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勇者様の理想の彼女  作者: 屋月 トム伽
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勘違いと鈍感

薪を入れながらジークは、フィーネに湯加減を聞いた。

「ちょうどいい湯加減です。もうすぐでるから、もう、薪は大丈夫よ。」

(本当に覗かないみたい。心配しすぎたかな?それにしても、あの人何しに来たんだろう?水の乙女って、お師匠様何て騙したんだろう?)

フィーネは少し笑ってしまった。


「ジーク、お先にごめんなさい、ジークもお風呂どうぞ、今なら湯加減ちょうどいいですよ。」

リビングで待っていたジークは、風呂上がりのフィーネにドキっとした。


ジークが、無表情でフィーネを見てると、フィーネは何かしらと思った。


「ジーク、どうしたの?」

「いや、いい匂いだなと、」

「石鹸の匂いかな?ジークも同じ匂いになるよ。さぁ、入ってね。」

ジークは、風呂に入り、一人ずっと考えていた事が頭に巡った。


(フィーネは優しい娘だ。しかも可愛い!

だが、ずっとしている俺の動悸はなんだ?変な物は食べてないが、フィーネの料理は旨かったな。あんな、彼女が欲しいな…)


ジークは、石鹸で体を洗っていると、また、フィーネの言葉が浮かんだ。


同じ匂いになるよ。


(フィーネが使った石鹸…か)


急に、ジークはジャバと、頭から、湯をかぶり、浴槽に勢いよく入った。


ブクブクと、ジークはフィーネの事を考えていた。



(大丈夫かしら?時々思い詰めた顔してたけど、)

フィーネはあまりにジークが風呂から出てこない為、心配になり、声をかけた。


「ジーク?大丈夫?」


「だ、大丈夫だ!すぐに出る!」


ジークは慌ててズボンを履いていた。



その時、玄関のドアが開き、ジャンが入って来た。

「フィーネ!?」

「な、何?ジャン?てゆうか、勝手に入って来ないでよ!」

ジャンはずかずかと入りフィーネに近付いた。

「良かった。あの男は居ないんだな!」

「ジークの事?」

ジャンはフィーネの腕を握りながら迫り、髪を撫でた。

「風呂上がりか?まさか俺の為に」

「違うでしょ!?離してよ、ジャン!」


ガタガタと音がし、ジークは慌てて、半裸のまま出ると、そこには、ジャンに掴まれた、フィーネの姿があり、ジークは頭に血が上った。


「フィーネから離れろ!貴様、クラウ・ソラスの餌食になりたいか!」


ジークの整った顔が迫力があり、二人は後退りした。


ジャンはその時ハッとした。

(まさか、二人とも風呂上がりという事は)

「まさか、…したのか?」


「ジャン、何言ってるの?」

ジークは、ふと、キッチンに目をやり、食事の事だと思った。

「ああ、したがそれが何か?」

そういいながら、ジークはフィーネをジャンから離して、自分の後ろに隠した。

フィーネは、ポカンと目が点になっていた。

「フッ、フフ、そうか、フィーネはもう、」

「あの、ジャン?」

フィーネがジャンに寄ろうとすると、ジークが止めた。

「フィーネ!他の男に近づくな!」

(何言ってんの!この人!?)

「フィーネ!絶対諦めないからな!」

ジャンは、ギラっと、ジークを睨み付け、家から飛び出して行った。


「フッ、逃げたか。」

ジークは、無表情ながら勝ち誇っていた。


(何か、勘違いが起きているような)


「…ジーク、勘違いされてたよ。」

「何の勘違いだ?大体何故、フィーネに迫ろうとして、食事したことを聞くのだ?」

「…ジークって鈍い?」

「女心はわからんが」

「あのね、ジークと私が付き合ってるって勘違いされたの!ジーク困るでしょ!」

(俺とフィーネが!?)

ジークは、思わず顔が赤くなった。

「お、俺は困らない!」

「だって、私が彼女だと、間違われたんだよ?ジークは彼女がいるんじゃないの?」

「いない!」

今度は、ジークがフィーネの腕を掴んだが、フィーネはジャンの時と違い払おうとしなかった。

「フィーネは勘違いされたら困るか?

その、俺と、」

「…ジャンを追っ払ってくれたし、嫌じゃないよ。」

フィーネは顔を赤くし、目を反らした。


(何て可愛いんだ!)


「フィーネ…、その、俺と」


ジークがフィーネの顔に近づくと、フィーネは、ジークの言葉と半裸が目につき、限界だった。


「今日はもう無理!?おやすみ!」


ジークを突飛ばし、フィーネは部屋に逃げた。



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