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過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第七章 閉ざされた島

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242.王都に向けて 4

おはようございます。

ちょっと頭痛が。


 大通りに出ると、道を歩いていた人にみつ子が食事をできるところをと聞き、教えてもらった店に向かう。


「あ……このお店だ!」


 教わった店は、以前みつ子が来たことのある店だったようだ。大通りから見て、みつ子が探しまくった場所の逆になる。特に突っ込まないけどね。


 みつ子の言うように、たしかにつけ麺が有名なお店のようだ。ただ、お昼どきを少し過ぎていたためそこまで待たずに座ることが出来る。


「なるほど……確かにつけ麺というより、つけナポリタンって感じだねえ」

「でしょ? 好みは別れるかもだけど」


 老人の分も同じものを頼む。他にもご飯系のメニューや普通のパスタもあったが、老人に聞くと俺達と同じもので良いと言うことで同じ様につけナポリタンを食べている。相当お腹を空かせていたのだろう、むしゃむしゃと食事をするとだいぶ元気になってくる。


 ふと老人の方を見ると、不思議な顔で俺の上の龍珠を眺めている。


「あ、気になります? これ」

「むう。儂もずいぶん長く生きておるが、そんな不思議なものを見たのは始めてじゃな。火と……雷かのう?」

「あ、よくわかりますね。そうです。ていうかよく見えますね」

「そんな禍々しい魔力が渦巻いていればわかるじゃろう」


 ラーダの街を過ぎると俺の龍珠の事を誰も知らないだろうからと、少し光を屈折させて見えにくくしていたのだが……背中におぶり、間近で見れば何となく分かるのだろう。もしかしたら魔力視的なスキルを持ってる爺さんなのかもしれない。


 意外と只者じゃない人だったりするのかと、マジマジと老人を見る。


 老人はかなり小柄で、大分薄くなった頭髪を補うようにひげを蓄えている。旅の間に手入れを出来なかったというのも有るのだろう。服はかなり着古して傷んだもので、一見して農夫のような出で立ちだ。持ち物は腰に結んだこれまた古そうな次元鞄に杖の先にくくりつけてある風呂敷の様に何かを包んだ袋だけだ。



 ゾディアックと名乗る老人は、長年連れ添った妻が行方不明になり、探して旅をしていると言っていた。この老人の妻と来れば相当年寄りだ。探して旅をするほど何処か遠くに行くものか? と首をひねる。もしかしたら奥様も徘徊老人の気があるんじゃないのか?


「おじいさん。私達は明日にはまた王都に向けて出ちゃうんだけど。今日だけでも一緒の宿に泊まる?」

「おお。ミツコさん。やさしいのう」

「え? みっちゃん。流石にそれは不味いんじゃない? 仕事中だよ?」

「おお。ショーゴ。人でなしじゃのう」


 おいおいおい。


「いやでも、じいさん。俺達は今護衛の仕事中なんですよ。ねえ、みっちゃん。少し路銀でも渡してあげ――」

「そんな金はうけとれんよ。儂にも矜持というのがあるんじゃ」


 路銀を渡そうと提案した瞬間に、老人はキリッとした目でお断りしてくる。


「だけど……行き倒れになるよりはマシでしょ?」

「……お前さんはこんな死にぞこないの老人をまた見捨てるというのか?」

「見捨てるとかじゃなくて……」


 うわ。このじいさん。やっぱりボケているのかもしれない。矜持とかって、すでに飯をおごってもらってるじゃないか。「みつ子さん昼飯はまだかい?」とか言い始めそうなんだけど。面倒くさいのに関わってしまった予感がする。


「お前さん達も王都に行くんじゃろ? どれ。儂も手伝ってやるわい」

「いやあ。それは間に合ってますので」

「若いのに、遠慮をするもんじゃない」

「いやあ。遠慮をしてるわけじゃなくてですね」

「ミツコさんも儂が来ると迷惑か?」


 突然矛先を変えられたみつ子が、なんと答えて良いのか分からず言葉に詰まる。


「えっと。おじいちゃん。今ね私達は偉い人の警護をしているの。だから勝手に知らない人を旅の道連れにさそえないの」

「そりゃあ。寂しいのお。儂とミツコさんは知らない仲じゃ無いのにのお」


 このジジイ……本当にボケてるのか?


 説得しようとするが老人はのらりくらりと付いていく方向でブレない。流石に俺もみつ子も困り果てる。


「で、じいさんはなんで王都に奥さんが居ると思うんです?」

「それはわからん。直感じゃあ」

「え? じいさん直感のスキルでもあるの?」

「ふぉっふぉっふぉ。何でもあるぞ。これでも若い頃はそれなりに鳴らしたんじゃ」


 たく……何を鳴らしたのか解らないが。ボケ具合は相当なもんだ。

 仕方無しに、俺達はゾディアックをホテルまで連れて行った。




「で、それで結局連れてきたのか」


 ゾディアックに遭ったところから説明すると、モーザが呆れたようにつぶやく。確かに呆れられてもしょうがない状況だ。だが、金もない老人をあんなところに放置してサヨナラ出来るほど心も強くないしなあ。


「あらぁ。おじいちゃん。かわいい~」

「おお~。エリーの若い頃にそっくりな美人さんじゃのう」

「ふふふ。お上手ね。おじいちゃんも一緒に王都へ行きたいの?」

「そうなんじゃ。だがショーゴが意地悪を言うんじゃよ。こんな見知らぬ街で放り出されたら儂は死ぬだけなのに」

「そうねえ。私もなんだか捨てていけないわ」

「ううむ……」


 とりあえず、明日にリル様にお伺いして許可をもらえたら連れていくことにする。もし駄目と言われたら諦めてくれと言い聞かせた。


 ここのホテルでは、俺とみつ子、フルリエ、モーザとミドーとジン、で3部屋借りていたが、ゾディアックはモーザの部屋に寝てもらった。最後までフルリエと一緒に寝るなどとごねていたが、そこはサクラ商事の代表として許せないしな。


「私の部屋でも良かったのに~」

「駄目っす。フルリエは何でも食べちゃいそうだから」

「ふふふ。好き嫌いはしないって決めてるからね」



 その後ゾディアックは夕食も遠慮なく食べ、長年の知人のように俺たちと接してくる。

 その夜は特に問題はなく過ぎ、俺達はホテルをチェックインして北門に集合する。



 俺達が北門で待っていると、モーザが騎獣舎からハーレーを連れてくる。今日も町の人達を驚かせないようにハーレーは小さくなってもらってる。


「なんじゃ。あまり見たことのない騎獣じゃな」


 ゾディアックがブツブツとハーレーを眺めていると、ハーレーはブルブルっと体を震わせ元の大きさに戻ってく。


「なんと……これは……まさか、ドラゴンか?」

「そう、アース・ドラゴンの幼生ですよ。じいちゃんはこいつの背中に乗って行くからね」

「お、おおう……大丈夫かの?」

「取って食ったりはしないから大丈夫だよ」


 そうこうしているとリル様やエドワールを乗せた獣車もやってくる。ただ同行の許可を貰おうとしたリル様は獣車の中で熟睡中ということで、少し悩みエドワールに聞いてみる。


「ふむ……して老人。ハーフドワーフか? 何か身分証のようなものはあるか?」

「ふぉっふぉっふぉ。ちゃんと肌見放さず持っておるよ」


 そう言うとゾディアックは冒険者カードのようなものを護衛騎士のリーダーに渡す、ちらっと見えたがなんとなくデザインが違うか。それにしても……なるほどハーフドワーフか。確かに人間と比べると大分サイズが小さいし、違和感は有ったのだが。


 騎士はそのカードを一瞥すると少し驚いたような顔をする。「ゾディアック……? ウブロット共和国?」何やら考えながらエドワールの獣車に向かう。


 ウブロット共和国といえば、リシュボン帝国やヴァシェロニア教国より更に北にある国だった様に思う。この爺さんそんな遠くから来たのか? 確かに驚くわな。


 やがてリーダーと共にエドワールがこちらにやってくる。


「ご老人……一応本人確認をさせてもらってよろしいかな?」

「おお、貴族様ですな。ええぞ。鑑定かな?」

「いや、そこの城門に解析の魔道具があるはずだからお借りしよう」


 そう言うと、エドワールとリーダーがゾディアックを連れて城門の脇にある門番の小部屋に向かった。


「違う領地でも魔道具貸してもらえるのかな?」

「大丈夫じゃない? ブント大公とゲネブ公は仲がいいって言うから」

「ああ、なるほど」


ありがとうございます。

もうじき今年も終わりますねえ。

雪がひどくなければいいんじゃが

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