強いから、ある程度は大丈夫だがね……それに」


とそいつはそう一拍を置いて、コートのポケットから小さな手帳のような物を取り出し、それを俺に向けて見せつけた。


サクリ「私には、ノールからもらったこの手帳がありますから」


京太「……手帳??なんだそりゃ……もしかしてそれに今後の予定でも詳しく書いてあるのか?」


俺は小首を傾げながら、馬鹿にするかのようにそれを鼻で笑ってやった。するとそいつは、微笑を浮かべながらこう告げるのだった。


サクリ「いーや、これにはノール様の能力が僅かに籠った……チートアイテムと言うべきものですよ」


……その刹那。そいつの持った手帳が僅かに光を灯した……その、次の瞬間。

……眼前に、その女が俺に攻撃を仕掛けようとしてきていた。彼女の斜め上からの右足の蹴りが接近する。俺はそれをギリギリのところでなんとか防御する。ぶつかった衝撃が、防御した腕や周囲に衝撃となって伝わっていく。俺がその脚を跳ねのけようとすると……その女は柔軟な動きで体を素早く捻ると、今度はその左足で俺の腹を力強く蹴り、突き飛ばした。


京太「………いってぇ…」


サクリ「どうだい遥香の底力は……!とんでもないだろう!!」


京太「そのようだな……」


……全く殺気を感じなかった。そのため、彼女が動くとはまるで考えていなかった。俺は腹をさすりながら構えをとる。どうやら今回の相手は、本当に生半可な相手ではないようだ。白崎遥香という女の力は、今までの奴らより遥かに凄い力を持っていた。いくら俺が油断していたとしても、あの力は尋常ではなかった。まさか、能力だけでここまで強い奴がいるとは……面白くなってきたじゃないか。


サクリ「……何を笑ってやがる??」


おっと……どうやら気付かぬうちにニヤけていたようだ。やれやれ、戦いが面白くなるとついつい煽るような笑みを浮かべてしまうのは俺の悪い癖だな。ま、直す気なんてさらさらないわけなのだが……。


京太「いやなんにも??ただ、ちょっと……ね??」


サクリ「……気に触るな、その舐め腐ったようなニヤけ顔。お前、この状況をしっかりと理解しているのか?」


京太「理解してるさ、理解した上でこんなつらしてるだけさ」


サクリ「どこまでも舐め腐った奴め、お前みたいな奴が一番気に触るんだよ……!!」

「いけ!!もっと力を引き出せ!!」


奴がそう彼女に命令すると……。その男の手に握られた手帳が淡い光を発すると同時に、白崎遥香という女の周りを螺旋らせん状の赤黒いオーラが包み込む。


遥香「っ…はあああぁぁぁ!!!!」


溢れんばかりの力が出ているのか、彼女を中心にして強い風が発生する。彼女の咆哮ほうこうが、俺の耳へと激しくつんざく。


サクリ「ふはははっ!後悔させてやる。ここに来たことをな!!」


俺はその男の言葉を鼻で笑いながら……。


京太「いいぜ。かかってこいよ、腑抜けが……!」


その俺の言葉を合図に、目の前の女はとてつもない轟音を立てながら俺の眼前へと接近し、攻撃を仕掛けてきた。それをモロに食らった俺は、墓地の近くの森へと飛ばされ、木に思いっきり叩きつけられる。……早い。暴走状態にしては力でゴリ押しという感じにはなっていないようだ。その光景に珍しさを感じながら、余裕そうにそんな事を考える。

……上体を起こした時には、もう目の前にはその女が立っていて……。また、見事にその一撃を喰らってしまう。

……そうして、いくつもの木を薙ぎ倒しながら、俺の体は吹っ飛んでしまうのだった。


□□□数十分後


京太「……ちっ」


ざぁ、と地を削る音が響き渡る。

気づけば、森の奥。こんな場所にまで来ていた。


サクリ「おぉ、まさか森の奥にこんなにも美しく巨大な湖が広がっているとはね。……長くてもざっと45メートルといったところかな??」


そいつは、余裕そうにその手帳に付属している詩織の紐の先端を持って振り回しながら……そんな事を言った。


京太「随分と、余裕そうなんだな」


サクリ「当たり前だろ。舐め腐っていた奴が、こんなにも手応えのない腑抜けだったのだからな……!そりゃあ、油断したくもなるというものだ。これで狂羅を倒したなど、笑わせないでいただきたいものだ」

「まあでも、仕方がないか。この子の力は別次元だからね。いくら狂羅を倒した能力者でも、こればかりは越えることはできないよねぇ……」


たしかに、この強さには流石の俺も太刀打ちできないだろう。こいつの強さは、とてつもない。言うなれば、千人に一人の逸材とも言える者だろう。

……だが。


京太「確かに強いな、でも……それはお前の強さではないだろ」


サクリ「……なに?」


京太「お前のその力は、ただの貰い物だ。その貰い物の力に、お前は頼り、過信をし過ぎているだけに過ぎない」


サクリ「……何を言っている?この力は、ノール様に与えられた私だけの能力です。つまりこれは、私の能力という事なのですよ」

「私の手元にあるこの手帳の力は『特定の人をコントロールする能力』というものでね。ノール様の能力とは似て非なる物なのです。だからこれは、私の唯一の能力という事なのですよ」


京太「じゃあ自分の力で俺を倒してみろよ。言ってたよな?お前はこの操り人形よりも強いと……?だったら、正々堂々と自分の力で戦ってみろよ」


俺がそう言うと、男は狂ったかのように笑い出して、こう吐き捨てた。


サクリ「馬鹿なのかい?もう最初っから僕は君と正々堂々と戦っているじゃないか?!自分の使える力の一手を使って、こうして戦っているじゃないか??」


京太「まるで、その女は自分の道具だと言っているようなものだが??」


サクリ「当たり前じゃないか!こいつはな、僕の指示無しでは、力のコントロールができない、壊れた人形に過ぎないんだからな!」


そいつのその一言に、俺は……カチンっときてしまった。久しぶりの感覚だ。こんなにも……怒りが露わになったのは。

僕は怒りのあまり、能力を発動する。

さぁ、思い知らせてやる事にしよう。俺が怒るとどうなるのかって事を。

面白かったら、高評価とブックマークをよろしくお願い致します。

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