53話
ジュンイチは空を飛ぶ
東の町を防衛した直後、見計らった様にレーコから指令が来た。王城へ帰れと。
なんか忙しくなったなと思いながら、リョウと共に王城へ帰ると今度はケーゴを連れてオランへ向かえと命令された。
「なんでだよ!理由をせつめいしr」
「西の帝国が挙兵したらしいの。道を閉鎖すれば引き返すと思うからケーゴを連れて行って、よろしく。あっ、リョウはこのまま城へいていいからねー」
言葉を重ねられ、早口で説明され、あまり理由が分からなかったがケーゴと2人残されたジュンイチだった。
「・・・重いけど、大丈夫か?」
「道中重くなるなよ?」
そういう訳で(どういう訳?)現在ケーゴを乗せ、オランの町へ向かっているジュンイチであった。
ワイバーンやドラゴンをテイムできたり、飛行船や飛行機を作ればいいのになどとぶつぶつつぶやくジュンイチであった。しかし、現実、飛行機はともかくドラゴンより飛行速度は速いジュンイチなのである。アッシーとしては申し分ないのであった。
さすがに途中数回の休みはとり(休憩中はケーゴに警護を任せた)、数日でオランに着いた。オランと西の帝国の間には高い山脈が連なり、その谷間にある1つの道を塞げば、交通は遮断できる様だ。さっそくそこの場所へ行き、山脈より高い土壁で、道を塞いだケーゴであった。
*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*
「た、た、た、大変でーす、たいちょー、大変でーす、道がありませーん」
5万の先兵を預かる隊長の元に、伝令が急いで帰ってきた。
「落ち着け!どうしたんだ。きちんと報告しろ!」
「大変です隊長!この先道がありません!」
「昔からある道沿いだ!間違えるはずがない!」
「でも、確かに道がなくなっているんです。道の先は山になっています」
「そんなことがあるかー」
隊長が斥候兵に連れられて、無くなっている道の場所に来ると、そこには立派な山があった。
「なんじゃこりゃー」
隊長の声がこだましたのであった・・・
結局5万の軍隊は足止めを食らい、帝都に向けて帰ることとなった。
帝王に状況を報告し、進軍を取り止める様進言したのであった。
「・・・うむ、ご苦労であった。兵は一時解散させよ」
「はっ」
「わしは一時奥に引っ込む。少し考え事をするので、誰も入れぬ様」
「はっ」
そういうとアルフレッドはいつもの円卓に向かった。
「そっちも失敗だった様ね、私もやられたわ」
「・・・」
「これからどうするか、考えはある?」
「・・・今はない。しかし、今回の遠征直後に魔王を出現させる予定だったので、もはや復活を止める手はない」
「魔王だけ王国に持っていくしかないんじゃない?」
「そうだな、今のままでは帝国が滅びる。移動方法を検討しよう」
巨大な魔王の塊を、どうやって王国まで運ぶか検討を始める謎の組織であった。
*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*
「帝国の情報はどうやって調べたの?」
「ジーやスターが、つぶやきを拾ったんだって」
「誰の?」
「謎の組織ってやつがあって、それのリーダーが帝王アルフレッド、その側近のアンデッドマスター、アンデという女性がいて、よくぶつぶつ文句を言うんだって。それで、時折アルならこうするかもねーって呟いていたんだって」
「よく時期まで分かったね?」
「アンデッドを襲撃させたストーリーでは、挟撃で帝国の兵士を向かわせるはずだって言ってたわ」
ケーゴを城まで連れて帰ったジュンイチはリョウと雑談していた。その時、気になったことを聞いてみたのである。
「この後は?どうなるのかな?」
「そこまでは聞いてないの」
「ほーっほっほっほ、その後はわたくしが説明いたしますわぁ」
「「・・・」」
「えー、そこはつっこんできてよー」
レーコが部屋に入ってきて、悪の女王の真似をしたが、突っ込み切れなかったジュンイチ達であった。
「こほん、説明するから会議室に集合して。今、皆を呼んでいるところだから」
そして、会議室に勇者5人に王族2人、ジーとスターが集合した。
「それでは最終局面に入りましたので、今後の方針説明会を開きまーす」
「まずはわしから説明をするぞ。恐らく魔王の復活は近いものと予想される。これはギルドを通し、魔石の流通量を調べた結果なので信憑性は高いと思われる。今回の西の大陸での出来事は、復活が早まったから起こしたことじゃと考えられる。そして、東の王国へ魔王を運ぶ手段を検討していることじゃろう。
そもそもアルフレッドは魔王復活により、悪素を回収させ、モンスター出現をなくさせようとしていたのじゃ。東の王国には高位魔術師が多いので、東の王国だけ暴れさせれば魔王はいなくなるものと考えておるのじゃ。
レーベまでの道が閉ざされた今、取るべき行動は1つ、海路と考えられる」
「次は俺が説明するぜ。テイムしたスライムは悪素を魔石ごと分解することが出来るようになった。もちろん、人や動物を襲うこともなくなったぜ。ただ、魔王に直接ぶつけるには最弱だから、攻撃が出来ないようにしなけりゃいけないんだぜ」
「ここで、2つの提案があります。1つは帝国にそのまま乗り込む方法、もう1つは海路の予想を立て、待ち受ける方法です。ただ、待ち受けるには何か所かの場所を予想しなければならず、乗り込んだ方が確実です」
「わしを連れて行ってくれれば、魔法陣が作れる。お勧めはそちらじゃな」
「魔王の塊は、巨大だと思いますので、移動するにも大変でしょう。その前に帝国へ魔法陣を設置し、魔王の塊をスライムで砕きます」
「せんせーい、しつもーん」
「はい、ジュンイチ君」
「魔王が復活したら、どうするんですか?」
「いい質問ですね。その答えはあなたが帰ってきてから答えます」
・・・やっぱりレーコはうざかった。
そういうことで、じじーを連れて、帝国に向かうジュンイチであった・・・




