表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第三章 ゲネブの省吾 ~独立編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/308

96.狂犬

今週もがんばります。

前回分、土曜にアップした文章を読み直すとなんとなく酷いなあと。

結構修正しちゃいました。内容はあまり変えておりませんが。よろしくおねがいします。

 下を見下ろすと自分の血が池のように貯まっていた。酔っていても解る。普通にヤバい。

 ズキズキとする痛みの中、ショック症状なのか顔の血の気がひいていくのが分かる。寒さまで感じる。<根性>でギリギリ持ちこたえてる感じかもしれない。


 後ろから俺を刺したのは狂犬と言われる男だった。

 冒険者ギルドで一度揉めた事があったが、関係したのはそれだけだ。以前俺が返り討ちにしたアジルよりさらにヤバイ男だと聞いている。ザンギはたしか、ロームと呼んでいたか。そいつが今、血に濡れたナイフを手に、膝をつき見上げている俺をつまらなそうに眺めていた。



 揉めたといってももう数ヶ月も前の話だぜ。

 ねちっこいにも程がある。

 なんなんだよ、まったく。



 ゲフッ


 口から大量の血を吐き出す。

 やべえ、今更ながらやっぱり刺されたんだな。内臓やられたんじゃねえか。

 自分の状態をチェックしながら事の重大さに一気に酔いが醒めていく。


「お前はやりすぎたんだよ。御依頼主が相当お冠でね、悪く思うなよ」


 い、依頼だと? まさか。


「ぎ、ギルド長か?」

「あん? なんだまだ喋れるのか、結構しぶといのな」


 そう言うと狂犬は靴のつま先で傷口をぐりぐりと嬲る。


「ぐがっ! があああああ!」


 猛烈な痛みが体を襲う。<強回復>で閉じ始めた傷口が再び開き、血の池がさらに広がる。


「くっくっく。しぶてえみたいだがナイフは間違いなく臓物まで貫いた。時間の問題だな。死ぬまで見物しててやろうか?」


 もう仕事は終了したとでも言うように、ナイフの血糊を拭き取りながら狂犬が言う。


「えー。嫌よ、とっとと終わらせて宿に戻りましょうよ」


 以前揉めた時も狂犬と一緒に居た連れの女だ。ケバく分厚い化粧をし、扇情的な服に身を包んだ女が狂犬に擦り寄り、甘ったるい声で言う。

 くっそ。人の生死を軽く扱いやがって。


 俺は……ようやく<極限集中>が発動し始める。出血でめまいはするが、痛みは我慢できるレベルに落ち着く。ちくしょう。こいつら許さねえ。スキルは同時に<強回復>が働いているのもわかる。魔力がグングン減っている感じは、これか? 治癒時に魔力を消費するなんて気が付かなかったぜ。


 しかしLv3に成ると効果も実感できるのか内臓が治癒していく感覚すらある。

 問題ない。腹の中を切り刻まれただけだ。四肢は動く……痛みに耐えきれずもんどり打つふりをしながら、右手で剣の柄を探る。そして握った。



「解ったよ。じゃあとっとと殺って宿で楽しむ――はあ?」


 バゴンッ!


 !? 


 こいつ、不意打ちだったのにとっさに防御しやがった。


「はあああ? てめえ何で立ち上がれるんだっ」

「はあ、はあ。殺り損なったんじゃねえ?」

「くっそ。これだけ血を流してるのに。次は確実に仕留める」

「不意打ちで失敗するやつに、次が有るのか?」

「なんだと!?」


 しかし急がないとヤバいかもしれない。失血でフラフラする。<強回復>が魔力を使うのか、これは傷が治るより先に魔力切れも起こしそうな予感もする。直感か? とりあえず一気に行くぞ。


 剣に魔力を纏わせ斬りかかる。狂犬は防戦一方だがギリギリの所で避けていく。くっそ。流石に上手いか。焦れる俺は太刀筋も荒くなる。狂犬は狂犬で俺の剣圧に押され、攻めに転じられない事に信じられないような顔をしている。


 俺の攻撃が切れた一瞬で狂犬が後ろに飛びのき、ナイフを投げつけてくる。とっさにそれを弾く。


「メル! 殺れ!」


 げ。この女魔法使いかよ。ちくしょー間に合わねえ! とにかく潰さないと。


 女が魔法を放ったと同時に俺も、女に<ノイズ>と<ラウドボイス>を掛ける。手加減はなしだ。女は呻いて倒れるのと同時にカマイタチの様な斬撃が飛んでくる。


 !


 とっさに両手と剣で急所を防ぐが、全身が切り刻まれる。

 やばい。更に出血だ。だが浅い。


「おいメル! メル! きっさまあ何をした!」


 もうコイツに答える時間は無い。<思考加速>してるはずなのにずっと<ノイズ>を忘れてた。状態は良くなさそうだ。次で殺らないと、ヤバイ。


 狂犬に向かって走る。慌てて剣を構える狂犬に<ノイズ>をかける。こいつは気絶じゃ終わらせねえ。


 俺の剣を受けようとした瞬間に<ノイズ>を受けた狂犬は構えを解き耳を押さえそうになる。しかし突っ込んでいく俺に慌てて構えを戻そうとする。


 だが。その一瞬。殺し合いでは、それが命取りになるんだ。


 魔力を込めた剣を一気に振り下ろした。二の太刀はいらん。だったか。



「はあ、はあ、はあ」


 恨めしそうにこっちを見つめる狂犬の顔を眺めながら、レベルアップ酔いに揺れる。また人を殺してのレベルアップか。まったく良い気がしねえや。

 向こうで倒れてる女。メルと言ったか。どうする? 


 殺るか?


 後々の事を考えると絶対殺すべきなんだがな。

 流石に女を手に掛けるのは踏ん切りが付かない。

 後悔するかもしれないが。このままにしておこう。また来るならその時に。


 それに意識を保つのがやっとになってきた。




「はあ、はあ、はあ」


 やべえ、痛みが戻ってきやがった。

 なんつう激痛ですか。


「はあ、はあ、はあ」


 意識が朦朧としてきた。

 失血死か? 魔力切れか? いずれにしても限界だ。


 ここは。


 教会?



 ……回復してくれるかな?



 ああ



 やべ




 意識が





 くっそ。





 ギルド長め




 ……

 



 ……



ありがとうございます。

ちょっと短くなってしまいましたが始め書き上げたとき1200文字くらいだったんです。

出来るだけ描写を丁寧にしたりして、2000文字ちょい位まで膨らませましたが。

この後の流れちょっと適当には考えてあるのですが細かい所悩んでいて執筆遅れましたらすいません。


それではまた明日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] どんなチート持ちでも酒に酔ってれば主人公のようになる^_^ この当たり前の現実をキチンと描いてる。 かの大山倍達でさえ「私が酒好きだったら、とっくに殺されてる」 と言ってたんですから。 […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ