表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
接木  作者: 世良榎名無シ
1/7

第1話【油蕎麦】

不思議な体験だった。

出てきた油そば、初めに底を見た時は醤油色の液体が有った筈なのに、食べ進んでいる内に消えていき、最後には初めから其処に何も存在していなかったみたいに白い器の色しか存在していなかった。

味はカップ麺版の4乗くらい旨味の広がりと深さを感じた。分類的には醤油味なのだとは思うけれど、ラーメンや焼きそばとは全く別の種類の味わいを感じた。

ラーメンで近いのは豚骨醤油だろうか。しかし豚骨ほど臭みもクセも無い油の甘みが独自性として突出している。

焼きそばとは全く別物だ。醤油と油を混ぜればソース味になりそうなものだと関西人の私は思うのだが、これは全くソース味とは異なるベクトルの美味さだ。



最近の私は糖尿病になってしまった事もあってか、この油っこさはかなりキツかった。大分と腹を空かせる努力はしたが、それでも完食した時に久しく胃からくる重みで体幹が乱れる感覚を覚えてしまった程の「食い物酔い」を起こした。ティーンエイジャーの頃にこれを食えていれば……と悔しく、虚しく、悲しくなってしまった。

だが美味いものに罪は無いのだ。悪いのは歳を食ったら身体を崩してしまうような生き方をした私だ。

故にこそ包み隠さず言おう。

私は二度と珍々亭には行けない。

だが其処には若きラーメン通、つけ麺通達に新世界へのプロローグを垣間見せるモノが存在する。

さあ、油そばを知らぬ者達よ。この銀の扉の鍵は650円だ。

怯えるな、嘲るな、憤るな。

私はこれ以上先へ進めば肉体が腐り果ててしまうから、此処から君達の有様を傍観しようと思う。

後は任せたよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ