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僕らの冒険1  作者: じっつぁま
第九章 物語の終盤
55/59

55話



「あー、CQCQ、こちらJS、RAどうぞー」


『こちらRA、状況はどうですか?』


「こちらJS、現在変わりなし、オーバー」


『こちらRA、了解、オーバー』


暇なので大佐ごっこをするジュンイチである。

あれから帝都にたどり着き、城壁の外から1時間ごとに上空へ舞い上がり、帝国の城を監視するジュンイチであった。今晩は徹夜である。何日監視をしないといけないのか、先は長いなぁと思うと憂鬱になって来るのであった。


リョウは今晩は付き合ってくれる様だ。たださっきの返事は少し眠そうだった。いつまで起きていてくれるか分からない。ジュンイチにとって、長い夜が過ぎるのであった。


少しずつ夜が白み始めた。そろそろまた監視をしないといけない。精神的に疲れを感じ初めていたが、空へ舞い上がった。すると、城に変化が感じられた。正門でなく、後門から4頭だての馬車が4台出て来たのだ。


馬車はそれぞれかなり不自然な荷を引いている。そして東西南北の4方向に散らばって行った。


「CQCQ、リョウさーん、目標発見。応答お願いしまーす」


『こちらリョウです、どうしました?』


「4台の馬車が、4方向に向かっています。どうしましょうか?」


『こちらリョウです。とりあえず南の馬車から調べて下さい』


「了解」


ジュンイチは南に向かう馬車を目指すこととなった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「これも予想通りね」


「そうじゃのぅ」


「それでは東がユーマ、西が私とケーゴ、北がリョウと言うことで」


「「「ラジャー」」」


それぞれが決めた通り、動き出すのであった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



南に向かった馬車を追いかけるジュンイチ、御者は門番に何か手紙を見せ、積み荷を検索されることなく門を出て行く。

襲撃するには人目がつかなくなる場所まで待たなくてはならない。


馬車が林に差し掛かったところで、ジュンイチは攻撃を開始した。氷の苦無を作り出し、馬と馬車の繋ぎ目を狙う。


「しゅしゅしゅしゅ・・・・」


8本の苦無で正確に狙い、4匹の馬を馬車から解放した。

徐々にスピードを緩める馬車。

御者は僕の方を見つめる。

バンダルだ。

確認すると同時に、僕はバンダルを凍らせた。


バンダルは産み出された魔族である。ジーとスターに聞いて、知っている。

僕は氷の長剣を作り出し、真っ二つにバンダルを引き裂いた。バンダルには、良いバンダルもいるのだろうか?少しだけ心が痛むジュンイチであった。


積み荷を確認したが、中には何も入っていなかった。


「はずれだな」


ジュンイチはつぶやき、空に舞った。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



結局東も西もリョウが対応した北の馬車にも、積み荷の中は空っぽであった。

ユーマとレーコ達はリョウの元へ集合する。

もちろんジュンイチも向かった。


「どうなってんの?」


「予想通りよ。ただ、いい予想じゃあないのよね」


「おそらく城で、魔王が復活することになるだろう」


「ユーマはソフィアを連れて来て、最終決戦よ」


ジュンイチ達は、復活するであろう魔王と、帝都で対決することになったのである。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「2号と連絡が取れません。3号ともです。4号5号とも連絡が取れなくなりました」


バンダル1号が報告した。


「予想通りだな」


「既に勇者が取り囲んでいるということね」


「アンデはどうするのだ?道連れになる必要はないぞ?」


「知れたこと、戦うわ」


「勝機はないぞ?」


「それでも他に道はないの」


「・・・済まないな」


「謝る必要はないわ。私が決めたことだもの」


そう言って、アンデは魔王の間から出て行った。


「馬鹿なやつだ」


アルフレッドは、魔王の核を手に持ちながらつぶやいた。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



ジュンイチ達は帝都北門の外で待機していた。中に乗り込んで行くといろいろ面倒なので、ことが起きてから対処をすることとしたのだ。


ただ待つのも退屈なので、せっかくだから朝食にすることとした。ケーゴ作土テーブルに皆が座り、ケーゴ作皿をケーゴ作ナイフとフォークで叩き、ごはんごはんーと騒いでいる。その横でうるさいなーとおもいつつ、ジュンイチはスープを煮込んでいた。


「うるさいなー、もうできるから待てよ」


「早くしないと敵が来ちゃうよ」


「そうじゃそうじゃ」


スープは乾燥肉と少々の野菜を味付けした簡単なものだったが、それでもできるのに15分位はかかっていた。


「はい!できました。乾パンとスープを配って!」


「なんじゃ、少ないのぅ」


「俺はこれじゃあ満足できないぜ」


「文句があるなら食うなー」


わいわい騒ぎながら、食事を始める一同。そこへ北の門から女性がゆっくり近づいてきた。


「ジー・サマー、チェリー、久しぶりね?」


「スープお代わりじゃ!」「俺もお代わり!」


「・・・」


食事に夢中で女性に反応しない一同だった。


「くっ、このー、こっちを向きやがれー!」


そういうと、女性は杖を振り上げ、呪文を詠唱しだした。


「・・・うるさいなー」


ジュンイチはまだ食べかけなので、女性の杖を苦無で割ってしまった。

唖然とする女性、詠唱は途中でやめざるを得なかった。


「アル様にもらった杖なのにー、どうしてくれるのよー」


「おお、久しぶりじゃなアンデ、なんじゃ杖が壊れたのか?」


「おー、おばさん、久しぶりだぜー」


「・・・ごめんごめん、寝不足でちょっとイラッとしたもんで、つい壊しちゃった。本当にごめんねー」


崩れ落ちるアンデであった。後ろからユーマが近づき隷属の首輪をすっとかけ、


「あー、お嬢さん、杖なら直せるから元気出しなよ」


といって、杖をケーゴに渡す。ケーゴは無言で受け取り、すぐ直した。その杖を帰したとたん、


「ほおっほっほっほー、私に杖を帰すとはとんだ甘ちゃんの勇者ね。私のアンデッド軍団を舐めるんじゃないわよー」


また詠唱を始めるアンデであった。


「あー、お嬢さん。首輪をつけちゃったから、しばらくは巨大魔法はつかえないよ?」


「へ?えーーー?」


再び蹲ったアンデであった。


「お腹空いたんでしょ?スープ飲む?」


「おお、そうじゃアンデよ。割といけるスープじゃぞ」


朝食のお誘いを受けるアンデであった・・・



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



席に座らせられ、スープを飲む様促されるアンデであった。


「それで、アルフレッド帝王はどうするつもりなの?」


「もう魔王復活が止められないので、最後の時までその部屋にいるつもりみたいなの」


それから、アンデは少しずつアルフレッドの話をしだした。


アルフレッドは元々この国の南に位置する小さい村の出身であったが、モンスターの襲撃に会い村は全滅した。その後、南の砦までたどり着き剣の技を磨いたらしい。

モンスターへの復讐、殲滅を誓い、氷の大地までモンスターを討伐して行くうちに、悪素を身にまとい過ぎたらしい。通常の人間ならば精神が歪んでしまうところだが、アルフレッドは悪意をモンスターに向けることでますます討伐するようになったらしい。


襲撃がひどい日に氷の大地までモンスター討伐をした時、偶然魔王の核を発見したらしい。切っても切っても減らないモンスターであったが、魔王の核と魔石の関係に気づくと恐ろしい計画を思いついた。それは魔王をわざと蘇らせ、悪素とともに異世界へ帰ってもらうというものだった。魔王が必要とする魔素がどのくらい必要なのかは分からなかったが、魔素がなくとも人間は生きて行ける。逆にモンスターは魔素や悪素がなければ生まれてこない。この世のモンスターを全滅させるために魔王を復活させることにしたのだ。


アンデはアンデッドマスターの素質があるため、忌み嫌われていたところを救い、モンスターテイムが出来るチェリーと(スターだ!)転移魔法陣ができ、魔石に詳しいジー・サマーを仲間にして計画を練ったのだ。


全てのモンスターの魔石を魔王に与え、復活させた魔王に高位魔導師の魔素を取り込ませ、異界へ帰ってもらうことにしたという。多くの犠牲者が出るかもしれないが、少なくとも帝国の人々を救うことが出来ると考えたのであった。


「うーん、でも人類全滅しないと魔王が必要とする魔素は足りないと思うよ?計画倒れだねー」


「そうなんですか?」


「うん、私たちの世界の計算機を使ってみたんだけど、ほぼこの世界の魔素全て使用しなければ魔王が必要とする魔素は補えないのよね」


「・・・アル様は、結局無駄なことをしていたんですね」


「いや、そこまで無駄でもないよ。まだ犠牲者は皆無だし」


「・・・アル様を止めて頂けますでしょうか?」


「うん、そのつもりだし」


そういうことで、勇者一行は最終決戦に臨むこととなったのであーるー・・・




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