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僕らの冒険1  作者: じっつぁま
第七章 謎の組織
44/59

44話



始まりは、雪の中で


砦に向かっているジュンイチであった。

季節は、日本でいえば年末年始に当たることだろう。砦の周囲はちらちらと降り積もる雪の為、真っ白な銀世界を呈していた。


固有武器のお陰で寒さに強くなり、舞い散る雪の中を飛んで行くジュンイチ、王城を離れ14日目のことである。王国では3日間でパールに着いたが、流石に海を飛ぶと寝ることが出来なくなるため1週間の船旅をし、レーベから4日間飛んで来たのである。

途中で食材を買うことも考えたが、流石に最早砦も賑わっているだろうと思い、そのまま直通で来たのである。


「早まったかもしれない。まあ、砦の状況を確認して駄目だったら町に買い物に行けばいいか」


暢気な考えのジュンイチであった。


周囲が真っ白なので、地理感覚が分からなくなってきたが、目を凝らし砦の場所を探す。恐らく周囲に足跡などがあるだろうと、東の道沿いを飛んでいた。

すると、目の前に補給の為と思われる数台の馬車を発見した。

驚かせない様回り道をして馬車の前に行き、両手を振り、注意を促した。


「おーい、おーい」


馬車は少し行き過ぎたが、止まってくれた。


「すみませーん。南の砦に行きたいんですがー、一緒に乗せてくださーい」


「止まれ、まず身分証明書を見せなさい」


「はい、ゴールドプレート冒険者のジュンイチです。砦に行きたいんですが、雪で場所が分からなくなったので一緒に乗せてください」


「ん?冒険者か。いいぞ、ちょっと狭いけれど乗せてやろう。後ろの馬車の荷台を使うがいい。物に触れたり、開けたりしないでくれよ。できれば雪が入らぬよう、すぐ閉めてくれ」


「分かりました、助かります。ところでここからどの位で着きますか?」


「予定では後4・5時間といったところか。少なくとも今晩中には着くさ」


「では、お世話になります」


最後部の馬車の荷台に潜り込み、小さくなるジュンイチであった。


することもないので、うつらうつらしていると、ようやく砦についた様だ。


「かいもーん!」


先頭から、大きな声が響いた。

身分証の提示などを行っていた様で、しばらくすると門が開き、また馬車は進みだした。砦の中は以前来た時と違い、地球のドームの様に明かりがついていた。

明かりの強さは変えられるそうで、今は夜も更けてきているので月明り程度の明るさだった。


馬車から降り、乗せてくれた兵士にお礼を言い、門番のところへ向かった。


「こんばんは、ジュンイチと言います。以前ショウリュウ将軍に御厄介になったものですが、ショウリュウ将軍とお会いできますでしょうか?」


「あー、ゴールドプレートの冒険者か。今夜はもう遅い、明日午前中に出直しなさい」


「分かりました。ただ、今晩泊まるところが分かりませんので、泊めて頂けるところを教えて頂けませんか?」


「ふむ、狭いが見習兵士の仮眠室ならいいだろう。寒さだけはしのげると思う」


「ありがとうございます」


そう言って、今晩は仮眠室に泊まることとなった。

晩御飯は水と乾パンであった・・・

寒くはないが、柔らかさを求め、毛布を巻いて寝たジュンイチであった。


砦内部なので正確な時刻は分からなかったが、恐らく早朝であろう、体内時計の通り、目を覚ますと仮眠室を出た。手洗い場を見つけ、顔だけ洗い、朝の鍛錬ができる場所を探した。砦の訓練場と思われるところを見つけたので、隅を使わせてもらうこととした。


凝り固まった体をほぐし、両手にダガーを持つ。氷剣は目立つので、こういう場合はダガーを使っている。リーヘイに教わった双剣の動きをなぞる。最初はゆっくりと、次第に早く、そして空中の動きを追加する。間に投擲をいつもは加えるのだが、ここではやめて置いた。


小一時間訓練をしていた時であった。自分を見つめる視線を感じた。

演武を終了し、見物者のところへ向かう。


「おはようございます。勝手に使わせてもらってすみません、冒険者のジュンイチと言います」


「おはよう、割といい動きをするな。双剣とは珍しいね。誰かに師事したことがあるのかい?」


「ええ、王城に居た時にリーヘイさんと言う方に教えていただきました」


「ほう、副隊長のリーヘイにかい?それはすごいな。あまり双剣使いがいないから、僕にも教えてほしいな」


「いえいえいえ、僕なんかまだまだ人に教えるなんてできないです」


「そうかー?充分綺麗な動きだと思ったのだが、まあ、また時間があったら考えておいてくれ。申し遅れたが、ここの砦で副将軍をやっているリューユというものだ。宜しくな」


「はい、こちらこそお願いいたします。ところで副将軍様ですか?あの、ショウリュウ将軍様にお目にかかりたいのですが、ご存知でしょうか?」


「うん?いや場所は知っているが」


「えーと、以前ショウリュウ将軍様に御厄介になりまして、挨拶をしたいと思っているのですが」


「ほう、そうか。まあ、まだ朝も早い。一緒に食事でもどうだ?その後連れて行ってやろう」


「えっ、よろしいですか?ありがとうございます」


渡りに船とはこのことだ。ついでに朝飯をゲットしたジュンイチであった。

副将軍なので、自室で豪勢な食事をとっているのかと思ったが、まだなってから日が浅いため、一般兵と共に食堂で食事をとっているそうだ。

周囲の兵士とも気心が知れているため、流石に敬語だが、なれなれしく話していた。


「こっちは冒険者のジュンイチだ。将軍の知り合いらしい。双剣の使い手だ」


「おー、そうですか。双剣とは珍しい。私にも教えてもらいたいものですなぁ」


「うん、僕もそういったんだが断られた。兵士みんなで頼んでみようか」


「いえいえいえ、とんでもない。まだ人に教えるようなもんじゃないですから。からかわないで下さい」


割とアットホームな感じで、朝食を頂いた。


「じゃあ、そろそろ将軍のところへ行こうか?多分まだ自室にいると思うんだが」


食堂を出て、将軍の部屋へ向かう。

立派なドアをノックして入って行く。


「ショウリュウ将軍、おはようございます。面会人です。冒険者ジュンイチと云うものですが、通してもよろしいでしょうか?」


「ん?ジュンイチと云ったか?すぐ通しなさい」


「はい、失礼します。ジュンイチです。ショウリュウ将軍お久しぶりです」


「おー、ジュンイチ殿ではないか。いつこちらへ?ま、まあ座ってくだされ。お茶でも飲まれるかな?」


「失礼いたします」


「それでは将軍、私はこれで失礼いたします」


「まあ、リューユよ、お前も座れ。このジュンイチには以前わしが世話になったのだ。お前にも紹介するから、少し待て。おーい、誰か茶を持ってきてくれないかー」


ショウリュウ、リューユと3人で、雑談をすることになった。

以前1人となり、飲み水がなくなった時助けてもらったことなどをショウリュウがリューユに説明し、命の恩人だと言われた。リューユはひどく感心していた。

今度はジュンイチがここに来た理由を説明した。


「・・・という訳で、自分の鍛錬の為に南のモンスターと戦いたいんですが。現在の砦の状況はいかがですか?」


「ふむ。あの襲撃からはとんとないな。まあ兵士の士気は上がったので、弛みはないが、もはや真冬だ。ちょっとやそっとの襲撃はないだろうと思われる」


「それでも、少し南を見て回ってもよろしいでしょうか?」


「もちろん、ジュンイチ殿の好きにされるがよい。貴殿の腕なら大丈夫であろう。寝泊まりの場所も提供しよう。食事は希望すれば、個室に持って行かせるが、どうされる?」


「食事は一般の方と同様で結構です。しばらく御厄介になります」


「それで将軍、ジュンイチは立派な双剣の使い手なのですが、講師をお願いしたいのですが」


「ほう、そうであったか。ジュンイチ殿、お願いできればありがたい。わしも習いたいものだ」


「いえいえいえ、そんな立派なものじゃないのですが、あの、型位なら教えることもできるかと・・・」


「それで結構です。時間がある時に教えて頂けたらと思います。もちろん報酬もお渡しします」


「いえ、食事と宿泊だけで結構です」


とんとん拍子に講師まで上り詰めてしまうジュンイチであった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



その頃、砦より約10Km離れた場所に、数匹のモンスターを連れた若く見える男が、雪の中を歩いていた。


「あのおばさんが俺のワイバーンを持っていくから、時間がかかっちまった。新しいワイバーンのテイムと、この数匹のモンスターのテイムに2週間もかかるとは思わなかったぜ。」


ぶつぶつと呟きながら、男は砦の方角に歩いてゆく。


「明日には砦に襲撃できそうだな?こいつらなら、暫らくいい囮ができるだろうよ」


ジュンイチのいる砦を襲撃しようとしていたのであった・・・




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