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過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第七章 閉ざされた島

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285.アンデッドは夜に蠢く 1

おはようございます

 ハーレーに揺れて進んでいると、ふとミドーが小さい革袋の中から宝石海岸で拾ったと思える石を取り出し確認している。


「ん? ミドーそれ持ってきたのか?」

「こんな綺麗な石見たこと無いっすからね。もしかしたらゲネブに帰って売れねえかなって」

「ああいう自然のものってな、持ってくるのは思い出だけ、残してくるのは足跡だけっていってな……って。まあ。観光地化して荒れるわけじゃねえから良いのか」


 なんか、日本に居た頃山が好きでたまに登ってたからな。つい。そういうイメージで居たけど。こんな人が居ない辺鄙な島じゃ、大した問題も起こらないわな。


「なんです? それ」

「ほら、あんな宝石みたいな石の海岸がゲネブの近くにあったらどうなると思う?」

「ん~。みんな持ってきますかね」

「だろ? それが有名になって国内外から観光客や、業者が石を拾いに来たら、何十年何百年って経つ間にキレイな石が無くなって、何もないただの海岸になっちまうだろ?」

「うーん……そうかもしれませんね」

「だから、ああいう自然にできたきれいな場所ってそっとしておいたほうが何百年も綺麗な海岸のままで居られるって話さ」

「なるほど……いや、さすが旦那。考える規模がでけえっすね」

「いやまあ、な」


 全然俺が考えたことでもないし、そう言われるとおかしな感じがする。まあ、地球での自然愛好的な考えっていうのは、人間は自然の存在ではないという立場からの見方になるから色んな意見が別れていたけどなあ。



 敵の動きが見えないまま、野営の時間になる。今は海岸沿いから少し中に入って木々の下に野営をしている。昼間に空を飛んでいるワイバーンを見たからな、流石に夜とはいえ、上から見にくい場所を想定してみたんだが。意味があるのかはわからない。




 ん?


 俺の夜番も終わり、木に持たれて寝ているとふと目が覚めた。というより<直感>で揺り起こされた感じだ。少し遠くで波の音が聞こえる中、端の方で小さく熾した焚き火を見ながらミドーが一緒の夜番にあたったフルリエに嬉しそうに話しかけている声が聞こえてくる。


「あれ? 省吾君も?」


 隣を見るとみつ子も目を覚ましたようで、寝転がったまま俺の方を見ていた。みつ子にも<直感>はある。やはりおかしい。俺は慎重に感知の感覚をできる限り広げてみるが何も引っかからない。ハーレーにくるまれてモーザもぐっすり寝ているのが見える。


「みっちゃん動かないでいて」


 俺は小さくささやくと、なるべく音がしないように身体を起こす。嫌な予感だけはムクムクと大きくなっていく。こうなりゃ視認でできる限り異常を見つけるしか無い。<適視>で暗い森の中をしっかりとチェックをしていく。


 ――?


 そんな中、真っ黒い人影のようなものがススっと動いているのに気がついた。なんだ? と思ってるとミドーとフルリエに標的を絞ったようで一気に詰め寄っていく。2人はまったく気がついていないっ。


「くっ」


 俺は慌てて影に向かって<魔弾>を連発する。影はすぐにそれに気が付きヒラリと交わしていく。


「ミドー。敵だッ!」

「だ、旦那?」


 突然の事に一瞬ミドーが困惑していたが、俺の声ですぐに顔が引き締まる。フルリエも立ち上がり影の方に向かいナイフを投擲する。影はそのナイフもヒラリとかわしつつ投げられたナイフをつかみ取りフルリエに投げ返した。やべえぞ。こいつ。


 チンッ!


 影の投げたナイフはミドーが危なげなく弾く。俺はそれを見ながら剣を抜きつつ影に向かって走る。


 ゾワッ


 その瞬間あたり一面から異様な気配が広がる。くっそ。なんだ。囲まれてるのか?


「ミドー!!! 傘を開けっ!」

「おうよっ!」


 寝ていたサクラ商事の仲間たちはすでに目を覚ましている。だが一気に来られたら寝起きでは対応が遅れるかも知れない。<傘>というのはそのスキルの発動の感じが傘を開くような感じがするから使っているが、ちゃんとしたスキルの名前は<防護響>とかいったか。

 ミドーが開く傘の中に居ることで、仲間たちの硬さが、ミドーと同じレベルになるというものだ。バフの一種らしいが、せいぜいが半径5m程で、その効果も開き続けている間に魔力を消費し続ける為、あまり長い時間は開けない。だが、<金剛><硬皮><頑丈>といったタンク系のスキルを取りまくったミドーの防御力を得られれば、まず即死的なダメージを受けることはない。その間に俺たちは襲撃者を迎える体制を整えればいいだけだ。



 バッシュ。バッシュ。


 どうやら襲撃者達は闇に紛れてやってくるようだ。それならあたりを明るくすればいい。魔力を込めた<光源>を辺りにばらまいていく。昼のような明るさの中、影がその姿を現す。目深に被ったフードの下には、血色の悪い唇がニヤリと笑っていた。

 見えているのおぼろげな、そんな存在感の薄さで気を抜くと見失いそうに思える。忍者かなにかかよっ。見逃さないように慎重に近づいていく。


「ショーゴ……そいつはワシの出番じゃな。任せろ」

「ん? 爺さん?」


 ゾディアックも周りに他にも居るのを感じているのだろか。シッシッと俺の前で手をヒラヒラとふる。ううむ。ゾディアックの実力なら滅多なことは無いか。

 ゾディアックはさっと右手を翻すと、数発の鉄弾が影を襲う。影はそれをひらりと躱すと木々を蹴りながら勢いをつけゾディアックに斬りつける。


 ガキィン!


 ゾディアックはいつも手元に持っていた杖をぐっと握るとそこから白刃が抜かれる。やはり仕込み杖か。そして影が振るう剣を受けつつ剣聖が見せた相手の防御をすり抜ける例の剣技で応酬した。影は防ぐ剣をすり抜け襲いかかってくる剣戟に慌てたように飛びすざる。

 影が後方に着地すると、ハラッとフードの端が切られその下の顔が顕になった。


「やはりそうか……」

「ハン! こんなところまで追ってくるとはねえ。アタシも愛されすぎかえ? 老人の肉は不味そうだが、何かの縁じゃ。喰うてやろう」

「そうじゃの。喰われてやるつもりはないがな、愛しておったぞ。生きていた頃のアリステはの」

「ハハッ。そんな熱い視線を送られたら腐っちまうよっ」


 2人の会話を聞いていてもわかる。間違いない。ゾディアックが探していた奥さんだな。しっかしちゃんと喋れるのか。あのオークも、アンデッドになっても喋れたし、俺のことを覚えていたしな。


「爺さん! 任せていいか?」

「問題ない」

「……死ぬなよ」

「ああ、アリステを埋葬してやらんとな」



 周りでは既に戦闘が始まっている。他にもヤバそうなのも混じってる。これは皆アンデッドなのだろうか? 俺は走りながら身近なアンデッドを切り刻み一際濃い魔力を発している方向に向かった。



ありがとうございます。


ひいひい・・・・戦闘シーンが始まっちまった。

悩める夜がやってくる。

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