フィーネは困ってました
「ジーク、何かリクエストはある?」
「リクエスト?」
「ええ、どうせお師匠様はしばらく帰って来ないから、好きなもの言ってね。」
「帰って来ない!?」
「城で仕事が終わったら、旅行に行くって言ってたから、しばらく帰らないわよ。」
(あの魔女、確信犯か!?)
「もしかして、お師匠様に用だった?」
ジークはがっくし来ていた。
「あの…、元気出してね。」
落ち込んだジークを見て、フィーネは空気を変えようとした。
「あっ、そうだ!ジーク、オムライスは好き?おばさん、卵下さい!」
「卵なら売り切れだよ。」
食料品屋のおばさんがあっさり言った。
「欲しいなら、ウケイさん所に直接取りに行っといで。」
(卵にも見放された気分だ。)
「俺が取って来る」
「待って、ウケイさんの所を」
ジークは、青白い顔で向かい、フィーネはウケイさんの鶏舎を教える為、追いかけた。
「…おばさん、チーズも下さい。」
「あれ、一緒に行ったんじゃないのかい?」
「一人で大丈夫だそうです。」
「彼氏かい?」
「違います。お師匠様のお客様見たいで。」
「?セレスさんなら、しばらく留守にするんじゃないのかい?」
「そうなんですよね。」
フィーネはチーズを包んでもらって、店を出た。
食料品屋の前には広場に噴水がありそこでジークを待っていると、フィーネの苦手なジャンがやって来た。
「フィーネ、ここで何をしているんだ?
もしかして、俺を待ってたのか?」
フィーネは嫌そうな顔をした。
「待ってません。人と待ち合わせしているんです。」
「またまた、それに、今日からセレスティアが居ないなら一緒に食事でもどうだ?」
「止めとくわ。」
「そろそろ、俺は返事が欲しいのだが、」
「ジャン、いつも断っているでしょ?」
「今日は、夜に行こうかな?」
「誰も居ないからって来ないでね。」
ジャンはフィーネを落とそうとしているが、フィーネは一向に落ちなかった。
(本当にジャンてしつこい!悪い人じゃないと思うんだけどな)
フィーネが困っていると、ジークが二人の元に現れた。
「フィーネに何か用か?」
「ジーク、何でもないわ。卵は?」
「ここにある。」
「じゃあ、行きましょう。またね、ジャン」
二人が行こうとするとジャンが止めた。
「ちょっと待て、フィーネ!こいつ誰だよ!」
ジャンは勢いに任せ、フィーネの腕を掴んだ。
「ちょっと、ジャン止めてよ。離して!」
嫌がるフィーネを見て、ジークはジャンの腕を掴み上げ、フィーネとジャンの間にたった。
まるで、フィーネをジークの背中に隠すようだった。
「おい!フィーネが嫌がっているだろう」
「いてて、…くそ、離せよ!フィーネ、夜行くから待ってろよ!」
ジークが離すと、ジャンは逃げるように去って行った。
「ジーク、ありがとう、助かったわ。」
「何なんだ、今のは?」
ジークが淡々と聞くと、フィーネは困ったように言った。
「何か、付き合って欲しいみたいで、」
「付き合う?彼氏にするのか?」
(ちっ、こいつらもリア充か!)
「断っているけど、しつこくて困っているのよ。」
ジークは、立ち止まった。
「断る?何故だ?恋人ができるんだぞ。」
「誰とでも恋人になったりしませんよ。」
「そういうものか?」
「ジークは誰でも、いいの?」
(誰でも?嫌、金目あては嫌だし、うるさいのは嫌だな。他にも…)
「…確かにそうかもしれん。」
「でも、夜来るって行ってたから、夜は森にでも逃げとかないと、」
「なら、俺が見張ってよう。」
フィーネは、一瞬、えっと思った。
「なんだ?」
「ジーク、泊まる気?」
「ダメか?森で寝るよりはいいと思うが、」
「ジーク、痴漢じゃないと思うけど…」
「見張りの経験はあるから大丈夫だぞ。」
「…じゃあお願いします。」
急に襲って来ることはないだろうとフィーネは思った。