第一話
この物語の始まりはあるお祖父さんが孫に頼み事をすることから始まります
「彰人~ちょいと頼み事があるのじゃが良いかのー」
杖を突きながらも体幹はしっかりしてそうに背筋を伸ばした老人が、居間で雑誌に夢中な若者に声をかける
同じ家の中で名前を言ったことによりこの若者は老人の孫にあたることがわかる
孫は自分の頼みなら何でも聞いてくれる優しい子だ、と言いたげな表情で居間に入る
だがこの若者寝っ転がり雑誌から目を離さず
「嫌だ」
と一言で祖父との会話を終わらせた
頼み事をすっぱりと断ったのはこの物語の主人公、八谷彰人である
「なっ!まだ内容も聞いていないで断るとはひどいのじゃ!
おぉ…これが反抗期というやつかのう…わしは寂しいぞ…」
祖父は先に天へ向かった祖母に嘆きながら、袖を濡らす
当然ウソ泣きだ。
「じいちゃんの頼みは大体いいことがないから嫌だよ」
少しきっぱりと言ってしまったかと、心の中に密かに思う彰人は雑誌を閉じようとする
だが、いつもそれで後悔していることを思い出し閉じるのをやめた
「いいことなのか悪いことなのかまだ話していないからわからんじゃろうが!」
祖父は一瞬の隙を狙い雑誌を奪い取りながら怒鳴る
雑誌を奪う祖父は本当に八十を超えてんのかと、思う体さばきだった
このじじぃ絶対中身バケモンだと思った彰人だが、
すぐに表情にでて拳骨をくらうためその言葉を頭から消した。
老人らしからぬその拳骨で何回か言うことを聞いてしまっていたが、今日という今日は絶対に祖父の言ううことは聞いてやらないという意思が彰人にはあった
「いーや!絶対に悪いことだね!
この前なんかじいちゃんが忘れ物しったて言う店に行ったら変なオカマに絡まれるし、
じいちゃんが食べたいって言った果物を取りに行かせられたらイノシシに追いかけ回されるし、
昨日だって、じいちゃんがこっちこいって言って行ってみたら落とし穴に落としたじゃないか!
だから絶対に嫌だね!」
彰人が怒りながらいっきにまくしたてる
今までの惨劇はすべて祖父の頼み事から発生したこと
なら、聞かなければいいと彰人は16歳にして学んだ
もっと早くに気づいてはいたが、根が優しい彰人は毎回祖父のウソ泣きを信じて受けてしまう
しかし昨日の落とし穴の一件で、八谷彰人反抗期途中である。
「彰人、それも人生の修行なのじゃ...」
急に真剣な眼差しで彰人を見据えるが、火に油である
「孫を落とし穴に突き落として”やっぱバカだのう”と笑うじじぃに修行させられてたまるか!!」
中身はガキ大将である
「彰人~お願いじゃよ~
この哀れな老人を助けると思ってきいてくれんかの~」
これ以上の諭しは無理だと判断した祖父は、彰人の制服にしがみつきしわくちゃの顔をさらにしわくちゃにして涙を流し訴える
「もうそんな嘘泣き通用しねぇぞ!」
過去に何度もやられた経験で、わざと流している涙には一切俺には通用しねぇ!
と怒鳴りながら掴まれている制服を引っ張る
が、やはりこのじじぃ力が強い
一向に引きはがせない
「彰人、さっきからなに騒いでんのよ。」
祖父と押し問答をしていたら流石にうるさかったのか、外で洗濯物を干していた母の声が聞こえてきた。
「かっ母さん!いや別になにも騒いでねぇよ!」
「沙代子さん!彰人がな頼みを聞いてくれんのじゃ!なんとかしてくれんかの~」
これ幸いにと祖父は彰人から離れ母のもとに泣きつきにいく
彰人が母には弱いことは当然ガキ大将のじじぃは知っている
「あっ!じいちゃん卑怯だぞ!母さんに言うなんて!」
「もう~彰人は!いいじゃない!おじぃちゃんの頼みなんだから、聞いてあげなさい!」
母がそう彰人に言い聞かせる。
母の立場からは、孫と義祖父が仲良くしていて微笑ましい限りである
そんなのびりとした志向の母には何を言っても駄目だとわかっている彰人は渋々と了知した。
了承の意を示した息子に偉い偉いと内心ふきながら笑顔で家事の続きをしに去っていった
親の心子知らずならぬ、子の心親知らずであった
「けっ!それで、なんだよ頼み事って」
悪態はつけるのを忘れずに、反抗期の彰人は祖父へと目をくれる
彰人の態度にやれやれと首を左右に振るが、やっと耳を傾けた孫にへそを曲げられてはかなわないと思い本題に入る
「実はだな、ある箱を今から言うところに届けて欲しいんじゃよ」
「箱?なんでそんなもの...」
祖父が箱を宅配してほしいだなって疑問に思うが、自分の祖父だ
その箱に何かが絶対入ってやがるなとひねくれた発想になるが経験上が物語る
だったら途中で覗き込んでやるかと思案していたら
「絶対に中は見るのではないぞ」
さっきまでのひょうきんな顔をから一転鋭い眼ざしで彰人に迫る
祖父の表情に少し寒気がしたがそれを悟られるのは少しいやだったのですぐに睨み返す
「わ、わかったよ!そう近寄んな気持ち悪い!それで場所は?」
「たくっ、何処までも口が悪い奴じゃ...
場所はだな...」
続く…
また明日…