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サキュバスvs魔法少女




 女性は魔法少女に変わった貴志を見て驚愕していた。

《ば、馬鹿な!? 魔法少女の因子は確かに滅ぼしたはず──》

 一方、その『魔法少女』に変わってしまった貴志は頭の中が真っ白になっていた。

「なんで私、こんな姿になってるの? それに──」

 貴志が気になったのは見た目だけでなくその話し方だ。明らかに女性のそれだ。

《なぜだ? なぜ魔法少女になれた?》

 と、女性が貴志に訊いた。が、答えられるはずがなかった。

「わ、私のほうが聞きたいくらいだわ!」

《ふん、まあいい。 倒せばいいのみだ》

 そう言うと、女性は自分を包み込むように両手を交差させた。そして、元に戻すと先ほどまでとは打って変わり醜い姿に変貌を遂げた。

「へ、変身した!? なんなのあれ?」


「私が教えてあげるわ!」


 と、どこからか声がした。しかも、それは貴志の聞き馴染みの声だ。

「み、水野!?」

 気付けば、貴志の隣に久子がいた。

「水野久子はこの世界での仮の姿、そして──」

 そう言うと、久子の姿が徐々に変わりはじめた。間もなくしてネコの姿に変わった。

「これが私の真の姿──」

「ネ、ネコッ!?」

 貴志は驚いた。ネコは貴志のほうへ向き直り言った。

「三輪貴志くん、この姿で会うのは初めてね。 私の名前はマリーナ、あなたにお願いしたいことがあるの」

「お、お願い? それにマリーナって──」

「悪魔ハンターとして悪魔たちを捕まえてほしいの」

 それは突拍子のない頼みだった。貴志は一瞬ポカンとしてしまう。

「悪魔ハンター? なにそれ?」

「悪魔ハンターというのはその名の通り悪魔を捕まえるハンターのことよ。 悪さをする悪魔たちを捕まえてほしいの」

「ちょ、ちょっと待って! 悪魔なんているわけないじゃない!」

「いるわ。 あそこにいるのが悪魔よ」

 マリーナは女性のほうに顔を向けた。

「奴が悪魔よ、名前はサキュバス」

「サキュバス?」

「男性を女性に変えてしまう悪魔よ」

「男性を女性に?」

「それに、ただ性別を変えるだけじゃなく特殊能力者にもしてしまうみたいね。 非常に厄介だわ」

「そ、そんなの相手にするなんて、できるわけないじゃない!」

 すると、マリーナは微笑んだ。

「ええ、確かに一般人には無理ね。 だから、そのために三輪くんはその姿になったのよ」

「え、どういうこと?」

「今の三輪くんが纏っているのは異次元の力、それが具現化したものなの」

「この格好が?」

「そう、そしてそれは悪魔の攻撃から身を守ってくれる盾にもなる」

《おしゃべりはおしまいだ》

 と、サキュバスは自身の尻尾を伸ばし貴志とマリーナに攻撃を仕掛ける。

「うわッ!」

 貴志は間一髪のところで攻撃をかわすが、マリーナはその尻尾に捕らえられてしまった。

「マリーナッ!!」

「だ、大丈夫よ……。 それよりもサキュバスを捕まえて……」

《おしゃべりはおしまいだと言ったはずだ》

 サキュバスが言うと尻尾がキツく締まりマリーナを苦しめた。

「あああああ!」

「マリーナッ!!」

「おね……がい……」

 サキュバスは一頻りマリーナを苦しめると放り投げる。マリーナはそのまま意識を失ってしまった。

《かつての女戦士も今では無様なものだな、笑わせてくれる》

「よくも、よくも水野を……ううん、よくもマリーナをッ!!」

 その言葉とともにステッキが光を放った。

「これは……」

《やめろおおおおお!! 光を向けるなあああああ!!》

 眩い光にサキュバスは目を覆う。

「なにか、言葉が浮かんでくる……。 えと、《悪魔浄霊デーモン・プリフィケーション》?」

 すると、徐々にサキュバスの体が透けはじめた。

《やめろおおおおお!!》

「《人熊化テディベア》!」

 と、どこからともなく等身大のテディベアが現れた。あれは恐らく少女によって人がテディベアに変えられたものなのだろう。テディベアは貴志に抱きつく。貴志は見動きが取れなくなってしまった。透けていたサキュバスの体も元に戻ってしまう。。

「サキュバスをイジメないで!」

 少女は言った。目には涙を浮かべている。

「違う、イジメてるんじゃないの! あなたを助けたいだけなの!」

「嘘! そんなの全部嘘よ!」

「嘘じゃないわ! 私は本当にあなたを助けたいの!」

「嘘……、嘘に決まってる……」

《騙されるな、奴はそなたを唆そうとしている》

 サキュバスは少女に囁く。

「そう、そうだよね、サキュバス……」

 少女が納得しそうになるのを貴志は遮る。

「あなたを唆そうとしているのはサキュバスなの! お願い、信じて!」

《黙れッ!! この娘をどう利用しようが私の勝手だ!!》

「利用──?」

 少女は耳を疑った。サキュバスが私を利用している?そんな、ありえない。

「利用、それがあなたの魂胆なのね?」

《そうさ、力のない人間などただの奴隷にすぎない。 利用されるだけありがたいと思え》

「人間のことをそう見ているなんて醜いわ」

《ふふふ、どう思おうが貴様の勝手だ。 私はこの娘を利用してこの世界を──》

 と、貴志に抱きついていたはずのテディベアが今度はサキュバスに抱きついた。

《な、なにを!? なにをするんだ、娘!!》

「サキュバス、私はあなたの奴隷なんかじゃないわ」

《さ、先ほど言ったのは奴を怒らせるための戯れ言だ。 決して真実などでは──》

「私にはあれが嘘とは思えない」

 少女は覚悟を決めた目で貴志のほうを見た。

「お願い! サキュバスを止めて!!」

「わ、分かったわ!」

 貴志は圧倒された感じに答えた。

「《悪魔浄霊デーモン・プリフィケーション》!」

 再び、サキュバスの体が透けはじめる。

《わ、私が……、こんな小娘に負けるとは……。 ちくしょおおおおおッ!!》

 その言葉を最後にサキュバスの姿は跡形もなく消え去った。それと同時に少女の姿はなくなり、代わりにあったのは藤村の姿であった。

「──お、俺は一体なにを──」

 藤村は何事もなかったかのようにその場を去っていった。



 * * *



「大丈夫、マリーナ!?」

 貴志は倒れたままのマリーナに声をかけた。すると、マリーナは意識を取り戻した。

「んん……、まあ、なんとかね……」

「よかった……」

 貴志は一息ついた。

「サキュバスを倒したのね?」

「え? ま、まあ、なんとか」

「それはよかったわ」

「ねえ、悪魔ハンターって一体なに? 悪魔ってなんなの? それに、なんで私はあの姿になったの?」

 貴志の訊きたいことは山ほどあった。

「落ち着いて、それはあとですべて説明するわ。 それよりも──」

 と、マリーナは体を起こした。

「三輪くんの家にお邪魔してもいいかしら?」

「え?」

「さっきも言ったと思うけど、水野久子はこの世界での仮の姿なの。 つまり、本来ならこの世界には存在しないものというわけ」

「それって──」

「要するに、この世界で私が家と呼べる場所が存在しないの」

「ちょっと待って! じゃあ、なんで学校に通えてるの?」

「そこは魔法を使ったわ。 戸籍を作るなんて朝飯前よ」

「どうしてそこまでして?」

「あなたに──三輪くんに会うためよ」

「え?」

「これは、三輪くんがした最後の質問に関係しているわ。 なぜあの姿になったか、それは三輪くんが魔法少女の因子を持っていたからなの」

「魔法少女の、因子?」

「三輪くんが魔法少女たりうる素質を持っていた、それで私は会いにきたの」

「私に素質なんて──」

「あったから変身できたのよ、胸を張っていいわ。 で、さっきの答えを聞かせてほしいのだけど──」

「──いいよ、まだまだ分からないこともあるし」

「そうこなくっちゃ!」

 マリーナは喜んだ。

「あ、そうそう! 変身の解き方だけど、戻りたいと念じれば戻れるわ」

「分かった」

 貴志はさっそくそう念じてみる。すると、一瞬にして元の男の姿に戻った。

「ふぅ」

「ビックリした?」

 マリーナが訊いてきた。

「なにが?」

「水野久子の正体がネコだったってこと」

「──まあ、冷静に考えたらワケ分かんねえけど、世界には不思議なことばっかあるんだろうなって考えたらそうでもねえし、よく分かんねえよ」

「三輪くんって意外と理論的なのね?」

「『意外と』は余計だ!」

 貴志は思わずツッコんだ。

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