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過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第七章 閉ざされた島

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252.裕也の工房

おはようございます。

 男はそのままズカズカと工房の中に入ってくる。裕也は面倒くさそうな顔で男の方を振り向いた。


「しばらく顔を見せなかったようだな。どこか行っていたのか?」

「……まあ、そこらへんにな」

「おいおい連れねえな。まあ、今日は会えたんだ。丁度いい」

「まったく丁度良くねえよ」


 おやまあ。裕也はおざなりにしてるな。あんま好きな相手じゃねえのかな? 大方、自分専用の武器を作ってくれとか言う口か。


「な、ちょっと作った武器の卸し先を変えるだけじゃねえか。商業ギルドなんかに卸す鍛冶屋なんて底辺の奴らくらいだぜ。俺に任せればもっと高く買い取ってやるって言ってるんだ。悪い話じゃねえだろうに」

「はぁ。前も言ったように俺はなあ。商業ギルドで十分なんだ。むしろ商業ギルドを通すことで変な偏りの無い流通をしてくれるからな。変える気は無い」

「ちっ。ほんと、頑固だなあ。俺は善意で言ってるんだぜ?」


 厳つい顔だから冒険者かと思ったが、商人なのか? なるほど話は単純そうだな。

 裕也は基本的に、打った剣は商業ギルドに卸している。確か前に、商業ギルドを通すことで正規品の保証にもなるし、偏った流通じゃなく王国に満遍なく流してもらえるような話をしていた。それを個人の商人を通せば、その時点で今よりプレミアの付いた値段での買取が出来ると言うことだろう。まあ、ソッチのほうが確実に高く売れるんだろうけど。嫌なんだろうな。裕也は。


「で、商談の為になんでガチャガチャと武装した人間連れてきているんだ?」

「あ? おめえ何を言ってるんだ?」


 男が連れてきたっぽいのが外に何人か居る。まあ、言う事聞かないなら無理やり、とかいう想定なのだろうか。突然裕也に指摘された男は何を言っているんだとしらを切ろうとする。


「工房の外に3人か? それなりに腕に自信ありそうなのが居るみたいだが」

「うん3人だな」

「ん? そうか、省吾は感知だったか」

「そいうこと」


 俺が口を挟むと、男は更に不機嫌そうに睨みつけてくる。


「あ? てめえは誰だよ。勝手に商談に口出してくるんじゃねえよ」

「商談には見えねえけどな。あ。俺も商会の経営しててさ。ゲネブの頃から裕也とは良くしてもらってるんだぜ。お前とは違ってな」

「なに???」


 俺の茶化しで、男の顔に怒りが浮かぶ。


「おいおい。省吾。話を面倒くさくするなって」

「良いじゃん。どうせ揉めるの避けられねえよ」

「まったく……」


 なんとなく雰囲気が怪しくなり、少年が少しキョロキョロとしている。そうだなあ、なんか揉めたら普通怖いよな。


「安心しな、少年。怖ければ奥の部屋に隠れてろよ」

「え? だ、大丈夫だ。俺だってユーヤさんに鍛えられてるからなっ」

「何だ少年も裕也メソッドを体験済みか?」

「おーい。裕也メソッドとか辞めろって。でもまあ、鍛冶をやるにゃベースのレベルは上げるに越したこと無いからな。それなりに鍛えてるぜ」


 マジか。ほんと、裕也は見境無いな。


 男は自分が話から置いていかれている現状にイライラしているんだろう。裕也を睨みつけながら、声を大きくして話に割り込んでくる。


「おい! 優しく言っているうちに頷いちまえば良かったのによ。もう許さねえぞ」

「それにしても随分急いでるじゃないか。何かあったのか?」

「あ? ブラックシープからお前の剣を優先的に卸すように言われてな」

「ブラックシープだ? ていうか優先的って、そもそもお前の所になんて卸してないだろ? どうしても欲しけりゃ商業ギルドに予約すればいい。順番に回るようになってるから」


 ん? ブラックシープ? なんだそれ。


「なあ、裕也。ブラックシープってなんだ?」

「冒険者ユニオンの大手だ。王都の3大ユニオンの1つだな。ブラックシープ、アルストロメリア、エバンス。その3つが王都じゃデカイんだ」

「おお。パンテールの所も入るのか。他の2つは知らなかったな、……ん?」

「……お?」


 突然外に居た連中が一人倒れ込んだ。


 なんだ?


 裕也も気がついているようだ。外に居たのもそれなりに手練だと思うのだがあっという間だ。残る2人もあっという間に倒れていった。このスピード。やられてる連中もほぼほぼ気が付かないうちに意識を狩られている感じじゃねえか? これは……少し気を引き締めたほうが良いかもしれないな。


「おめえら余裕こきやがって、もう知らねえぞ。どうなったって」


 だがそんな事に気がついていない男は、外に向かって「それじゃ頼みます」なんて声をかける。しかし、入り口から入ってきたのは一人の……正装に身を固めたイケメンだった。


「ん? 誰だ? おめえは」

「外に居たのは全員眠ってもらってる」

「は? 何言って……ひっ、モドロン……」


 入ってきた男はそのまま懐から身分証のようなものを突きつける。


「<メカヌス>だ。彼は王国によって保護されている。個人的に彼の技術を得ようとする事は王国の利害とぶつかる事になる。分かるな?」

「は、はい……問題有りません」

「外の人間を連れて去れ」

「ひ、ひぃ」


 慌てたように男が去っていく。

 なんだ? <メカヌス>? 聞いたこと無いな。だけど……こいつ。


 ……すっかりデカくなりやがって。


 男が去っていくのを確認したのか、イケメンはそのまま俺たちの方を向く。



「おお~。見違えたな。ハヤト、だろ?」

「はは。分かっちゃう? 結構変わったと思うんだけどなあ」

「いやあ、エリシアさん譲りのいい男だもんな。ほんと。裕也に似なくてよかった」

「……うるせえ。で、どうしたんだ? こんな時間に珍しいじゃねえか」

「ああ、省吾さんが王都に来たって聞いてね」


 そう言うとハヤトは俺の方を見てウィンクをする。


 相変わらず可愛いんだが……俺はなんか嫌な予感を……感じた。


ありがとうございます。


さて。久々のハヤト。

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