40話
「娘と再会できて、本当によかった」
「・・・王よ」
東の王都、城の中で王であるリッケンシュタイン・フローレンス・ガイアはワインを飲みながら、宰相に呟いていた。両目は酒の為か涙のせいか、真っ赤になっていた。
「お酒はほどほどにしなさいと、ソフィア姫はおっしゃっていましたよ」
「そうは申すが、今日くらいはいいではないか。めでたい日なのじゃ」
「・・・さて、そろそろ勇者様御一行をお招きしなければならないかと存じます」
「ふむ。ソフィアがゴールドプレートとなったら、一度話をせねばなるまい。ソフィアの口から説明させるのは可哀想じゃ」
「はい、私も及ばずながらご説明したいと思います」
「日程の調整を頼む」
「御意に」
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トーベ改めソーマとソフィアのプレートがようやくゴールドとなって、王城から使いがやってきた。遅れて、ジュンイチ達のところにも連絡が届いたのである。
「はー、異世界よいとーこ、一度はーおいでー、てなっ」
ジュンイチは温泉につかりながら、おっさん臭いセリフを言っていた。
ちなみに混浴ではない。
ケーゴは早風呂で、もはやジュンイチしかお風呂に入っているものはいない。
ちなみに朝風呂である。
「はー、極楽極楽。朝風呂はいーねー」
どこまでもおっさんくさい。
「ジュンイチー、いつまで入っているのー。王城から使いが来てるわよー」
遠くからレーコの声が響いてくる。
しかしジュンイチは動かない。
「ジュンイチくーん、そろそろあがったらー?」
「はーい」
リョウの声に答え、朝風呂から上がるジュンイチであった。
「まったく、王城の使いの人が怒ってるわよ」
「そんな訳ないじゃん」
「もうぷりぷりよ、げきおこプンプン丸なんだから」
「ちと古くない?」
「ジュンイチに言われたくはないわ」
身支度を整え、使いの人と会う。どうもみんなで王城へ招かれるらしい。
「このまますぐ向かわれるのでしたら、城からの馬車で向かって頂けます」
さすが王家の馬車である。クッションも完備された極上の馬車でジュンイチ達は王城へ向かうこととなった。護衛は必要なかったが、中隊一個集団が護衛に就くこととなった。大名行列の様に東の王国へ向かうのであった。
特に急いではいなかった様だが、さすがの馬車であり往路24日かかった距離を16日で帰ってきた。王都では歓迎ムードであり、勇者御一行歓迎などの垂れ幕も下がっていた。道沿いでは、住民が一斉に手を振って声援を送ってきた。
「いやー、すごい歓迎ぶりだね」
「そうだね。なんか祭りでもあるのかな?」
「特に今まで何をしたわけでもないのにねー」
「いや、僕はしたよ。レーコは何もしていなかったけど、僕とリョウはしたよ」
「でも、隠れてしたんでしょ?襲撃の撃退は他の人の功績になっているはずよ」
「そういえばそうだよな」
何だか期待されている住民の声援を受け、若干不安になるジュンイチであった。
王城では謁見の間に通された。そこでは王様が座っていたが、王妃の席は空いていた。王の横へ王女と思われる姫様が座っており、その後ろにトーベが立っていた。
僕らは王の前に進むと跪き、臣下の礼をした。
「勇者たちよ、その様な礼は必要ない。立ち上がり、顔を上げてくれ」
王自ら僕らに声を掛ける。
「私はこれから君たちにお願いをしなければならない。その前にこれまでの経緯について説明しよう」
「お父様、それは私が致します」
「いや、駄目じゃ。これは私がすることだ」
「王様、説明は長くなると思います。まずは簡単なところから、差し出がましいですが私の方から説明させていただきます」
最後に宰相ですと言った白髭の老人が進み出て、進言した。
「私は宰相を任されておりますモージェと申します。まずは私の方からこの国の歴史について説明させていただきます」
モージェの話は長い話となった。その為その場所へ椅子を4脚用意され、僕らは座ってこの国の歴史を聞くこととなったのである。
以前トーベやレーコから話は聞いていたが、実際はもう少し複雑な事情があった様だ。このガイア国は1万年を誇る魔法国家であり、王家の神代魔法を中心に平和な国を治めていた。5千年前に突然、魔王と命名した異世界人が現れた。魔王はこの世界の”魔素”を集める為、魔素を持った動植物をどんどん駆逐していったそうだ。恐らく異世界に戻るために多量の魔素を必要としたらしい。魔王の攻撃にかなうものはおらず、王家は魔法の極意を研究し異世界から勇者を召還し、魔王を討伐した。しかし、その後も200年毎に魔王は現れたという。
「魔王は討伐されると、悪意の魔素に変換され、それが再び集まり復活するようなのです」
その後、千年の間に5回出現した魔王は以後最近まで現れることはなくなった。
しかし、今から5年前魔王の再来を高位魔導師が予言した。
「それは第2王女、スザンヌ・フローレンス・ガイア様でした」
スザンヌはこのままではこの世界は滅亡してしまうとも予言した。それを覆す方法も提示し、それを実行した後王城を離れることとなった。
「現在は始まりの村におりスージーと名乗られております」
予言を覆す方法を取る時に、自分の生命エネルギーを使用したため、外見が一気に老けてしまったが、現在の年齢は22歳だそうだ。
そして、滅亡を阻止する方法とは・・・
「そこから先は私がお話します。ソフィア・フローレンス・ガイアと申します。あなた達をこの世界に招いた存在です」
ソフィアが席を立ち、言い放った・・・




