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女の男

作者: チャンドラ

「雨か......」

 私は横断歩道一人たたずんでいた。

 雲はどんより、雨は絶え間なく降り続き、私の暗く淀んでいる心を一層追い討ちをかけてくるようだった。

 私の名前は若宮愛佳わかみやあいか。高校二年生。

 容姿は背が低く、茶色の髪色でアーモンド型のパッチリとしたお目目でよく猫っぽいと揶揄される。

 本日、私は振られました。


 一年間付き合っていた彼から突然の解雇宣言(別れ話)。

「俺、好きな人ができたから別れてほしい。でも、愛佳と一年間過ごした日々は本当に楽しかった。忘れないよ......」

 なんだ? それは? 慰めのつもりなのだろうか?

 あわよくば、その人に告白をし、振られて後、ひらり蝶のように舞い戻るつもりなのだろうか。

 よし、殺虫剤を念のために買っておこう。


「はぁ......」

 思わず、元彼に対する憎悪の気持ちが溢れ出てきた。

 この邪悪な気持ちから恐らくはストーカーなり、犯罪者なりが誕生してしまうのであろう。

 おそろしやかなことである。

 一体全体何がダメだったのだろうか。

 私は今まで彼にこれでもかっってくらい尽くしてきた。


 彼が会いたいといったら、夜中であっても家から抜け出し、会いにいったし、デート代も全て私が払っていた。

 デート代を稼ぐために、某牛丼屋で年齢をうつわりバイトもしてきた。

 まぁ、ワンオペはさすがにきついと感じたが、彼の顔を思い出せば、どんな辛い時も頑張って乗り切ることができたのである。


 そんな事を考えているうちに雨は一段と強くなっていった。

 雷もなり始めた。ゴロゴロゴローン! という音が聞こえてきた。

 雷はキラキラ光る残像を残し、時間差でものすごい音量を生み出した。

「きれい......」

 思わず、そう呟いた。

 いっそのこと、私に雷を浴びせてほしい。

 彼と別れてしまった世界になど、意味などないのである。


 君にいない、世界など、夏やすみないの以下略。

 これ以上は歌詞の取り扱いっている会社に怒られそうな気がするからやめておくけど。


 兎にも角にも雷に浴びて逝かせてほしい。

 お願い私をイかせて......

「雷、落ちてこい」

「了解した」

 空中から吃った声が聞こえてきた。

 次の瞬間、あたりが眩い光で照らされた。


「うわ!」

 くらくらといった目眩に襲われた。

 私は地面へと倒れこんだ。


 目をゆっくりと開けると、目の前の大きな光の球体があった。

「よう、目が覚めたかい?」

「あ、あなたは一体?」

 球体はまるで私の脳内に語りかけてくるように話してきた。

「俺はお前らのところでいう宇宙人っていうのかな?さっき、あっこの裏山で暇つぶしに高圧性転換電流を発生さながら、適当に空中遊泳してたら、お前がこれ浴びたいって言うから浴びせてやったんだ」

 さらりと恐ろしい事を言ってのけた。

「こ、性転換電流!? つまり、私は男になるの?」

「ああ、そうだ」

 そうだもこうだもパンダもねぇよ。

 どうしてくれるんだ。

「い、今すぐ元に戻して!」

「おきにめさなかったか? しょうがない。さっきの電流を作るには1ヶ月くらい時間がかかるんだ」

 驚愕の事実を言いやがった。

「1ヶ月の間、どうすればいいの? 私、家にも行けないじゃない!」

「安心しな、これを見ろ」

 球体は謎の光を放った。光の自分の姿が映しだされた。

「変わってない......」

 自分の姿は雷を撃たれる前とほとんど変化はない。

「だろう? あくまでもさっきの電流は性転換をするにすぎない。姿はほとんど変わらないんだ。まぁ、ポコチンは生えただろうし、胸は引っ込んだだろうけどな。あははは」

 全くこの球体は悪びれた様子はない。

「つまり、このまま学校に通うしかないわけか......やだなぁ、風呂上がり全裸でいるのやめなきゃいけないじゃない。絶対、家族不思議に思うわ」

「まぁ、せいぜいばれないように頑張ってくれ。1ヶ月経過したらまた表れるから」

「ま、待って、あなたの名前は?」

「ペシムっていう。じゃあな。せいぜい頑張ってくれよ」


 そして、気づいたら私は、横断歩道の前で立ちぼうけしていた。

 さっきのは夢だったのだろうか? それにしてもはっきりしていた。

 試しに股間を触ると、生えていた。生えていた。

 大事な事なので二回言いました。


 その日、私は入浴後、バスタオルを巻いて出てきた。

 家族は怪しがったが、私は年頃の女の子だからと誤魔化した。

 次の日、家を出ると、うちの高校の制服をきた巨乳のパツキンの女性が待ち伏せをしていた。

 男になった影響だろうか。胸のところにばかり目がいく。

「よう、やっときたな!」

 その女性は私に対してフランクに話しかけてきた。

「あ、あなたは?」

「ペシムだ。面白そうだから私もお前と同じ高校に通う高校にした」

「はぁ!?」

「つうわけでよろしくな! 行こうぜ! そういえば、まだ名前聞いてなかったな?」

「若宮愛佳」

「そうかそうか! よろしく、愛佳くん!」

 ペシムは肩を組んできた。

 距離が一気に縮まるのと、いい匂うのする香水の香りに思わずドキリとした。

 やれやれ、これは波乱の学生生活になりそうな気がするなぁ。








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― 新着の感想 ―
[一言] これはおもしろい
2018/02/11 19:21 退会済み
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