第7話【虚無】
それは2年に一回、まるでオリンピックのように……。
いや、そんなつもりは無い。
何となく多忙な日々の合間に、ふと書きたくなってフラリと戻ってきた、ただそれだけの事でしかない。
全く書かなくなって2年が経った今、私はどれくらい書けなくなっているのだろうか?
それを確かめる為にここへ今夜、書き残す事とする。
最早小説家を目指す事など到底出来ない程に文藝からは遠く離れて、距離を置いて生きてはいるが、かといって全く喋らない、文章を書かない仕事などこの世にある訳もなく。
過去の私の書き遺しを読み返してみて思う事は、『なんと漢字の多く読み辛い文章であろうか、此れは……』という困惑だった。
だがそれは別の視点から見れば即ち『ボキャブラリーが貧困になった結果、日常会話的な単語以外使えなくなってしまった』とも読み取れる事でもある。
故にこそ私は思う。
もう私は作家にはなれないのだ、と。
この数年で私の価値観は変わった。
ハッキリ言って、小説を……否、売文と謂う概念全てを見限って、次の私の表現者としてのキャリア全てを捨て去って、次の生きる道を探そうとしていた程度には。
だが結局のところ、私は小説の才能が無ければその他のエンターテイナーとしての才能も無かった。
絵は全然描けない。
歌は音痴。
機械もこのサイトに接続して文章を書く事以外は全然何も出来ない。
故に私は今こうして、何も生み出さない、一般人の仕事にしがみついて生きる事しか出来なくなった。
更に言えば、昨日の夜に書き始めたが、途中で寝落ちしてしまって今、昼前になってまだ600字前後しか書けていないような体たらくでもある。
……これ以上、何も書けない。
困った。
久しぶりに書きたくなったのに、まともに書く事すらできなくなっている。
如何に私がこの2年、感情面で虚無的に生きてきたかが分かるだろう。
日々の生活の安らぎを求めて……。
もう苦しみたくないし、悲しみたくもない。
その為に喜びも楽しみも失っても、構わない。
感情が無くなっても構わない。
それが私の答えだった。
あとは静かに生き続けられれば、もう多くは望まない。
きっと不老不死は私が生きている間に達成されない。
医学面において、それは実質的に不可能である事が分かった上に、物理学や量子力学の観点から出来ることを探しても、それはオカルトのような話で具体性がまるで無い。
私は苦しみながら死にゆく運命を変えられない。
ならばもう、これ以上苦しみたくない。
死ぬまでの間、出来るだけ無に近い存在として過ごし続けていきたい。
……きっとこれも自分に言い聞かせているだけなのだろう。
才能が無く、10年の努力が無意味に終わった事から、せめて学びや運命の偶然の一致を見出したいと。
だが実際のところとして、私は何者にも勝てなかったのだ。
運命の神に挑む度に敗れ、逃げ出し、死や破滅と謂う追手から息をひそめて、奴等の影が薄くなってからまた調子に乗って運命の神に喧嘩を売りに行って……その繰り返しの果てに。
私は両腕を捥がれたミイラとなって尚、神を恨む呪い人形として腐り続けている。