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過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第七章 閉ざされた島

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297.狂気のボストーク 2

おはようございます

「ゾディアック、プレジウソさんを外にッ!」


 戦うにしてもここに意識のないプレジウソが居ると邪魔になる。ゾディアックにプレジウソを外に連れ出すように頼み、その後は俺たち2人に任せるように言う。かなりエグい魔力の中、みつ子が火魔法を連発する。

 <魔力視>もレベルが上がると、もともとモヤの状態でしか見えなかった魔力になんとなく色が付いて見えるようになってきている。石柱からボストークに流れ込んでいく魔力は今まで見たこともない色をしていた。



「ガル! メラ! ありったけの魔法をっ!」

『しょうがないな』

『効くのかしら? あんなのに』


 俺は俺で魔弾を打ち込みながらボストークを取り囲む魔力を散らそうとするが、うまく行っていない。ガルとメラの弾幕が消えないと近づけないが、ここはやはり肉弾戦で行くしか無いかもしれない。


 ドドドドドド。


 様々な魔法がぶつかっていく中、ボストークは微動だにもせずに石柱に触れ続けていた。……駄目だな。全く通ってない。ただ、ボストークもまだ作業が終わっていないのか動かない。今のうちに……。


「ガル、弱い。もっと強いのを、こないだやったあの……」

『ミョルニルだな』

「それっ。メラもなんか無い?」

『あるにはあるわよ。でもミョルニルも撃つのでしょ? この洞窟崩れるわよ?』

「げ。マジか……」


 確かに……極大魔法のようなものを連発したら俺もみつ子も生き埋めだ。ガッツリ行きたいのに行けないもどかしさにギリッと歯噛みする。洞窟の頑丈さに悩む俺は余所に、ガルは<ミョルニル>を発動させる。


 雷の巨人が形を形成していく中、バチバチと髪が逆立つのを感じる。この狭い空間内を濃縮されていく電気が抑えきれずに溢れかえっていた。同時に弾幕が晴れた向こうには真っ赤に目を光らせるボストークが石柱から手を離し、こちらを向いていた。


 終わったのか? くっそ、行けるのか?


 フラグ云々でなく、今まで<ミョルニル>がうまく行ったのは見たことがない。イリジウムのやつはガルが吸収し、ガルのはギーガマウスが飲み込んだ……実際の威力なんて見たことがないんだ。


 雷の巨人は、高々と両手を上げるとそれをボストークめがけて振り下ろす。


 ガギッィ! ガッガッガリガリガリ!


 電気の塊のような腕の振り下ろしに合わせボストークは手のひらを開き、片手を持ち上げる。大きさ的にそんな片手でどうにかなるのかと息を呑んで見つめる。

 <ミョルニル>の腕がボストークの手に触れるか触れないかの距離でバチバチと電撃を飛び散らせながら勢いが止まった。飛び散る電撃の中、アーク溶接の様な強い光に目がくらむ。慌てて<適視>をオンにする。よし。


 電流の超高温の中、力が拮抗するかに見えたが少しずつボストークの手が溶け出すのが見える。通ってる。


 クラッ……。


 バチバチとした荷電の渦の中で俺は一瞬、立ちくらみのようにめまいを感じる。やったのか? レベルアップ酔?

 戸惑いの中、ボストークは肘のあたりまで腕を溶かしながらも手を上げなんとか耐えていた。


 ……まさか。


「ちょっとガル! お前の魔法って、俺の魔力使ってるのか???」

『それはそうだろう。この珠の身体ではこれだけの魔法を連発するのは難しいな』

「マジか……」


 ヤバい。このまま押し切ってもらわないと。


 巨人の腕がジリジリと降りていく。ボストークの頭髪はすでにすべて蒸散しきり。頭皮がブクブクと水ぶくれのように熱にやられ始めている。顔まで溶け始めてるように見える。よし……このまま……。


 ん?


 その時、ボストークの空いていた右手が動く。そのまま掌で石柱に触れる。ググッ……。ググッ……。その手をぐっと握ったかと思うと石柱から帯のようになった魔力の塊の様な物を引き抜いた。


「な、なんだ?」

「この魔力……魔力……なの?」


 一応俺の魔力視で見えるということは魔力なのだろう、呪いと言われているくらいだから呪力とかもしかしたらベクトルは少し違うのかもしれないが。


 ボストークが帯のような魔力を振るうとそれはボストークに巻き付くように絡まっていく。同時に<ミョルニル>が押され始めた。


「マズイッ」


 俺は再び弾幕で<ミョルニル>をサポートしようと<魔弾>を撃つが、1発撃った段階で魔力切れの目眩と共に頭痛が酷くなってくる。くっそ。これ以上は魔法の飛び技は無理か……。みつ子が俺の魔力切れに気が付き、慌てて巨大な火球を作り始める。


「みっちゃん、聖魔法って攻撃魔法無いんだっけ」

「うん。無いんだよ」

「とりあえず剣に<聖刻>してもらっていい?」

「解った」


 両手で火球を作っていたみつ子は、片手を下ろし俺の差し出した剣に<聖刻>を刻む。いっぺんに2つの魔法をさらりと使うのを見てふと思いつく。


「出来たらだけど、火球にホーリーとか聖魔法混ぜれたらやってみて」

「……混合魔法ね。やってみる」


 こうなったら<聖者>たるみつ子に頑張ってもらうしか無い。俺はすでに魔力が怪しい。最低限のスキルを使用しながら剣でサポートするしかないだろう。みつ子は<聖刻>を刻み終わり、再び両手で火球を練り始める。右手からの魔力と違う色の魔力が流れ込んでいく。うん……いきなりだが、割と馴染んでそうだ。



 あれは……蛇か?


 すでに<ミョルニル>は形勢が怪しくなり始めていた。石柱から出てきた帯のような魔力はなんとなく蛇のような形を形成しはじめている。ボストークの身体に巻き付きながらも、その鎌首が<ミョルニル>に向かって行く。


 お。


 後ろからみつ子のバフが飛んでくる。モリモリと身体に力がみなぎってくる。助かるぜ。俺は剣を腰だめにしたまま蛇に向かった。

 <ミョルニル>に向けて伸ばした蛇の首に向け、勢いよくジャンプをしながら、瞬発的に魔力を込め全力で剣を切り上げる。唸りを上げトップスピードに達した剣先が首にあたる。瞬間抵抗感が発生するが、俺はそのまま止めずに振り抜く。


 ブンッ。


 ちっ。完全に断てると思った俺の剣は、途中まで食い込んだ所でニュルッと獲物を逃す。蛇の胴でヌルっと滑ったような感じだ。くっそ。浅い。


 斬り上げ体も浮いた状態。一瞬の死に体。ゾクゾクとうなじあたりの毛が逆立つ。

 俺が切れ目を入れた蛇の首のあたりが縦に裂けていったと思うと。一本の首が分裂する。そしてその首がそのまま空中の俺めがけて伸びてきた。


「こなくそっ!」


 俺は魔力を込めた足で蛇の顔を蹴りつける。その力を利用して後ろに宙返りをしながら逃れる。さすがみつ子。ナイスタイミングだ。


 ドゴーーーン。


 俺を追ってきた蛇に、みつ子の火球がぶつかる。今度は聖魔法を混ぜ込んだ特注だぜ。



ありがとうございます。


さあ、明日も行くぞー。

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