47話
ジュンイチは空を飛ぶ
ヘンデルの町やウォーレンの町、バードの村は久しぶりであり、懐かしさのあまり、泊まる必要もなかったがそれぞれ一泊して来た。
ヘンデルの町の日本食もどきやウォーレンの町のイカ焼きは、懐かしい味付けであった。砦でもらった食材と交換し、各町の日持ちがする食材をリュックに詰め、バードの村へ降り立った。バードの村ではその食材を使って村人にふるまい、代わりに地酒をもらった。ハルツールのガッハに今度分けてやろう。
王城を出て4日目の昼に初心者の村に帰ってきたジュンイチであった。
「ジェームズさんお久しぶりです、ジュンイチです」
「おお、ジュンイチ君久しぶり。元気でやっていたかい」
まずギルドで現在のスライムの状況を聞くジュンイチであった。
季節は冬も終わりを迎え、そろそろ初春である。初心者の村ではぼちぼち冒険者見習の学生が集まる頃である。
「数体スライムを持っていかないといけなくなったんですが、いいですか?」
「冬の時期はなかなか間引くことが出来なかったんで、むしろありがたいよ。学生が来るまでに、100匹位間引いてもらうと助かる。特に大き目なスライムは学生には手ごわいだろうから、大きいやつから狩ってくれ。核の依頼が今50個来ているから、半分はおいてくれればありがたい」
ジェームズの依頼を快く引き受けるジュンイチであった。
スライム狩りに行く前に、宿屋に向かう。寝床を確保する必要と、スージーへ久しぶりの挨拶を行う事とした。
「こんにちはー」
スージーは相変わらず暇そうに、ストーブの前でまったりお茶を飲んでいた。
「おや、久しぶりだね、元気だったかい?」
「お久しぶりです、スザンヌ王女」
「よしとくれ、今は宿屋のおばちゃん、スージーだ。それを知っているということは、王城に行ったのかい?」
「はい、ソフィア姫とも会いました」
「・・・そうかい。元気だったかい?」
僕は、王様のこと、ソフィア姫の事を知っている限りスージーに話した。スージーは懐かしそうに、悲しそうに、そして最後には嬉しそうに話を聞いていた。
「そうかい、元気なのかい。目も見えるし、歩けるんだね。よかったよ・・・」
「はい。それで、2・3日泊まりたいのですが、いいですか?」
「ああ、食材が少ないからあまり豪勢な食事は出せないが、上手いものを作ってやるさ」
「それなら、リュックに各地方の食材がありますので使って下さい」
「ほう、じゃあこっちに運んでくれ」
貯蔵室にリュックの食材を全て出した。お酒も出そうとしたが、断られた。お酒は誰も飲まないそうだ。
「今から食事を作ろうと思うが、少々時間がかかると思う。その間はどうする?」
「時間も遅いですから、ちょっと偵察だけして来ようと思います。あまり遅くならないつもりです」
「できあがるまで2・3時間はかかると思うから、それまでには帰っておいで」
宿を出て、最初に降り立ったスライムの森の偵察に行くジュンイチであった。
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チェリーのスキルはモンスターテイムである。
彼はドラゴン以下のモンスターであれば、何体であろうとテイムできる実力を持っている。不可能な種類はアンデッド系とスライムである。アンデッドはもう一人の女性が従えることが出来るし、スライムは最弱なのでテイムできなくても気にしなかった。
ただ、初心者村の周囲ではスライムしかいないため、木を切り倒すモンスターをテイムしてこなければならない。氷の大地の魔法陣から飛んで来た彼は、スライムの森奥地に降り立ち、北へ向かってゴブリンをテイムしに行くつもりだった。
「さすがにワイバーンで村に向かえば目立つし、しゃーねーか」
乗ってきたワイバーンを帰し、スライムの森を進んで行くのだった。
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ジュンイチは空を飛ぶ
夕暮れが近いため大雑把にしか把握できないが、大き目な青色のスライムは大体目星がついていた。
「ここに来るまでに、概算20匹位大物がいたな。明日はあれらを中心に50匹核をとろうか。おや?」
大体の目算をつけながら、そろそろ帰宅を考え始めたころ、不自然な方向に動く影を見つけた。目立たぬよう木の陰に隠れてその方角を見つめていると、若い男がぶつぶつ言いながら草を分けてくるのが見えた。こんな時刻でこんな時期にこんな場所をうろつくなんて、かなり怪しい人物だとジュンイチは思った。
「あー、もう、うっとうしいな。テイムしたモンスターを連れてくればよかった」
身なりはまるで貴族の様に立派であるが、手にもつ武器は先端が棍棒状になった杖を振り回し、襲って来るスライムを叩き潰していた。
「・・・どうみてもあやしいよな?」
今晩は野宿するらしく、大きな岩にたどり着いた男はそこへ座り、背負っていたリュックから携帯食を取り出し、齧り出した。
「・・・寝てから連行しよう」
そっとその場を離れ、村へ戻るジュンイチであった。
ギルドへ行き、不審者がいることをジェームズに報告すると魔法抑制帯を預かった。彼が寝てから捕縛するつもりだと伝えると、今晩は寝ずに待っていてくれるそうだ。宿へ行きスージーの御馳走を3人で取った後、しばらく3人で歓談した。
夜も更けたころ、抑制帯をひっさげ男の元へ向かった。
まだ初春も早い時期であり、夜は冷え込む。男は丁度都合のいいことにすっぽり寝袋へ入って寝ていた。杖は枕代わりにしているようだ。
岩陰に降り立ち、ゆっくり近づいてゆく。
男は起きない。
今晩の天候は少し曇っており、星明りも少ない。辺りは風が草を揺らす音だけであった。
男の足元に近づく。
男は起きない。
軽く足から抑制帯を巻いてゆく。
男は起きない。
少し男を転がしながら抑制帯を巻いてゆく。
男は起きない。
男は眠りが深かったようだ。
動けなくして、男の荷物を背負い、杖をベルトに挟み、男を浮かせながらギルドへ戻るジュンイチであった・・・




