21.ボス戦
やっぱり、今日残りの半分投稿します。
ハヤトが中に入っていくとすぐにロックドールが反応する。2体が手を向けストーンバレットを放ってきた。ハヤトは風の魔法を使いながらひらりと高く飛び上がる。そこにもう一体のロックドールがストーンバレットを撃ってくる。
一瞬ヒヤリとするが、ハヤトは空中で再び風を起こし軌道をずらし避ける。上手い。そのまま着地すると右手の方からぐるっと回り込むように走り出す。
俺の出番だ。ハヤトに注意が向いているうちに一番近くに居たロックドールに向かい全力疾走。一匹目でしくじりたくない俺は、グググと魔力を十分に込めながら突っ込む。背中を向けてストーンバレットを放っているロックドールが気がついてこちらに向くが遅い。気合十分の魔力斬を叩き込もうと振りかぶる。
その時、ゴォォと風の唸り声と共に「お兄ちゃん!」とハヤトの声が聞こえた。横目で左側を見ると無表情のストーンゴーレムが間近に迫り、拳を振り下ろしてくるのが見えた。げ。嘘っ!!!
ドゴォオン!
なんとか剣の根本で受けるも二度三度と硬い岩の地面をバウンドしながら吹き飛ばされていく。超痛い。息が出来ねえ。なんとか止まったが手がしびれて剣を取り落してしまう。
更に遠くでロックドールがこちらに手を向けているのが見える。ヤベえストーンバレットかよっ!!! すぐに放たれたバレットが飛んでくる。うぐぐぐぐ。弾道的に腹に当たるか? ヤバい動けねえ……必死に腹に魔力を集中させる、耐えられるのか。ダメ元でバレットにノイズを放つ。心なしかバレットの軌道がブレたように感じたがそれだけ。そのままバレットが腹に食い込む。グフッ……
バゴーン!
「お兄ちゃん!」
「省吾!」
「だだだ大丈夫だっ!」
うぐぐぐ。なんとか耐えられた。しかし今度はストーンゴーレムが既にこちらに向かって走り出している。
「ハヤト、逆になったがドールの方やってくれっ!」
「わかったっ! 気をつけてねっ!」
手がまだジンジンしているが気合で無視。取り落した剣を拾い無理やり立つ。
負けねえ!
フンッ フンッ
必死で剣に魔力を込めながらストーンゴーレムのパンチを弾く。剣で受けるたびに石の破片が顔やら手やらに当たる。地味に痛い。魔力を込めた剣のおかげでストーンゴーレムの拳が少しずつ削れている。だが僅かだ。俺の魔力斬でこいつを斬れるのか???
ぬう。パンチは速いがある程度は見えるぞ。反応も出来る。守るだけなら……行けそうか。さらに奥の方でハヤトがロックドールを1体始末したのが見えた。よし。このまま時間を稼いでやる。
ゾクリ
え? 何? ストーンゴーレムが両手を高く持ち上げる。ぐぐぐっと力を貯めるように。げ。ヤバい。なんかヤバいのが来る。慌ててバックステップで後ろに下がっる。ストーンゴーレムはそのまま振り上げた両手を地面に向けて振り下ろした。
ドゴォオオオン!!!
凄まじいパワーで地面を殴りつけると周りに大量の石つぶてが飛び散る。まるで散弾銃だ。とっさに急所を腕と剣で防ぐも体の至る所が痛い。くっそ。痛い痛い痛い。額からの血で左目も開けられない。ヤベえ。
当然ストーンゴーレムは止まらない。コンチクショー。恐らく左の方からパンチが飛んでくる。俺ならそうする。右目でなんとか踏み込む足を確認。その瞬間に左側に思いっきり飛んだ。
流れる視界の中、空を切るパンチが見える。俺は鬼の形相で魔力を込め剣を振り上げる。
グォオン!
おおおお。ストーンゴーレムの右腕を切り落とせた。切り落とされた腕がサラサラと崩れていく。
なんだ。斬れるじゃないか。硬いのは拳だけか。行けるよ行ける。
「ふう……」
親指で左目に流れる血を拭い。ストーンゴーレムを睨みつつカッコつけてちょっと血を舐めてみた……ん? あれ?
サラサラと崩れたはずの瓦礫がストーゴーレムの腕のあたりに集まりながらどんどん腕が出来上がってく。
「まーじーかー」
慌てて剣を構える。
ハヤトがようやくロックドールを始末してこっちに走ってくる。
「兄ちゃん、ゴーレムは額の魔石を砕かないと再生するからっ」
腕が再生したストーンゴーレムが再び両手を上に振り上げる。それはもう見たぞ。俺は剣を腰だめに魔力を込めながら突っ込む。ストーンゴーレムの振り下ろしに合わせ右に踏み込みながら思いっきり切り上げる。
ゴォオオン。
ストーンゴーレムの両腕が地面を殴ることはなかった。弾け飛んだ両腕がサラサラと崩れていく。
はい、額がノーガードですよ。
「ハヤト!」
「まかせてっ」
ハヤトの一撃でストーンゴーレムの額が割れる。スライムが崩れるのと似た感じでゴーレムの体が崩れていく。よし。よし。
サラサラと崩れていくゴーレムを見ながら、万感の思いを込めて右腕を高く突き上げ……ようとした時。レベルアップ酔いに襲われる。
をををを……っと尻餅をつくと、隣で同じように尻餅をついているハヤトが居た。
「ハヤトもレベル上ったのか?」
「お兄ちゃんも? ははは。やったね」
うん、きついがチームプレーは楽しい。
「残念。魔法金属じゃ無かったな、オーブが出たか」
裕也の本音が聞こえる。裕也の声にストーンゴーレムが消えたところを見ると、魔石の横に玉虫色の一回り大きい石が落ちていた。
「おおおおお。来たね。スキル。来ちゃったね。裕也。なんのスキルか解る?」
「ちょっと待ってろ……<頑丈>だな」
「ほほう。打たれ強くなりそうじゃないか。結構良い物なのか?」
「そのまま防御力の底上げになるから、タンク職だと大抵持ってるな。ただ割りと発生しやすいスキルだから買うより出現させるのが普通だ」
なるほど、でも打たれ強さは生き残るには良いアドバンテージがあるからな。頂いてしまうぜ。
「これ俺が使っても良いんだろ? どう使うんだ?」
「手でグッと握り締めると割れる、割った人間にスキルが流れ込むんだ」
「そうか、ふふふ。行くぜ。行っちゃうぜ」
「ああ、好きにするが……あ、ちょっとまてっ!」
「ん? なんだよ」
なんだか裕也の顔が険しい……惜しくなったか?
「いや……その。今ふとお前のスキル見てみたんだがな」
「おう。なんかあったか?」
「なんていうか……スキルが2つ出現してるんだ」
「まじか??? 二つも? どんなスキルだ?」
「ん~。1つは<直感>だ」
「お。出ましたね<直感>……ハヤトの<気配察知>みたいなのか?」
「それのマルチ版みたいなのだ、効果はそこまで大きくないが、気配察知とか危険察知とか、察知系の感覚がオールマイティに上る感じだな」
「おおおお、それ使えそうね。実に勇者っぽい、うん、それでもう1つは?」
「ああ、<頑丈>だ」
「おおう、打たれ強くなりそうじゃないか……ん?」
「そう、そのオーブと一緒なんだ」
「……おや?」
結局オーブはハヤトが使うことになった。ハヤトは言ってみればアウトボクサーのようなスタイルだからまず<頑丈>が発生することが無いとのことで、嬉しそうにオーブを割るハヤトを指をくわえて眺めてた。
いや、スキルを二つもゲットできたのは嬉しい話さ。ただ……なんか自分のガチャ運の無さに悶々とする。
ショーゴ ヨコタ
LV12
魔法 <光源> <ノイズ>
スキル <言語理解> <極限集中> <根性> <頑丈> <直感>
10月の初日ですからね、ストック貯めたい気持ちはありますが。2話目行きます。
それではまた。