50話
「そうですか、スザンヌはその様にしておりましたか」
王城へ帰って話す間もなかったので、ジュンイチはようやくソフィアにスージーの話を伝えた。
「ジュンイチ様、ありがとうございました。その内スザンヌの元へ行こうと思います」
「俺が連れて行ってあげるさ」
「ありがとうございます、ユーマ//。これから父様にも報告してきます」
そう言ってソフィアはユーマと出て行った。
「ところで、これからどうしようか?砦南部には、もうレベ上げできそうなモンスターがいなかったんだけど」
「多分、もうレベ上げする必要はないわ」
「その心は?」
「・・・ふふ、秘密・・・」
レーコうぜー。
「じゃあどうするんだよ!」
「後はジュンイチ、しばらく好きにしていていいわよ」
えっ!いきなり放置プレイですか?
急にする事のなくなったジュンイチであった。
「リ、リョウはどうするの?」
「・・・私はしばらく暇かな?」
「じ、じゃあ一緒にどっか行こうか?」
「ふふ、いいわよ」
やたっ。心の中で叫ぶジュンイチであった。
旅行計画を練らなければなるまい。あそこに行ってあれを食べ、あそこの温泉にも行かなくては、などと構想を練るジュンイチであった。
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アルフレッド・ルーン・スカイオークは西大陸帝国の帝王である。
彼は一代にして、スカイオーク共和国を巨大な帝国にした英雄である。共和国の前王時代に将軍まで登り詰めた彼は、高齢で後継者のいなかった前王の遺言で王と成や否や、武力を重んじ、周辺国家を併合していったのであった。
しかし、戦争を仕掛けたり武力を盾に迫ったわけではない。あくまでもモンスターに対する武力抵抗を示すことにより、周辺国家の支持を得て来た結果であった。その為、民衆の評判も高く、優王の2つ名までもらっているのだ。
いつもの様に午前の御前会議が終わった後、彼は奥の部屋に引き下がって行く。
「いつもの様に、誰も入れない様に」
部屋番の衛兵にそう伝え、自室へ入って行った。
奥の部屋は二重構造となっており、更に奥には円卓のある会議室となっていた。円卓には既に、女性が1人座っていたのだった。
「チェリーが帰って来ないのだけど、何か情報がある?」
「チェリーは、囚われた様だ。4号から連絡が入った」
「それで、どうするの?」
「すぐには動かない、チェリーを捕らえた人間は、もはや初心者の村にはいないそうだ」
「今後の計画は?」
「変更はない。期日が来れば動くことになる」
「じゃあ、それまで私は待機ね」
「・・・あまり下手に動かないようにしてくれ」
「あの2人とは違うわ」
そう言って、女性は会議室から出て行った。
「・・・俺は魔王の様子でも見に行こう」
1人となった会議室を去るアルフレッドであった。
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「・・・それで、前任の副将軍というのはどんな人だったのですか?」
ジュンイチが去った後、砦では将軍と副将軍は必ず3時のティータイムを取ることになった。雑談が中心であるが、重要な懸案事項も話題に登ることがある。今日の話題は、前任の副将軍のことであった。
「前任の副将軍は、真面目な男だった。元スカイオーク共和国の南にあった小さい村出身だったのだが、その村はモンスターの襲撃で壊滅したらしい。その為彼はモンスターを憎む様になったのだ」
ショウリュウは思い出す様に、ぽつりぽつりと話し出した。
「彼は剛剣を直ぐマスターし、誰よりも多くのモンスターを討伐した。あれはもう20年位前の大襲撃の日、彼は数人の兵士を連れて立ち向かい、そのまま帰って来なかったのだ」
「勇ましい方だったのですね」
「質実剛健、真っ直ぐなやつであった」
2人はそこでそろって、緩くなったお茶に口を付けるのであった。
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アルフレッドは魔王の隠し部屋に行くと、魔王の核の状態を確認した。ジー・サマーに作って貰った魔石砕石器を動かし、少量の魔石を振り掛ける。また少し、魔王は元に戻っていく。
「あと少しだな・・・」
アルフレッドは、自分の報酬を全て魔石買い取りに当てていた。その為、王といえど質素な生活をしていたのだ。
「あと、少し・・・」
つぶやきながら、魔王の核を見つめるアルフレッドであった・・・




