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僕らの冒険1  作者: じっつぁま
第九章 物語の終盤
52/59

52話



「それでは、全軍しゅっぱーつ」


東の町でアンデッドが出現してから1か月後、スカイオーク帝国は東に向けて兵士5万を出撃させた。目的は東の地方のモンスター討伐が表向きの理由である。

しかし、隊長達には東の町を属国にする旨が伝えられていた。その為、後方部隊として更に5万の兵士も控えさせているのだ。


まずはオランに進軍し、その町を併合した後、レーベを吸収するのが目標だ。山町や東の町は余裕があれば進軍を考慮するし、また放置するとしてもあまり産業として目立つものもないため問題はない。脅威なのは南の砦であるがオランとレーベを押さえてしまえば、兵糧攻めとなるため時間を掛ければ大丈夫である。


季節は春も終わりを迎えるころ、物語の終盤は動き始めた。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「はー、いーいゆっだっなーっとぉ」


「ジュンイチー、城から連絡が来ているわよー」


今日は休日指定日である。朝から温泉につかっているジュンイチであった。最近は暑くなってきたので、朝風呂の方が気持ちいいのだ。


「はーい、今あがりまーす」


リョウの言うことにはすぐ反応するジュンイチだった。


「それで、今日の報告は何?」


「なんでも、東の町を救え、だそうよ」


レーコ作遠距離伝言板をのぞき込む二人であった。この世界にスマホはまだ作成できず、携帯電話も電波の範囲があまり遠くには届かないため、レーコの知識とケーゴの創作で”双子の板”を作り上げたのだ。片方が曲がればもう一方も同じように曲がる粘土を作り上げ、遠距離の伝言ができるようにしたものである。


「東の町って、今話題のアンデッド?」


「そうみたいね。まあ、そろそろ討伐に行こうと思っていたから丁度いいかもね?」


東の町へのアンデッド襲撃は、当初すぐ収まるものとみられていた。砦からの兵士も続々集結し、最初に襲撃していたスケルトンなどは数日で駆逐されたからだ。しかし、その後も続々現れ、アンデッドであるので夜間も関係なく戦いは続いた。徐々に兵士に疲労が見られ、ついに山町のギルドにも依頼が来たのであった。


「でも、なんでレーコが指令を出すんだろう?」


「さあね?分かんないね?」


理由はともあれ、東の町へ討伐に行くことは決定していたので、支度を整え戦いに行くのであった。



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「くそ、数体そっちに向かったぞ」


「ちくしょう、こいつら復活しやがった」


現場は混乱を極めていた。アンデッドの厄介なところはその急所を破壊しない限り復活することであった。疲れも見せず痛みも感じないため、生半可な攻撃では反撃が必須である。現在3交代としている砦部隊であったが、1か月の間で半数が攻撃に参加できなくなり、徐々に追い詰められていた。


「そりゃー、せいせいせい、てやー」


その中においても未だ勢いの衰えない武将がいた。リューユである。流石に将軍は砦を守らなければならないため、副将軍が兵士を率いてきたのだ。ジュンイチに教えてもらった双剣は、この戦いでは非常に役に立っていた。防御力はさほど高くないアンデッドであるので数を倒す方が都合よく、両手の片手剣でどんどん相手の数を削って行くリューユであった。もちろん急所は破壊してあるので、リューユの周囲だけ、数は減ってきていた。


「みんな、頑張れ、今巻き返してきているぞ!もう少しの辛抱だぁ」


兵士を鼓舞するリューユ、しかし、現状は徐々に包囲網が強くなっているのは自覚していた。


「副将ぐーん、撤退の合図でーす」


「よーし、みんなー、いったんたいきゃーく!」


数時間の戦闘を終え、兵士に退却の合図を送る。


「俺が殿を務める。みんな防壁内へ帰るのだー!」


全ての兵士を退却させるまで、孤軍奮闘するリューユであった。


「それ、それ、それー、はっはっはっ、ぜいぜい」


流石に多勢に無勢であった。もう少しで残りの数人が門を抜ける。それまで持たさねばならないが、殿での攻防は実力の閾値を超えていた。今回で、俺の命もおわりか?と思ったとき、ふぅっと空に体が浮いた。


「あー、こんばんはー、リューユ様。お久しぶりです、ジュンイチです」


「・・・ジュンイチ殿?おー、助かったぞジュンイチ殿ー」


「みんな防壁内に入りましたかねー?」


「おお、とりあえず、今回出撃した兵士はみな防壁内へ退却した。外へ出ている兵士は居らんはずだ」


「了解。リョウー、やっちゃってー」


「はーーい」


「どーーん」


ジュンイチが空に舞ったころ、リョウのレイピアから炎竜が打ち出される。

炎竜は町門を攻めていたアンデッド一群を舐めて行ったあと、防壁に群がるのも全て燃やし尽くし、2・3週町を回ってからレイピアへと帰った。


「よいしょっと、あー周囲の火災を鎮火しないとねー」


リューユを防壁上に降ろし、炎竜の余波で燃えた周囲の火災をさっさと鎮火して行くジュンイチであった。


「こんばんはー」


「えーと、あなたはジュンイチの友人殿ですか?」


「はい、親友のリョウといいます。宜しくお願いします」


「これはこれは、私は砦の副将軍リューユと云います。よくお見知りおきを」


挨拶を交わすリョウとリューユであった。


「こらしょっと。あー、リョウまだ攻撃できる?向こうまでアンデッドが続いているから、ついでに殲滅しとこうか?」


「うん、まだまだいけるよー」


「じゃあ、やっつけとこう。リューユ様、それじゃあまたあとで」


「おっ、おう、あまり無茶をしないようになー」


ジュンイチはリョウを背負うと、海まで続いてるアンデッドの群れに向かった。

アンデッドの列はリョウの攻撃で殲滅された。しかし、海からまだぞくぞく群れはやってくるようだ。


「じゃあ、海を割るから、現れたアンデッドをよろしくね。海よわれろー」


「どーん」


続いて、海の水を割り、現れたアンデッドを燃やしてゆく2人であった。

結局サンドラまで続いていた群れを全て殲滅したジュンイチペアであった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「ちょっと何あれ?聞いてないわよー」


サンドラの周囲でアンデッドへ指令を送っていた女は、遠くから海を割り、アンデッドを駆逐してくる炎竜を見つけ、驚愕の叫びをあげた。


サンドラの町より南側では、大昔の対戦の影響で数万の骸骨が埋まっている。その為、アンデッドの生産には事欠かなかった。ここ1か月の間、休み休みアンデッドを生産・従属化させ、せっせと西大陸へ送り込んでいたところであった。


徐々に炎竜が近づいてくるのを脅威に感じ、女はワイバーンに乗り避難することとした。


「ちょっとちょっと、まさか追いかけてこないわよねー」


こうして、またジュンイチは謎の組織の陰謀を、その気がないのに阻止することとなったのであーるー・・・




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