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過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第七章 閉ざされた島

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238.正月

おはようございます。

 元々、長粒米しか無いので餅をつくなんて言うのは無理だろうと諦めては居たのだが、しばらくこの世界に住んでいると、長粒米でも微妙に何種類かの米があるのを知る。それらを色々試して、なんとか餅っぽい物になる品種もあった。


 僥倖である。


 大晦日は深夜まで馬鹿騒ぎをしていたため、早朝という訳にはいかなかったが、興味のある者だけを引き連れて、ゲネブの外周内で餅つき大会を行った。


 蒸した米を俺が必死で作った臼に入れ、それを杵で打つ。


 それだけなのだが、正月のハッピーなムードに引きづられ、なかなかの盛り上がりを見せる。


「よいしょ!」


 ドン!


「よいしょ!」


 ドン!


 粘り的には日本で食べていた餅と比べるとやはり落ちるが。つきたての餅はそのままでも旨い。


 餅をついている横で、焚き火をしながら暖を……取らない。


 この世界では、正月は一番太陽の大きい季節。つまり夏だ。まったく正月感がわかないが。それでもこうやって居ると日本の正月を思い出す。芸能人は常夏のハワイで正月を過ごしたりしていたしな。ポジティブシンキングだ。


 焚き火の上に金網を組み、そこに鍋を乗せて雑煮の汁を作る。去年はみつ子プロデュースだったので、今年は俺の実家で作っていた雑煮だ。みつ子が作っていたようなすまし汁のように澄んだ感じではない。鳥等や野菜を入れ、濃い色に濁った雑煮に、みつ子が眉を寄せる。


「省吾くん、これが雑煮?」

「そうだよ。雑に煮る。って書くでしょ? こんな感じが正統に違いない」

「え~。絶対違うよ~」


 むう。確かに自分の馴染みのある文化と違うと違和感は感じるんだろうな。去年俺がそうだったみたいに。


 ついた餅を汁にぶち込み、参加者たちに配っていく。味に関しては評価は上々だ。みつ子もなんだかんだ言いながら「まあ、ありだね」なんていう反応だ。


 こんな熱い日に、外で餅をついて焚き火をして熱々の雑煮を食べる。

 俺とみつ子は、懐かしの正月気分を少しでも味わえ、良い正月を迎えたんじゃないだろうか。



 その後は残ったおせちなどを楽しみながらゆっくりと2人で正月を過ごし、いよいよ出発の日を迎える。




 出発は1月の4日。日の出からと言うことで、朝からハーレーを取りに行く。みつ子はロシナンテを連れて行きたそうだったが、足の早めの騎獣での移動になるためロシナンテではやはり厳しいだろう。泣く泣く諦めていた。


 北門の前には正月明けだがポツポツと依頼を受けた冒険者などもいる。その中で一際豪華な集団が間違いなくリル様御一行だろう。突然ハーレーを門の前に連れて行くと騒動が起こりそうなのでハーレーと仲間を少し離れた所で待機させ、オレ一人でそちらに向かう。


 ……ん?


 門の前に見知った顔が見えた。パンクとデーブだ。向こうも俺に気がついたのか手を上げて挨拶してくる。


「お、あけおめ! お前らも仕事か?」

「あけおめ? ん~なんでもトロールが出たらしくてね。ショーゴも?」

「俺達は護衛だ。ピートとルベントは居ないのか?」

「兄貴達も商隊の護衛で別の仕事に行ってるよ」

「なるほどな」


 ピートやルベント達は元マルズ団の後輩たちを集めて2年くらい前から「ベンチュラ」と言うユニオンを作って活動している。どうやら俺達のサクラ商事を見ての思いつきらしく、俺たちと同じ様にスラムの子供たちを集めて特訓をさせ、鍛えるという教育システムも導入している。その為それなりの質の冒険者を集めたユニオンとして最近評判を上げている。


 その鍛えるというのも、結成時にピートに教えろと言われ、俺達のやってる裕也メソッドをそのまま教えたので今でもやっているのだろう。手探りで冒険者を始めて命を失う子供たちも多い。そうやって子供たちの犠牲が減るだけでもいい傾向じゃないかと思う。王都ではユニオンが普通に有るというし、ゲネブでもそういうのが出来始めると言う流れになるんじゃないかな。


 そしてピート。ルベント、パンクはすでにBランクの冒険者として名が売れているために仕事もかなり集まるようだ。特にパンクは以前にフェニードハントの時に俺が教えた槍の訓練法を地道に続けているようで、強さだけならコイツラの中では抜きん出ているようだ。

 たまに同じ槍使いのモーザに訓練を付けてもらっているし貪欲に槍を極めようとしている。本当にいつか神槍とか言われちまうかもしれない。


 2人はもう1人、ベンチュラの仲間が来る予定でそれを待っているらしい。「あいつはいつも寝坊しやがるんだ」なんてブツブツ言っている。




 俺はリル様も来ているようだしあまり喋って居られないため、軽く挨拶するとパンクとデーブと別れ、リル様が待っていると思われる獣車に向かった。


 リル様の馬車の周りには護衛の騎士が待機していた。メール屋が使っているのと同じタイプのダチョウのような大きい鳥に乗ってる騎士が3人。それから二足歩行のトカゲの様な騎獣に乗っているのが5人。鳥の方はピゲ伯爵家の護衛騎士。トカゲの方はゲネブ公の護衛騎士のようだ。


 近づいていくと隊長らしい壮年の騎士が話しかけてくる。


「ご苦労さまです。ショーゴ様。王都までよろしくお願いいたします」

「はい。でも、様、はよして下さい。僕は平民ですので」

「いえ。ゲネブ公より丁重に対応しろと伝えられておりますので」

「えっと……まあ。適当でいいので。で、リル様は?」

「はい。リル様はまだお休みですので、今は獣車の中で寝ております」

「あ、寝てるのですか……どうします? 起きるまで待ちますか?」

「いえ。このまま出発いたしましょう」


 そうか。まあかなり朝早いもんな。起きれないか。お嬢様だもんな。正直ハーレーに乗りたいと言われても困るからこのまま王都まで寝てくれれば良いが。それは無いな。


 獣車は2台あるようで、片方がリル様で、もう一つがエドワールだろう。速さを考慮してかだいぶ小型の獣車が2台並んでいた。繋がれている獣はどちらも普通の馬っぽく安心感が有る。まあ……足が6本あるが。それが2頭づつで引くようだ。


 とりあえずリル様は起きたらで良いだろう。俺はエドワールに挨拶を済ませ再びハーレーのところに戻った。


ありがとうございます。

ちょっとだけストックを書けましたぜい。


旅行に出発すればもう少しいつもの感じになって、、、、くれるといいな!

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