58話
そんなこんなで氷の大地に陣ができ、使用済み魔石が予定量集まった頃、呪いの宝石の回収がほぼ終わったレーコとケーゴが帰ってきた。
氷の大地にはレーコの設計通りジュンイチが氷の神殿をせっせと作り上げ、ほぼ外壁が整った後でケーゴがさくっと内装を作り上げた。
神殿中央には2つの台座がおかれ、その後ろには魔石を置くテーブルが作成されている。氷でできた神殿であるので内部にまで明かりは届くが、多少暗いので魔道具の証明が補っている。
準備は終わった。ここには、勇者5人とソフィア姫、魔王の核を取り出す係のアルフレッドだけである。もし問題があればアルフレッドだけが魔法陣で帰り、戦闘準備を開始せねばならない。まあ勇者が負けてしまった場合は世界の滅亡は決まってしまうのだが、一応抗うつもりである。
「みんな、準備はいい?じゃあ、アルフレッド、やっちゃって」
アルフレッドは台座の傍へ行くと、2個の封印の壺からそれぞれ魔王の核を取り出し、台座に置いた。その場から直ぐ避難すると、レーコは台座の上につるしてある魔石の粉を風魔法でそれぞれの玉に振りかけた。
2個の核は、明滅し始める。
ばらばらだったものが少しずつ同調し始めると、徐々に融合し始めた。
後ろの魔石を吸収し始めると黒い靄がその周囲を漂い始め、徐々に大きくなってきた。
そして、すこしずつ人型に収束しだすのであった・・・
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『・・・こうして、思考することが出来るのも久しぶりである。・・それにしても、以前よりは力がみなぎっている』
魔王はしゃべり出した。
「うん?おすなよ、おすなって!あー、こんにちは、ジュンイチと言いますが、魔王様ですか?」
『・・魔王?わしのことか?・・今はそう呼ばれているのだな。・・わしは、元の世界では不死王、サマルカンドと呼ばれておった。・・』
「では不死王様とお呼びすればいいですか?」
『・・どの様に呼んでも構わん。・・それで、今はいつの頃なのか?・・』
「あなたがこの地へ来てから、約5千年経った様です。現在いるところは、あなたが最初に来たところと一緒だと思います」
『・・そうか・・』
「それであなたの力は戻ったと思うんですが、これからどうされますか?」
『わしは・・この地へ追放されたのだ。・・復讐せねばならん。・・』
「では、帰られますか?」
『・・うむ、今なら帰れよう。・・お前たちには世話になった様だ。・・何か望むものはあるか?・・いまなら1つ位はかなえることができそうだ・・』
「・・・では、1つだけ。今度この地にもし来ることがあれば、人と仲良くなる様にしてください。他人を傷つけることがない様、約束してください」
『ふむ。・・・この地を踏んでから憎悪にまみれ、非道なことをしつくしていた様だ。謝罪したとしても償いきれないだろうが、今後もしまたこの地に訪れることがあれば、お前たちの願い通り、もはや他のものを傷つけることもせぬだろう・・・』
『それでは下がっておいてくれ』
その言葉を聞いた後、ジュンイチ達は神殿から外へ出た。
念のためケーゴの土壁でガードし、レーコの結界を張った。
「ご、ご、ご、ご、ご」
地鳴りがし、神殿内が明滅する。そして乾いた音が確かにした後、周囲に静寂がやってきた。
「終わったのかな?」
「フラグ立てんな」
「でも、終わったと思うよ?」
「ユーマ、斥侯行け」
「うーん、いやだな」
押し付けあいながら、最後にはみんなで神殿に向かった。
内部は、特に荒れたところもなく、何一つ変わったところはなかった。
そして、魔王はいなくなった・・・
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神殿は残しておくこととした。
そこは、聖地として奉ることとなったのである。神殿の他にもいろいろな建物を作成し、神殿内部にはこの国の”神”の像を作成した。それまでは宗教などなかった世界であったが、この時初めて”神”への信仰が始まった。
アルフレッドはその後帝国に帰り、国を治める方策の再検討をし始めた。魔石収集の為経済負担がかかったので、早期立て直しが必要だったからだ。宰相にはアンデがなり、甲斐甲斐しくそばで働くこととなった。ジー・サマーは魔法大臣となり、魔法学校を作成し、後に校長に収まった。スターは改名後、南の地方の領主となり、残存するモンスターをテイムして、周囲の開墾に勤しんだ。
ユーマは王国に残ることにしたらしい。ソフィアとうまくやっていくそうだ。レーコとケーゴもこの世界に残ることとしたそうだ。王城での役職を勧められたが、名誉職だけもらい、各地で遊ぶそうだ。主に温泉めぐりを楽しむらしい。
スージーはジェイムズとうまくやったらしい。風のうわさで聞いた。ちなみに加齢の呪いは、レーコ作の魔道具で若返りをさせてもらい、22歳の年齢通りの容姿に戻ったらしい。ちなみに異世界の門も新しく作成しなおし、自分の力と体で作成していた元門番の女王は王城へ戻ることが出来た。王は感涙していたが、ひっひっひの癖が残ってしまったようだ。
そして、僕は・・・
「ほんとーに、あんたは、親に心配をかけて、いままでどこにいってたのー!」
怒られていた。
異世界からたくさんのお土産を持って帰ったが、やはり効果は少ないようだ。
まあ、1年ちょっと離れていたから当たり前と言えば当たり前なのだが。
ちなみに、高校は留年した。リョウは時々顔をつないでいた為進級できたそうだ。
ということで、来年から同学年である。怒られているのだが、少し顔がにやけそうになるのを必死に抑えている。
こうして、僕らの冒険は、終わったのであーるー・・・




