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過去の転生勇者が色々やっちまって、異世界ライフがシビアなんですが。  作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第六章 ゲネブの省吾~続謎の珠編~

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206/308

206.トゥルの依頼 8 ~山の集落へ~

おはようございます。

今週もよろしくお願いいたします。

 はっ。はっ。はっ。


 俺たちは道なき道を進んでいく。山の方に向かうのかと思っていたが、始めはそのまま南下を指示されていた。少しだけ龍脈が続くのか、少しの間は薄っすらと道のような所を進んでいくが、しばらく行くと道がなくなる。道がなくなると歩きにくい場所も増え、思ったほどのスピードでは進めなくなる。当然魔物も出るので予定よりだいぶ遅れそうな気配に俺は頭を悩ませる。




 試験を終え、再び村に戻ると、ジャンさんは村の重鎮たちに俺たちの実力は問題ないと伝えてくれる。本当はこんなんで良いのか? とも思ったが。良いのだろう。それだけ俺たちの実力が上がってきているということだ。


 見せられた地図は渡すことが出来ないということで、要所要所を紙に書き写した。模写は構わないらしいが、他人には見せないようにと約束させられる。もともとの地図も日本で見たようなちゃんとした登山マップの様なものではなく、場所場所にある目印的なポイントをピックアップして描かれている様な簡易的なものだった。


 そして昼飯をご馳走になって出発して今に至る。



 樹林帯を抜けると、草原のような場所に出る。地図によるとこの先に広めの川があるようで、川に出るまで南下を続けるようだ。ただ、草原と言っても伸び放題の草は人の背丈ほどもあり、先を見通せずになかなかにやっかい極まりない。


「帰り道もあるから、草刈りしながら進むか?」

「フォルの木魔法で道を開けるとか出来ねえのか?」

「無理っすよ。枯れさせるならいけるけど、無尽蔵の魔力でもないと」


 ヤブ蚊が出ないだけでも御の字なんだが、この中を走ると葉で細かい切り傷とか出来そうで躊躇するよな。


「みっちゃん」

「ん? なに?」

「焼き払え!」

「腐ってやがる。早すぎたんだ!」

「……いやいやいや、そうじゃなく」

「え~。違うわけがないじゃない」

「そうじゃなくってさ、ファイヤーボールでどう? って話。火事になっちゃうかな」

「ん~ ファイヤーボールの火は消えると思うけど、延焼した部分はどうなんだろう」


 たしかになあ。山火事が広がったらまじ洒落にならんしな。そんな話をしてるとショアラが近づいてきた。


「ショーゴさん、ウィンドカッターでバシュっとやっちゃいましょうか?」

「お。おおお。そうかそれは良さげだ。頼むよ」


 俺がお願いすると、ショアラはウインドカッターを飛ばしどんどん草を刈っていく。うんうんコレはいい感じじゃないか。まあ魔力の無駄使いかもしれないが魔力量もそれなりにあるんだろうな。自然を大事にするイメージのエルフが草の大量虐殺を普通にやってるのには違和感はあるが。イメージはあくまでもイメージだしな。……草と木で扱い違うのか?



 意気揚々と進んでいくと、モーザが魔物が近づいてくるのを知らせる。魔物は草を刈っていない左側の茂みの方からゆっくり近づいてくるようだ。


「これは……ウルフじゃねえな。よし。俺にやらせろ」


 なんかちょっと強そうな気配を察知したのだろうか。モーザが嬉しそうに槍を持ち出す。まあウルフは子供たち(フォルやスティーブ)にほぼやらせていたからな。いい加減ストレスが溜まっているんだろう。



 やがて俺の<気配感知>にも引っかかってくる。姿勢を低くしてヒタヒタと俺たちの後を追ってくる感じだ。とりあえず俺たちはそのまま気が付かないふりで進み続け、モーザが隊列の後ろの方に下がりながらタイミングを計る。


 ザッ!


 ある程度の距離まで詰めると、魔物はスピードを上げ列の一番うしろに居るモーザに向かって走り始める。モーザもそれに気がつき、槍に魔力を込める。


 ザザザザッ!


 草むらの中で葉擦れの音が鳴り、草の刈られたところにそいつが姿を表す。なんだ? 虎か??? しかし口からは長い牙が見え、先のほうが刃物の様に薄く尖っている。モーザはそこで振り返り虎の方を見る。既に虎はモーザを射程に捉え飛びかかっていた。


「モーザ! 気をつけ――」



 ボゴン!!! ギャン!



「は?」


 勢い付けて飛びかかる虎が、空中でなにかに当たり失速する。アクリル板の様なガラス板の様な、そこだけなんとなく色合いがくすんでいる。


 虎の魔物はかなりの衝撃でぶつかったのだろう、足取りが怪しい感じでフラフラしている。そのままモーザは冷静に槍で一突きで虎を仕留める。


「ふむ。やはり使えるな」

「え? なにそれ今の???」

「ん? <マジックシールド>だ」

「まじか……え? あの時のやつ買ったの???」

「ああ、距離を詰められると不利になる槍使いには、あれは最適だと思ってな。うん。予想以上に使えそうだ。あのブレードタイガーがこんな簡単に仕留められるとはな」


 少し得意げに虎を捌き魔石を取り出すモーザを見つめながら、なんとなく思った。こいつ。給料を家に全く入れないで全てを魔法を買うのにつぎ込んでるんじゃね? と。



 なんとなく自分の新技を披露して溜飲が下がったのか、スッキリした顔のモーザがこころなしか機嫌が良くなっている。それにしてもそうか、コレがブレードタイガーか。俺たちの世界の感覚だとサーベルタイガーって呼びたくなりそうな見た目だ。旅の序盤で荷物を増やすわけにも行かず、魔石と高く売れるという牙だけ2本採取しておく。


「それにしても、こんな浅い所でブレードタイガーが出るとはな」

「なんか奥に行くのがちょっと楽しみになるな」


 トゥルは真っ白い顔で白目をむいていた。




 出発が少し遅くなったのもあるが、だいぶ日が傾いて来る頃にようやく川に出る。川沿いは砂利や石が多いが草もあまり生えていないから見通しも良さそうだ。このまま今夜はここで野営をしようと思う。


 龍脈沿いの野営と違ってここは魔物の生活圏になる。皆で相談し、夜番も二人づつ回すようにする。俺とみつ子。モーザとスティーブ。フォルとショアラだ。フォルとショアラはあまりイチャイチャして警戒を怠らないように強く言っておく。ショアラはハーフエルフだけあって年齢は割と高くレベルもそれなりにあるということでまあ戦力としては問題ないだろう。


 トゥルも夜番に参加しようとしていたが、一応雇い主だ。ゆっくり寝てもらう。正月にエルフの集落に行った時に貰った神樹の枝を持ってきたので、少しづつ火に焚べるように教えてる。するとショアラはすぐにそれが何か気がついたようだ。


「え? ショーゴさんこれどうしたんですか?」

「ああ、正月にエルフの集落に言った時にエリックさんにもらったんだ」

「……まじっすか。ショーゴさん相当エリックさんに信頼されてるんですね」

「あ、あまりコレって貰えないもんなの?」

「ですよ」


 ふうむ……まあ嬉しいわな。


ありがとうございました。

週末はバタバタしてて、1話分なんとかと言う感じで。


そんなペースで次話は……

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