48話
「なんじゃこりゃー!」
チェリーが目を覚ますと、そこは見知らぬ天井であった。
「あー、目が覚めたかい。初心者の村のギルド窓口兼案内係のジェームズだ。少し話を聞かせてもらってもいいかい?」
チェリーの荷物から不自然な魔道具が数点出てきたことから不審者と断定し、取り調べをするジェームズであった。
ジュンイチはジェームズに後のことは任せ、さっさとスライムを間引いて行った。
今日は核の抜き取り作業だ。大き目なスライムを中心にスライムの核を取ってゆく。朝に竹を加工し、1節の短い竹槍を作成した。それを用いて、すっぽんすっぽん核を抜いてゆく。抜いた核は氷漬けにし、後でジェームズに処理してもらうこととした。
核入れ様のリュックへ無造作に核を放り込んで行く。午前中の内に30匹位のスライムの核が手に入った。
「ふうっ。一旦村へ帰って、お昼ご飯にしよう」
パンパンになったリュックを担ぎ、空へ舞うジュンイチであった。
「氷漬けにしていて処理してませんが30匹のスライムの核です。後の処理はお願いします。それで、あの男はなんかしゃべりました?」
ジェームズに核のリュックを渡し、男の状況を確認してみた。
「いや、ありがとう。核の処理はこっちでするよ。それで彼のことだが、騒ぐだけで話にならないんだ。持ち物からかなり怪しい人物のようだから、釈放はできないと思う。町の衛兵に引き取ってもらうこととしたので、さっき使いを出したところさ」
チェリーは護送されることになった様だ。
もはや男のことは任せることとして、お昼ご飯を食べ、残りのスライム狩りをおこなった。
翌日はスライム捕獲をすることにした。
いくらなんでも50匹も連れていけないので、後30匹は核を抜き去り、20匹程度を氷の玉に収め持ってゆくこととした。
追加で30匹の核入りリュックをジェームズに渡し、比較的小さなスライムを採取して行く。2m程度の氷のタモを作り、スライムを掬って行く。おとなしくタモに収まるスライムであった。少し開けた広場へ小さめのスライムを積み重ねてゆく。
スライムは合体することはないらしい。キングスライムなどはこの世界ではいない様だ。
10匹ずつの塊に分け、それぞれを3m程度の氷の玉に収めた。
帰る途中で溶けると困るので、直射日光除けに木の皮をかぶせて置いた。道中はかまくらに入れて置けばいいだろう。
立ち入り危険!という看板を立てて置き、村へ行く。明日には王城へ帰らなければならない。
「ということで、明日には帰ります。何か言伝ることなんかないですか?」
夕食の時にスージーと話す。
「・・・お姉さまに、私は元気でやっていますと伝えてください」
「王様にはいいんですか?」
「父様には、お怒りが冷めなければお伝えすることもできないでしょう」
「分かりました。しっかり伝えておきます」
少し硬い表情をしたスージーと共に夕食を食べたジュンイチであった。
翌朝、早い時刻から移動することとした。
スライムをほったらかしにしているから、あまり日が昇らぬ内に出発することにしたのだ。
「それでは、出発します。また遊びに来ますので」
「しっかり頑張ってね。朝ご飯は作っておいたから、途中で食べなさい」
「道中気を付けてな」
スージーにお弁当をもらい、ジェームズにも見送ってもらってジュンイチは王城へ帰ってゆくのであった。
ちなみにスライムは、元気に凍っていた様だ。




