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接木  作者: 世良榎名無シ
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第6話【足跡】

今は、あれから1年が経った頃だろうか。

私はそれなりに人として生きている。

世間が何やら騒がしいものの、全て関係無い。

私は私の人生を生きている。

何も不満は無い。

唯一つ、

数十年後には死んでしまう事以外。





もう何も書く事が無い。

日々は幸福で、

苦しみも無く、

悩みも無い。

感性が鈍くなっただけなのかもしれない。

或いは、感情のエネルギーを失ったのだろうか。

情動……否、より原始的な衝動とでもいうべきか。

そういったものを稚拙に感じてしまう。

私には創作の才能が無かった。

創作を行わなければ生きていけない人間ではなかった。

ただそれだけの事だった。

欠けたものを感じる事すら無かった。

かつての友人が言っていた。

人は最も軽蔑する者の方向へと進んでゆく。

即ち、

無産でありながら、

人の生み出すモノへ文句ばかりつける。

創作の出来る者へ嫉妬し、憎悪する。

元から湧き出る泉とは言い難い、

我田引水の創作者紛いであると自己分析していたが、

今の私は泥の沼だ。

……否。

もう、誰かに文句を言う事すら面倒臭い。

「ただ何となく生きる」事以外何も出来なくなってしまった。

上を向いて口を開けているだけの、

無気力で、

無意味で、

無価値な……、

そんな人間に成り下がった。


これでまだ500字しか書けていないらしい。

虚無感が強い。

もう全て捨て去った筈なのに。

創る度に苦しみを覚えるが故に、

私は創作をやめたのかもしれない。

仕事は上手くやればそれだけで褒められるが、

ここでは褒められるのにも他人へ媚びる必要があるのだから。

人と話す事、

人と関わる事、

人に見られる事。

全てが苦痛でありながら、

書いたもの全てが褒められて欲しい。

……。





やめよう。

もう、やめたい。

だが、きっと書き続ける。

恐らくだが、今夜。

砂漠へもう一度、脚を着ける。

そんな生き方をしてきた私への罰なのだ。

創作一つ、まともにやめるも続けるも出来ないのは。





誰か、この半端者を早く殺してくれ。

昔ならばそう言いきってしまえたが……。

今はむしろ、仕事も創作も両立出来るだけの強い意志のエネルギーが欲しいのだ。

それが分かれただけ、私は人間として成長を果たしたのだと思いたい。



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